海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2019年1月30日から2月1日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「nano tech 2019」において、マグマで熱せられた熱水が深海底から噴出す深海熱水噴出孔の周辺環境を解明して得た技術の紹介を行っている。
深海熱水噴出孔の周囲は、高温かつ高圧の環境下であるが、そうした状況では、「水と油が自由に混ざり合う」という特異性が存在していることが知られている。この水と油が混ざる、という現象は「エマルション(乳化)」という言葉でさまざまな産業分野で活用され、近年は、油滴のサイズを微小なものとした「ナノエマルション」が、機能性化粧品などに活用されるようになっている。 今回JAMSTECが紹介しているのは、熱水噴出孔に印スパオアされた乳化技術「MAGIQ」。ナノエマルションを10秒で製造することができる装置で、単に高速なだけでなく、従来技術では困難であった油剤の乳化なども可能な高い性能も有している。その原理は、油を超臨海水に溶解させた後、毎秒200℃を超す速度で急速冷凍することで、油と水を再び分離させるというもの。その過程で、油の分子は互いに集合し、ナノサイズの油滴を形成。均一な状態で油滴を存在させることで、これまで難しかった長期間の乳化を可能としたという。
MAGIQは、JAMSTECの横須賀本部に設置されているほか、開発を担当したAKICOから購入することも可能。参考価格だが、1000万円弱ほどとのことで、産業用途で考えれば、決して高額な設備とは言えないだろう。
今回の展示では、食品添加物などを扱う三栄源エフ・エフ・アイと、JAMSTEC、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)、大阪大学の4者の産学協同研究の成果として、食品用天然色素の高付加価値化に向けた応用例などを実際に見ることができる。これにより、これまでは分離や色むらを防ぐために、飲料や食品の糖度に応じて乳化製品を使い分ける必要があったものが、独自の安定化付与技術により年単位での乳化が可能となったことから、幅広い飲料、食品でそういったことを気兼ねすることなく活用できるようになったと三栄源エフ・エフ・アイでは説明している。