また、SASプラットフォームの技術革新については、コンピュータビジョンの強化の一環として、蘭アムステルダム大学医療センターの取り組みを、同センターのGeert Kazemier(ヘルト ガーゼミヤー)博士とともに紹介した。

同センターでは横行結腸癌(大腸癌)の判定と分類を目的とした自動医療画像解析に、SAS AIを活用している。従来は医者がマニュアルで判定していたが、主観による判断で、特定までに時間がかかっていたという。ガーゼミヤー博士は「画像の判定(の一部プロセス)に『SAS Visual Data Mining』を導入したことで、客観的で精度の高い判定が迅速に可能になった」とそのメリットを語る。

  • 蘭アムステルダム大学医療センターのGeert Kazemier(ヘルト ガーゼミヤー)博士

さらに、同センターではディープラーニング技術を活用し、患部を前後左右から撮影したCT(コンピュータ断層撮影)画像を立体的に組み合わせ、癌の原発部位(臓器)体積をモデリングした。放射線治療による癌部分の体積の変化を測定し、その効果を把握するためだ。さらに、患者のほかの病理データやバイタルデータを組み合わせて、癌の体積を予測し、自動的に評価するシステムを構築している。

ただし、分析の自動化で、顧客から求められるのは「透明性」である。AI/MLの自動化において課題となっているのが「ブラックボックス化」だ。AIやMLの精度が向上し、自動化が進むほど、アルゴリズムやモデルは複雑になる。求めていた結果が自動で導き出せたとしても、「どのアルゴリズム、モデルを使ったか」「なぜその結果になったか」が不明瞭では不安が残る。

こうした課題に対し、SASでは「どのモデルを使ったか」を把握できる機能を提供する。SASで機械学習開発を手掛けるシン・ハント(Xin Hunt)氏は、悪性腫瘍(癌)と良性腫瘍の画像を読み込み、「限界しきい値」に則って悪性/良性を判定するデモを行った。分析結果からたどると、「どのデータが準備され「どのモデルを用いられたのか」が把握できるという。

ハント氏は、「MLによる自動分析のほうが、人間が判断するよりもバイアスがかからない」としたものの、最終的な決断をするのは臨床医であることを強調した。

  • 「限界しきい値」を設定して判定。悪性である疑いがある腫瘍を赤、良性の可能性が高い腫瘍を緑の枠でマーキングする。ただし、最終的な判断は担当医の管轄だ

実際、コンピュータビジョンは急速に進化している。グッドナイト氏はその一例として、動き回る14名の顔をリアルタイムで追跡しながら認識する顔認識技術のデモを披露した。同社は2019年3月にNVIDIAとの提携を発表している。シャベンバーガー氏は、「強力なGPUは分析スピードを劇的に向上させ、スケールさせていくことができる」とコメントした。