Appleは、米国時間1月29日に2019年第1四半期決算を発表した。米国や欧州では売上高がもっとも大きくなるホリデーシーズンが含まれる2018年10~12月の決算だったが、1月2日に出された利益警告のレターにあったように、売上高は843億ドルと、前年同期比で4.5%減となった。

  • ホリデーシーズンにおけるiPhoneの不振が決算に響いた

    ホリデーシーズンにおけるiPhoneの販売不振が決算に響いた

レターで語られていたことの繰り返しになるが、下落の要因は大きく「iPhoneの不振」と「中国の急減速」の2点に集約される。

Appleのビジネスは、実に6割をiPhoneが占めている。そのiPhoneが15%の売上高減少となったことは、Apple全体の売上高に大きく響いてくる。iPhone以外の製品やサービスの売上高は合わせて19%増加していたが、iPhoneの下落を吸収することはできなかった。

中国については、売上高26.7%減と大きな減速となった。2018年通年のGDP成長率は6.6%と、政府の目標である6.5%を上回ったものの、 2018年4~6月以降はGDP成長率が四半期ごとに低下し、10~12月は6.4%成長となった。米中貿易戦争は引き続き緊張状態が続くとみられており、その影響が今後も拡がることになるだろう。

iPhoneビジネスの現状と次の一手

Appleのビジネスの6割はiPhoneによるものだ。2019年第1四半期、iPhoneの売上高は15%の減少となったが、それでもなお62%を占める最も重要なカテゴリーだ。

999ドルからと、これまでで最も高い価格に設定したiPhone Xを2017年11月に発売して以降、販売台数は横ばいでありながら、20%程度のiPhone売上高の成長を1年を通して経験してきた。2018年、iPhone Xを引き継ぐ形で同じ価格帯のiPhone XSと、さらなる高価格帯のiPhone XS Maxを投入。さらに、iPhone 8とiPhone 8 Plusの間の749ドルに位置するiPhone XRを登場させた。

  • iPhone XRは、iPhone XSとiPhone 8の真ん中ほどの価格で投入された

AppleのTim Cook CEOによると、現在のラインアップの中で最も人気があるのはiPhone XRで、次いでiPhone XS Max、iPhone XSという順に売れているという。しかしながら、Appleは今回の決算から個別の製品の販売台数を公表しなくなったため、売上高と販売台数から求める平均販売価格を求めることができなくなり、その販売傾向はより不透明になってしまった。

iPhoneの販売不振についてAppleは、外国為替がドル高に振れていることで、その影響を受ける地域の販売価格が相対的に上昇している点、先進国では端末補助金の廃止が拡がっている点、そして手元にある端末の再利用やバッテリー交換を通じてiPhoneの長期利用が促進されている点を挙げた。

経済的な側面から見れば、景気の踊り場に入る前に999ドルの新iPhoneを投入できた、と見ることもできる。言うなれば、Appleは景気の減速やスマートフォン市場の縮小の直前に滑り込んで、スマートフォンから得られる収益を最大化できた、というわけだ。

サービス部門へのトランジション

Appleは、サービス部門の積極的な開拓を進めており、これに関連する数字もより多く公開するようになった。具体的には、サービス部門の成長の原動力となるiPhoneやその他の製品を含むアクティブインストールベース、そしてサブスクリプションサービスやApple Musicの購読者数だ。

iPhoneのアクティブインストールベースは、2019年第1四半期の段階で9億人に達するという。Androidの20億人と比較すると半分未満の規模ではあるが、1年前と比べて1億5000万人増加したという。また、iPhoneやMac、iPadを含むAppleプラットホームのアクティブインストールベースは14億人で、過去最高となった。これらは、今後も定期的に最新の数字を報告していくという。

App Storeは、元日だけで3億3300万ドル(約367億円)を売り上げ、サブスクリプションは1年前から1億2000万件増加して3億6000万件に達したという。この数字は、AmazonやNetflixの3倍もの規模に達している。アプリ開発者にとっては有望な購読サービスプラットホームとして映るし、Apple自身がサービスを展開するうえでも有利だ。

2019年第1四半期のAppleのサービス部門の売上高は108億7500万ドル(約109億9500万円)で、前年同期比19.1%増となり、初めて四半期で100億ドルを突破した。ただし、成長率は鈍っている。この点についてAppleのCFO、Luca Maestri氏は、無料サービスが製品部門からサービス部門へと移る再編を行ったためで、再編前の数字は24.3%増だったとしている。

Tim Cook CEOは決算発表のカンファレンスコールで、オリジナルコンテンツ市場への参入を明確に述べた。前述のように、14億のアクティブインストールベース、すでにサブスクリプションを利用している3億6000万件のユーザーを背景にしての参入となり、急速な立ち上がりが期待できる。

  • アップルはサービス部門の拡大を狙っている。写真はTim Cook CEO

また、弱い決算の中で注目を集めていたのは、サービス部門の利益率だ。製品部門の利益率は33.4%だったのに対し、サービス部門は62.8%だった。効率の良いサービス部門の割合を増やしていくことは、企業価値の向上にもつながっていく。

2016年のサービス部門の売り上げ規模を2020年までに2倍にするという目標は堅持されているが、今後手がけるオリジナル映像サービスによっては前倒しして達成されることも考えられるだろう。