2018年は、師走に日本中の消費を盛り上げた「PayPay」の太っ腹キャンペーンが大きな注目を集めました。キャンペーンの再開に備え、目利きぞろいの本誌執筆陣に「ちょっと値が張るけれど文句なしにオススメできるデジタルグッズ&家電」を紹介してもらいました。今回は、Apple製品やモバイルガジェットを専門としている海老原昭さん。海老原さんは、最近流行のメッシュルーターが欲しいとのこと。無線LAN歴20年の海老原さんがVelopを選んだ理由とは……?

自宅のWi-Fi環境を改善したい

現在あらゆるスマートフォンやPC、そしてゲーム機やIT家電に搭載されている無線LAN。無線LANルーターも安価になり、三千円も出せば最低限の環境は整えられます。多くの人が実際に自宅にWi-Fi環境を導入していると思われますが、同時に「つながりにくい場所がある」「思ったより速度が出ない」といった問題を抱えているのではないでしょうか。

筆者は現在、NECの「Aterm WG2600HP」というルーターを使っています。同社のルーターとしては(型落ちながら)ハイエンドにあたる製品で、とにかくトラブルの少ない堅牢さが身上の、玄人好みな機種です。電波強度も強く、ビームフォーミングなどの「繋がりやすい機能」を満載していますが、それでも鉄筋コンクリート建てのマンションの一室である我が家では接続しにくいデッドスペースができてしまいます。これを解消するために中継器にあたる「Aterm W1200EX」も導入していますが、親機と中継器をつなぐ帯域と異なる帯域で接続する機器(我が家の場合2.4GHz帯)は、いちいち接続し直さねばならないのが面倒ですし、もともと接続できた場所では2.4GHz帯どうしが干渉するせいか、中継器につなぐと速度が出ません。なんという面倒臭さ。

  • NECの「Aterm WG2600HP」。現在は後継機の「WG2600HP3」が販売中(実売1万5,000円前後)。高速・堅牢・スタイリッシュと3拍子揃った国産ルーターの名機

何せ我が家にはWi-Fi接続に依存する機器が多く、スマートフォンとタブレットだけで15台はあるし、ノートPCにデスクトップにホームスピーカーにSTBに携帯ゲーム機などを足すと合計で30台以上になります(仕事によってはさらに増える)。使用する規格もできるだけIEEE802.11acに統一したいのですが、機器によってはそうもいかないし、子供らに「部屋が変わったらSSID変えろよ」と言っても通じません。結果として大変面倒臭い運用を強いられています。

  • 我が家の見取り図。以前作業部屋だった子供部屋にルーターが置いてあり、リビングに中継器が置いてあります。ルーターは5GHzと2.4GHzの両方を吹いていて、ルーターと中継器は5GHzで接続され、中継器の先はゲーム機用に2.4GHzのみ開放しています

そこで注目したのが「メッシュルーター」です。これは親機と中継器という関係ではなく、基本的に同格である「ノード」を追加していくスタイルのルーターです。ネットワークを拡張する場合は「ノード」を追加するのですが、各ノードは同じSSID・暗号化パスワードを使うため、どこに接続するかを考える必要はありません。また、ノード間の通信帯域やルートはノード間で自動的に調整されるため、ユーザーは電波の届くところにノードを置いていくだけで拡張できる、大変柔軟なシステムなのです。

メッシュルーターはGoogleの「Google Wi-Fi」など各社から登場していますが、筆者が選んだのは、その中でもベルキンのネットワークブランド「Linksys」の「Velop」です。

  • 昔のLinksys製品とは随分印象が異なるモダンなデザイン。iPhone 6s Plusと並べてみましたが、意外とコンパクト。一瞬スピーカーかな?と思うメッシュデザインは、メッシュネットワークとかけているのでしょうか?

置いていくだけで自動設定の超賢い無線ルーター

今回紹介する「Velop」には、2.4GHz帯と5GHz帯の2バンドを使う「デュアルバンドモデル」と、2.4GHz帯+5GHz帯*2の3バンドを使う「トライバンドモデル」の2種類があります。今回紹介するのはトライバンドモデルの3台セット(想定価格:税抜き5万3,480円)です。

なぜトライバンドモデルを選んだかというと、後述するメッシュネットワーク構築のために5GHz帯を1バンド、専用に利用できるからです。いわば配管のためだけに5GHz帯を1つ(867Mbps)利用し、通常のWi-Fi用に5GHz帯(867Mbps)と2.4GHz帯(400Mbps)が丸々利用できるわけです(ただしVelopでは、必要に応じてWi-Fi側に3バンド割り当てて高速化できる「ダイナミックバックホール」機能が利用可能となっている)。

元々、VelopはApple Store実店舗およびAppleのオンラインストアで販売されてきましたが、昨年11月から一般店舗でも販売を開始しました。無線LANの普及に大きな貢献を果たしたAppleの「AirMac」シリーズは残念ながら昨年販売を終了してしまったのですが、Apple Storeではその代わりにVelopが販売されてきたという経緯があります。ちなみにApple Storeで扱われるには、本体やパッケージの美しさ、使い勝手の良さなどに、Apple独自の基準が設けられています。AirMacシリーズと言えばAppleらしい使いやすさや優れたデザインが特徴のシリーズでしたが、Velopの使い勝手やデザイン性をAppleも認めたというわけです。

メッシュルーターには奇抜なデザインのものが多いのですが、Velopの本体はシンプルな四角柱で、棚などに置いてあっても目立たないモダンなデザイン。底面にイーサネットポートや電源スイッチ、電源ポートなどが付いています。最近の無線LAN製品に多い、仰々しいアンテナがないところも個人的には高評価です。

  • 3台セットの場合、このようなパッケージで販売されています。メッシュルーターは3台以上からが真価を発揮すると思っているので、ぜひ3台セットで購入したいところ

  • 底面に各種ポートがある。電源とイーサネットケーブルはサイドに切られたホールを通すのできれいにまとまり、邪魔になりにくい。こういう細かい気遣いは大いに評価したいです

  • 電源アダプターは大きくはないがそれなりに存在感のあるタイプ。個人的にはもう少し小さいか、電源タップに対して横にケーブルが出せると好み。本体の電源に刺しやすいようコネクタが微妙に曲がっているあたりは芸が細かくてよろしい

セットアップは基本的に全てスマートフォン用の「Linksys」アプリを使って行います。まずはWANに接続するモデムとノードを1台接続して、ノードの電源を投入。ノードのLEDが紫の点滅になったら設定受け入れ状態なので、スマホアプリで設定を開始します。時間は数分かかりますが、基本的にはアプリに任せておけばOKです。

  • 専用アプリ「Linksys」はVelop以外のLinksys製品のセッティングにも利用できる模様(日本では実質Velop専用)。使い勝手はかなり良い

ここまでは普通のルーターですが、ノードを追加するあたりから様相が変わってきます。最初のノードの電波が入る範囲で次のノードの電源を入れたら、再びLEDの紫点滅を待ってアプリで操作すると、最初のノードと同じSSID・暗号化パスワードで最初のノードと接続された新ノードが設定されます。あとはこの繰り返しで3台目以降も設定できます。ちなみに電波状況が悪いとノード設置時に教えてくれるので、設置場所をずらして設定し直せば良好なネットワークが簡単に作れます。

  • ノードを追加していく。基本的にはアプリで操作する点も含めて1台目の追加と変わらない

  • 各ノードにはSSIDとは別に名前が付けられ、アプリから確認すると、どのノードにどのクライアントが接続されているかも把握できる

ちなみに、子機側が接続する場合は設定したSSIDとパスワードを使用しますが、自動設定のWPSも利用できます。ただしよくあるルーターのようにWPSボタンが本体にあるわけではなく、アプリ上で実行するようになっています。ちょっとユニークな仕様なので、WPSを使っている人は気をつけましょう。