ブロックチェーンと聞けば、ビットコインのような仮想通貨をセキュアに管理するための分散型台帳が真っ先に思い浮かぶと思いますが、そのブロックチェーンのネットワーク通信技術を活かしたスマートフォンをMWC19の会場で取材してきました。ブロックチェーンを取り込むとスマホでどんなことができるのでしょうか。
スケルトンデザインがカッコいいHTC「Exodus 1」
電子化された個人の金融資産は大事な個人情報の一つです。これを保管するネットワーク上のサーバーが容易にハッキングの被害にあわないように、お金のやり取りを記録したデータの断片をネットワーク上にある複数の台帳となるサーバーに分散させて持たせることで信頼性を担保するという技術が近年、仮想通貨など金融分野で活用されるようになりました。
同じ仕組みを使って、スマホアプリによる通信の多くを分散型のネットワーク技術で管理すれば、よりセキュアに運用できると考える企業が次々に誕生しているようです。
台湾HTCはブロックチェーンの技術を組み込んだ「Exodus 1」を2018年秋に発売したメーカーです。ベースのモデルとなる「U12+」にブロックチェーン決済機能を搭載しています。スケルトンのリアパネルがなかなかクールな約6.0インチのディスプレイを搭載するAndroidスマホです。
サードパーティが開発した分散型ネットワークを活用するDApp(Decentralized App:自律分散型アプリ)を組み込んで使うこともできます。HTCの仮想通貨ウォレット「Zion」のコミュニティ向けに、仮想通貨を使って購入できる形で販売していた端末が、今年から米ドル決済でも買えるようになりました。
価格は699ドル(約7.7万円)。ブラウザにはブロックチェーン対応のOperaを積んで、ブラウザからも仮想通貨を使ったセキュアなショッピングを楽しむことができます。日本での販売については未定ということでした。
ブロックチェーンを使った通話や写真がアップロードできる「XPhone」
シンガポールの新鋭ベンチャー、Pundi Xが開発するブロックチェーンプラットフォーム「Function X」は、Android 9.0ベースのFunction X OSと独自のセキュアな通信プロトコル「Function X Transaction Protocol」、ブロックチェーン通信技術の「Function X Blockchain」など5つのコアコンポーネントによって構成されています。
同社ではFunction Xをソフトウェアソリューションとしてスマートフォンなど端末メーカーに供給することによって、ブロックチェーン対応端末のエコシステムを広げる戦略を打ち出しています。今回MWCには初出展を果たし「反響は上々」と語るのは同社のCEO兼Co-FounderのZac Cheah氏です。
Pundi XではFunction Xのリファレンス端末となる「XPhone」の開発も進めています。特徴は仮想通貨のトランザクションだけでなく、音声通話やWebブラウザ、アルバムからの写真データのアップロードなど様々なブロックチェーン対応アプリを内製して組み込んだことです。基本はAndroidベースなのでサードパーティーのDAppも追加できます。
XPhone同士、またはFunction Xを搭載するスマホ同士であれば、互いに分散ネットワークを介したIP通話が可能。Function Xエコシステムの各デバイスがノードになり、それぞれが独自のアドレスとプライベートキーを持つことによって関連づけられるところが、従来のURLやIPアドレスとの違いになります。
Cheah氏はFunction Xの特徴について「企業や政府機関、軍など高度にセキュアなネットワークを必要とする団体のコミュニケーション端末として高い効果を発揮する」と説明しています。通常の音声通話モードも搭載しています。
発売は2019年の後半以降が予定されていて、価格は599ドル(約6.6万円)を見込んでいるそうです。同社の直販サイトから購入できるようになります。現在決定している仕様はSoCにSnapdragon 660を採用、6GBのRAMと64GBのストレージを搭載することです。指紋認証センサーも現在のプロトタイプでは背面側にレイアウトされていますが、右側面に移してよりスタイリッシュなデザインにブラッシュアップしたいと、Cheah氏が意気込みを語っていました。