映画芸術科学アカデミー (The Academy of Motion Picture and Arts and Sciences)は4月23日 (米国時間)、第92回アカデミー賞の規定を理事会が承認したことを発表した。NetflixやAmazon Primeといったストリーミングサービスで主に提供されている作品は映画賞から除外されるべきという議論が広がっていたが、従来通りの規定を維持する。

2018年の映画が対象になる第91回アカデミー賞では、Netflixが関わった15作品がノミネートされ、Alfonso Cuarón氏の半自伝的な作品「ROMA/ローマ」が監督賞など3部門を受賞した。ストリーミング配信サービスが関わる作品がアカデミー賞作品賞の候補になるのは「ROMA/ローマ」が初めてではないが、これまでの候補作品は映画館での上映が優先されていた。「ROMA/ローマ」は11月末の米国での劇場公開から間もない12月半ばにNetflixでの配信が始まり、劇場側から不満の声が上がっていた。

アカデミー賞の対象作品は「ロサンゼルス郡内の映画館で連続7日以上、1日に3回以上、上映された作品」と規定されている。ロサンゼルス郡での公開日以降であれば、非劇場メディア (ネット配信、ビデオ販売、テレビ放送など)でリリースされた作品も対象とする。

現在の規定だと、作品をアカデミー賞の対象とするためだけに短期間だけ映画館で上映するストリーミングサービス向けに製作された作品が出てくる可能性がある。テレビでの視聴を前提に作られた作品は「テレビ映画である」とSteven Spielberg氏がコメントしたという報道も話題になって、映画作品の議論が広がっていた。

そのため、第92回アカデミー賞の規定協議において対象作品を規定するルール2の変更が提議された。しかし、アカデミーの理事会の投票結果は「維持」となった。

近年のオスカーではアカデミー会員が外国語作品やインディペンデント系の作品を支援する傾向が強まっている。それを反映して、第92回アカデミー賞では、英語圏以外の作品を「Foreign Language Film」とするのではなく、言語より作品性を重んじた「International Feature Film」と呼ぶように変更する。ネット配信の成長は、インディペンデント系のような劇場からだけでは大きな興行収入を得られない作品に製作のチャンスを広げるものになる。

「我々は映画の芸術性に統合されたものとして劇場体験をサポートしており、議論はそれを重んじたものになりました」と映画芸術科学アカデミーのJohn Bailey氏。「現在の規定は劇場での公開を条件とし、同時にアカデミー会員がオスカーに検討できる作品の幅を狭めないようにしています」としており、対象作品の問題については今後も調査を継続し、会員の間で議論していくという。