天は浅慮短慮に罰を下す

ひとまずは無事完成。ケーブルの接続は確実か、プラプラしている接続忘れのケーブルはないか等を確認すれば、いよいよ火入れ式となる。阿部氏も筆者も、撮影してきたカメラマン・高嶋氏も疲労の色を隠せないが、ほぼ10年ぶりに組みあげたPCを早く動かしてみたい! との思いが身体に最後のエネルギーを注入している。

アイ・オー・データ機器のゲーミングモニター「LCD-GC242HXB」、ロジクールのゲーミングキーボードとマウス「G512 ROMER-G LINEAR」「G502 HERO」も繋げてパワーオン! 無事マザー上のRGB LEDが光を放っている。やった成功だ!

  • 幾多の試行錯誤を乗り越え完成! だがこの直後、悲劇に襲われる……

しかし、神は妥協する者を許さなかった。突然、筆者の鼻腔に飛び込んでくる刺激臭。それは約10年前、電源ケーブルの配線ミスでマザーを焼いた時の臭い。間違いなくこのPCは燃えている!

そう判断したわずか0.5秒後にはメインパワースイッチをオフ。電源ユニットからは白煙が立ち上っている。炎までは見えなかったが、内部で電気火災を起こす寸前だったようだ。

  • うっすらと電源ユニットから立ち上る白煙が見えるだろうか?

この原因は編集部の倉庫から掘り出してきた電源ユニットだ(後から換装したCorsairの電源ユニットではない)。実は、旧PCがカビ臭くてPCケースも電源ユニットも粗大ゴミとして破棄すると決定した際、電源も新たに買おうという結論になっていた。

だが阿部氏は、PCケースに大きく予算を投下したいためか、電源については節約する方向へと突然ハンドルを切った。こうして「編集部に余っていた電源ユニット」が登場したのだった。電源ユニットは目立つ訳でもないし、組み込んで電源投入できれば問題なかろう……と。業界的にいえば「画を押さえる」ことができればよい、という判断だ。

結果的にこの判断が致命的。電源ユニットのどこが原因かまでは調べきれなかったが、下手をするとマザーやグラボまで再起不能になった可能性もあった。本当に危なかったというべきだろう。PCにとっての生命線ともいえる電源は使い回しやすいパーツではあるが、侮ると手痛いしっぺ返しを食らう。筆者も「古い電源を」と聞いた時に流さず、強硬に反対すべきだったと反省することしきりである……。

というわけで、この記事の写真のほとんどは、炎上事件の後日に撮影し直した「テイク2」のカットで構成されている。テイク2では前述の通り、Corsairの「RM650x」が購入され組み込まれている。参考として以下、Corsair RM650xと「テイク1」の際に使用した「編集部に余っていた電源ユニット」を比較した写真をお見せしよう。

  • Corsair「RM650x」は、燃えた不良電源のリリーフとして阿部氏が購入した80PLUS Gold準拠の650W電源。フルモジュラータイプなので今回の構成では使わない余計なSATAやペリフェラル4ピン電源ケーブルを排除できる。今どきのPCケースに合わせて、ケーブルの取り回しも良好だ

  • 燃えた例の電源(手前)とRM650x(奥)を比較。RM650xのほうがATX24ピンやEPS12Vの8ピンケーブルが若干長いことがわかる。電源本体の奥行きの差もあるが、このわずか数センチの差が意外とデカい。燃えた電源はケーブルも硬く、マザーの裏から取り回す配線には非常に使いづらかった

他にもこんな小トラブルが

  • I/Oシールドのツメの確認を怠ると、ツメがHDMIやDisplayPortコネクタ内部に巻き込まれてしまう。Ryzen 5 2600Xの場合マザーのHDMIコネクタは使えない(内蔵グラフィックスがない)ので問題はないが、発見してしまった以上、マザーを一旦取り外すハメに

  • 上のトラブルから、マザーをPCケースから取り外す時に、フロントUSB3.0コネクタのガイドがすっぽ抜けるという二次災害も。このガイド部分はピンとの摩擦だけで固定されているのですっぽ抜けは珍しくない。ガイドを優しく戻せば元通りだ

全ての苦労、ここに報われる

今回の自作の模様、マトモな電源を再調達した時のテイク2カットを動画でも撮影してみた。1ページ目から何度かリンクを掲載してきたのがそれだ。2回目の組み立てを撮影したので、阿部氏の動きから迷いが消えているのが残念で面白さ半減だが、今ドキのPC自作の基本的な流れはつかめるはずだ。

最終的にそのまま素組みでは面白くない、ということでRGB LEDのテープ(12Vタイプ)をケースに仕込んでライトアップもさせてみた。新しい電源で安全に起動できたことを確認するや、早速PUBGをプレイし始めた阿部氏だが、WASD操作すらおぼつかない様子。だが、PUBGが高フレームレートで動くさまは見ていて楽しい。実際にこのPCでPUBG等のゲームがどの程度動くかは、次回(最終回)で明らかにしていきたい。

  • OSのインストールなどセットアップを全て終え、PUBGが無事起動。電源ユニット炎上というトラブルを乗り越えただけに、達成感も大きい

  • ケースの下部にはRGB LEDを仕込んだ。B450 Steel LegendのRGB LED(+12Vタイプ)ピンヘッダに接続するので、マザーのユーティリティ側から発光色やパターンをカスタマイズできる

  • B450 Steel Legendの光り方は華美ではないので、非常に落ち着いた雰囲気のPCに仕上がった。メモリとCPUクーラーも光らせたいところだが、それは今後の阿部氏の宿題として残しておこう

  • PUBGをフルHD&画質ウルトラで動かした時のフレームレート(右下数字)。アイ・オー・データ機器のゲーミングモニター「LCD-GC242HXB」も144Hzで動いていることが確認できた

  • 最後に、電源ユニットを「編集部所蔵品」からCorsair「RM650x」に差し替えた最終的なパーツ構成表を掲載して今回の教訓を。「いつまでも 動くと思うな 古電源」