Microsoftは米国時間2019年4月8日、「Microsoft Edge Insider Channels」を公開し、Chromiumをエンジンとした新たなMicrosoft Edgeをリリースした。サイト名からも分かるようにインサイダー向けであり、安定性よりも更新を大きく優先して毎日更新するCanaryチャンネル、一定のテストを経て開発者向けに毎週提供するDevチャンネルの2つを用意する。
いずれもWindows 10用だが、MicrosoftはWindows 7用やWindows 8/8.1用、macOSのMicrosoft Edgeのリリースも予定しているようだ。さらにインサイダープレビューとしては安定版に類するBetaチャンネルも近日中に公開するという。
執筆時点のビルド(バージョン75.0.124.0)は機能も最小限にとどまり、日本語などの言語も未サポート。現時点ではGoogle Chromeを代替するレベルではないものの、Chromeウェブストア経由で拡張機能を導入できるため、開発が進めば魅力的なプラットフォームとなる可能性は高い。
現在Microsoftは、新たなMicrosoft Edgeで実装、もしくは進行中の機能として、「アクセシビリティ」「ARM64」「タッチ」「スクロール」「メディア」「Windows Hello」の5つを掲げている。
公式ブログによれば、アクセシビリティの文脈は、Windowsナレーターや拡大鏡に代表される「アクセシビリティAPIへの対応」。CSS Mediaクエリの標準化でコンテンツの可読性を高める「ハイコントラスト」。映像の字幕を読みやすくする「HTML videoのキャプション」。キーボードでWeb閲覧を行う「キャレットブラウジング」。使いやすさを数値化するベンチマークHTML5 accessibilityにおける「完全なスコア」を目指すという。ちなみに従来のMicrosoft Edgeは満点である。
ARM64はGoogleのエンジニアとともにChromiumの対応を進めており、Windowsタッチキーボードを新Microsoft Edgeで使用可能にするため、TSF(Windows Text Services Framework)へ対応が進行中だ。
スクロールは、Web閲覧時に必要となるスクロール操作の利便性を指すものだが現在はアイデア段階にとどまる。そしてメディアはDRM(デジタル著作権管理)のサポートで動画ストリーミングサービスへの対応を図る。PlayReady DRMを使用するサイトは、HDR(ハイダイナミックレンジ)もしくはDolby Visionを使用して1080p/4Kストリーミング映像を楽しめる。
最後のWindows Helloだが、2018年の時点でMicrosoft EdgeはWeb Authentication APIに対応済みだが、Chromiumプロジェクトに成果をフィードバックすることで、新たなMicrosoft EdgeでもWindows Helloによる生体認証を利用可能にする予定だ。
Microsoft Edgeチームは、すでにMicrosoftは275以上のコミットを行ったと先のブログで説明する。とある資料によれば、上記の他にも「編集」「セキュリティ」「フォント」「ツール」「認証」「レイアウト」「バッテリー寿命」「Web標準化」にも焦点を当てているという。
Microsoftに関するリーク情報で著名なWalkingCat氏のツイートで、新たなMicrosoft Edgeで代替もしくは無効にしたサービスの一覧を確認できる。49のサービス名が並んでいるが、Google製サービスが含まれていることから考えると、ChromiumではなくGoogle Chromeが比較対象だと思われる。
さて、現時点で新たなMicrosoft Edgeに対する意見を述べても、さほどの価値はないだろう。MicrosoftがOSS(オープンソースソフトウェア)コミュニティへ積極的にコミットすることで、Web開発者やエンドユーザーはGoogle Chromeのように広く使われているプラットフォームと類似した環境を得られるのはテスト期間の短縮を踏まえても有益だ。
Windows 10に新Microsoft Edgeがビルトインされるのはしばらく先の話となりそうだが、Windows 10の立ち位置を見据えつつ1人のインサイダーとして進捗を見守りたい。
阿久津良和(Cactus)