2019年1月8日~1月11日、米ラスベガスで世界最大級の家電見本市「CES 2019」が開催されました。会場には世界中の家電、オーディオ・ビジュアル、さらには自動車メーカーや通信会社などが集結。多彩な最新テクノロジーを発表するとともに、製品を展示していました。ここでは、「スマートホーム」の最前線にフォーカスしてお伝えします。

  • セントラルホールで最も注目を集めていたLGエレクトロニクスのブース。スマート家電も充実していました

CES 2019の会場いたるところに白い衣装を着たGoogleのスタッフが立っており、Google Homeと連携できるデバイスやサービスを解説していました。Amazonも負けてはいません。会場のひとつ「Sands Expo」の入り口に、Amazonに関連する製品やサービスをまとめて展示するスペースを確保して、存在感を示していました。また、Sands Expo内で、ひときわ大きなエリアで展開していたのがスマートホームです。

  • Sands ExpoにはAmazonの特設ブース。もはやAmazon Alexa対応は当たり前

スマートホームという大枠で見たとき、ユーザーとの接点(ユーザーインタフェース)のひとつとなるのが、スマートスピーカー。実際、スマートスピーカーに対応する家電製品が数多く並んでいました。コネクテッドなライト、コンセント、カメラなどの多くに、Amazon AlexaやGoogle Homeのアイコンが付き、コネクテッドであることはもはや当たり前の状況です。

展示を見て回っていると、次の展開が感じ取れます。ちゃんと音声操作できるだけではなく、ユーザーの操作を必要としないスマートな空間こそが、次にやってくるスマートホームのステージ。プレスカンファレンスでそれを訴えていたのは、CESに初登場となった積水ハウスです。

初めてCESへの出展を果たした積水ハウス、新時代の住宅を発表

  • 積水ハウス「プラットフォームハウス構想」

2020年に創立60周年を迎える積水ハウスがCESに初登場。日本人プレスを集めて開催されたプレスカンファレンスでは、代表取締役社長の仲井嘉浩氏が「プラットフォームハウス構想」について発表しました。

  • プラットフォームハウス構想について説明する、積水ハウス 代表取締役社長 仲井嘉浩氏

「積水ハウスの60年は3つのフェーズに分けられます。第1フェーズは、耐震性や防火性能といったシェルターとしての家が人と財産を守る、「安全・安心」な住宅を提供してきました。第2フェーズは「快適性の追求」。環境に配慮した住まいづくりを進めてきました。

そして、これから30年、第3フェーズとして、『人生100年時代の幸せの提供』を目指します。第1フェーズ、第2フェーズで培った住宅の高品質をベースに、技術をさらに進化させながら、建物のアフターサービスだけでなく、住み手の人生に寄り添っていくビジネスモデルを展開していきます」(仲井社長)

「プラットフォームハウス構想」では、「家が健康をつくりだす」という価値を提案します。具体的には、急性疾患、経時変化、予防という3つのサービス提供です。

  • プラットフォームハウスの概念図。人生100年時代に向けて、「家が健康をつくりだす」仕組みを考えていきます

積水ハウスによると、脳卒中の年間発症者数は約20万人とされており、その79%が家で発症しているとのこと。脳卒中は早期の治療が重要な疾患です。現在は有効な治療薬が開発されていますが、発見が遅れることで、それらの治療薬が一部の対象患者にしか投与されていない現実があります。

心筋梗塞も同様で、年間死亡者数10万人のうち、66%が家で発症しています。このほか、浴室などの溺死者数は年間5,000人以上、転倒転落による死亡者数は年間3,000人以上もいます。

  • 脳卒中になると過半数は亡くなるか、後遺症を抱えます。しかし、発症から4時間以内に治療を開始すると、有効な治療法があります

積水ハウスが提案するプラットフォームハウスは、上記のような家で発症する疾患、家で発生する事故を早期に発見し、いち早く対応できる仕組みを持った家です。

CES 2019の会場で流されていたデモムービーでは、起床後に倒れた男性を姿勢などから検知し、救急車を要請するシーンが紹介されました。突然の病気や事故で転倒したときなども、すばやく発見してくれる仕組みがあれば、病気、ケガ、後遺症を軽くできるわけです。

  • 腕時計やバンドなどを取り付けずに、ストレスフリーで心拍数を計測する仕組みなどを取り入れていきます

現段階では、具体的に住宅にどのようなセンサーを設置するかといったハードウェアの情報は開示されていません。ただし、IoT技術を駆使して、転倒時の早期発見や高血圧、睡眠時無呼吸症候群などを生体モニタリングすることで、急変や予兆の発見をサポートしていくとしています。

  • 毎日の状態を計測し、データを集めていくことで、本人の自覚がない体調の変化にもいち早く気づけるといいいます

積水ハウスは2019年1月から、日本に研究施設として「プラットフォームハウスラボ」を設立し、実証実験や臨床実験をスタートしました。2019年春からは、複数の大学病院で臨床研究を開始する予定で、医学的なエビデンスも積み重ねていくそうです。2019年夏には、実際の家で実証研究を行い、2020年初にはシステムの販売を開始する予定でいます。

こうした取り組みの全体像は、積水ハウスだけでは完結しません、センサーやセキュリティと連携するIoTアライアンス、蓄積したデータを元にさらなるサービスを構築するデータ活用形のアライアンス、サービスを提供するアライアンスのパートナーとして、NEC、NTTコムウェア、コニカミノルタ、産業技術総合研究所、日立製作所が参画します。

「積水ハウスは、これから到来する超高齢化社会、人生100年時代という2つの社会問題の解決に貢献するために、『我が家を世界一幸せな場所にする』というビジョンを掲げて事業を展開していきます」(仲井社長)

  • プラットフォームハウスの概念図。健康サポートはもちろん、ホームセキュリティや住宅そのものの安全性、そしてエコも兼ね備えています

プラットフォームハウスは2020年春の販売開始を目指しており、まずは新築戸建て住宅の販売を予定。将来的には、アメリカ市場で住宅販売を手がける子会社での販売も検討していくそうです。積水ハウスの仲井社長は、1年間の研究と実証実験、臨床研究の成果を2020年のCESで発表したいと話します。

スマートホームという観点からすると、スマートスピーカーに話しかけて家電を操作するのは単なる入り口。その先のひとつに、住み手が能動的に何かをしなくても、そして体に何かを装着しなくても、健康を管理できる環境があります。積水ハウスが目指すスマートホームの新しい姿は、ストレスを感じることなく健康を管理できる家のようです。