かつてMP3プレイヤーと呼ばれていた「デジタルオーディオプレイヤー(DAP)」は、いまやハイレゾ再生できるのが当たり前。Bluetooth対応など、機能と音質を重視した製品が増えています。ここに紹介するFiioのDAP「M6」は、エントリークラスという位置付け(Amazon.co.jpでの価格は税込22,140円)ながら、機能の豊富さではライバルを寄せ付けないほど。その実力に迫ります。

  • M6

    10mmナノコンポジット振動板を採用した有線イヤホン「SHANLING ME100」と組み合わせて、「M6」を試聴しました

どうしてこんなに多機能なの?

中国・広州を拠点とするFiioは2007年に創業。いまやポータブルオーディオ分野に強みを持つメーカーとして、世界に知られる存在です。2009年ごろに日本でもヘッドホンアンプやUSB DACが評判となり、2013年に発売されたDAP「X3」は2万円台でハイレゾ再生に対応するとして、当時は圧倒的なコストパフォーマンスが話題となりました。

今回取り上げる「M6」も、Fiioが得意とするエントリーレンジの製品でありながら、これでもかというほど多くの機能を搭載しています。3.5mm端子のイヤホンで聴くことはもちろん、aptX HDやLDACといったハイレゾ相当のBluetoothオーディオコーデックをサポート。Wi-Fi対応により、ネットワークプレイヤー(DLNA)としても利用でき、限定的ながらアプリの追加も可能という仕様は、この価格帯のDAPで聞いたことがありません。

多機能さを支える要素の1つが、Samsung製SoC「Exynos 7270」です。ARM Cortex-A53をベースとした1GHz/デュアルコア構成であり、Wi-FiやBluetoothといったネットワーク機能を備えています。M6はAndroid 7のカスタマイズ版をOSに採用していますが、それもExynos 7270の処理性能あってこそです。

Android OSの採用も、多機能さに直結しています。M6には、音楽ストリーミングアプリ「Tidal」や「KKBox」といったサードパーティー製アプリがプリインストールされています。それ以外にも「Spotify」や「Deezer Hi-Fi」、「Amazon Music」といったストリーミングアプリもAPKファイルとしてインストール可能。PCオーディオに利用者が多い音楽再生ソフト「Roon」のクライアントアプリもサポートしました。

  • M6

    アプリをインストールすれば、SpotifyやAmazon Musicといった各種ストリーミングサービスを利用できます(画面はAmazon Music)

音質面では、ESS Technology社の32ビットDACチップ「ES9018Q2C」を採用したことがポイント。実績豊富なDACチップ「ES9018K2M」のヘッドホンアンプ搭載版(簡易版)という位置付けで、単体で再生するときPCMは最大192kHz/24bit、DSDは5.6MHz/ネイティブ再生というスペックですが、USB DAC時はPCM最大384kHz/32bitまでカバーします。全高調波歪(THD+N)も-120dBと、DAPコアとしての基礎体力は優秀です。

  • M6

    PCMは最大192kHz/24bit、DSDネイティブ再生にも対応しています

  • M6

    曲リストでは、サンプリングレート/ビットレート深度を自動識別し、「SQ」「HQ」「DSD」のいずれかで表示します

  • M6

    USB DACモード時は、PCMで最大384kHz/32bitの再生が可能です

Bluetoothコーデックをのきなみサポート

M6の使いかたはアプリ次第ですが、基本的に標準で内蔵するプレイヤーアプリ「Fiio Music」を利用します。本体に備えた3.2インチのタッチパネルは反応がよく、小気味いい操作性を実現しています。ジャンル別/アーティスト別/アルバム別の並び替えはもちろん、曲名やファイル名によるソートもできます。Android OSのソフトウェアキーボードで文字を入力し、曲名やアーティスト名で検索することも可能です。

  • M6

    ファイル再生には、標準アプリ「Fiio Music」を利用します

ネットワーク再生にも、Fiio Musicを利用。設定パネルにある「DLNA」をタップすると、同じネットワーク上に存在するサーバ(DMS)を検索、かんたんにマウントできます。サンプリングレート/ビットレート深度が正しく表示されない、曲によっては正しいレートで再生されないなどの不具合はあるものの、NASを音源にできることは自宅で音楽を聴くことが多いユーザーにとって朗報でしょう。

内蔵ストレージとして2GBが用意されていますが、スマートフォンではなくあえてDAPで音楽を聴こうというユーザーなら、microSDの一択。最大2TBという大容量のmicroSDに対応するうえ、カードスロットは抜き差ししやすいよう側面に配置されているので、困ることはなさそうです。

Bluetoothオーディオ機能も充実。コーデックはSBCに加え、高音質コーデックのaptX、aptX HD、LDAC、さらにHWAもサポートしています。aptX HDとLDACの両方に対応するコンパクトDAPは意外に少なく、M6のアドバンテージといえるでしょう。Bluetoothレシーバーとして動作する「Bluetooth DAC/AMPモード(BT Sinkモード)」を利用すれば、スマートフォンで再生した音楽をM6に"飛ばして"聴くことも可能です。

  • M6

    ハイレゾ級のBluetoothオーディオコーデック「aptX HD」や「LDAC」にも対応します

Android OSの採用により、ストリーミングアプリも豊富にサポートしました。Amazon MusicとSpotifyを試してみましたが、スマートフォン版と比較しても操作性で劣る部分はなく、キーボードを利用した検索ができるなど、スマートフォンと同じ感覚で音楽を楽しめます。モバイル回線に直接アクセスできないことはネックですが、自宅ではWi-Fiを使えばいいし、外出先でもスマートフォンのテザリング機能を利用するという手があります。音楽に関する機能をDAPに集中させたい、というニーズに対応できそうです。

  • M6

    Android OSのソフトウェアキーボードを利用して、曲やアーティスト名を検索できます