11月22日には、IIJの技術やサービスの最新動向を演題とした講演会「IIJ Technical DAY 2018」を開催した。全部で7つのセッションが設けられたが、極めて専門的かつ濃厚な内容ばかりとなった。その中からいくつかを抜粋してご紹介する。

もともとIIJは定期的に技術者向けの技術情報の提供や交流を目的として、11月には3日間連続で講演を開催する「IIJ Technical WEEK」を開催していたのだが、今年は若手スタッフを中心にマンネリ化を防ごうという動きがあり、1日に凝縮しての開催となった。おかげで午後1時から7時50分までの間、みっちりとセッションが積み重なった、非常にタフなイベントとなった。

「セキュリティ動向2018」では、IIJセキュリティ本部長・斎藤 衛氏による2018年のネットセキュリティに関する事例や傾向が紹介。今もなお、メーカーなどを装った不審なメールの添付ファイルやリンクを踏んで感染するといった例が多いことや、今年の話題として仮想通貨関連の話題、特に盗難だけでなくコインマイナーが他人のリソースを使った例としてブラウザにマイニングさせるCoinhiveや、Webサーバーにコインマイナーを動作させようという試みなどが紹介された。

またIoT化が進んでいく中で、ハッキングなどの問題が増加傾向にある。ホームルーターなどに侵入され、DDoS攻撃などの踏み台にされるといった事例が増えているとのことで、ファームウェアを常に最新に保つことや、パスワードはデフォルトで使わず再設定する必要などがあるようだ。

個人的に面白かったのは「ホワイトボックス・スイッチの期待と現実」(IIJネットワーク本部 SDN開発部長 白崎 博生氏)で、IIJでASICによる高速スイッチングを実現しようとホワイトボックススイッチ製品の導入を検討したが、保守体制などを構築する手間を考えるとメリットが少なく、特定ベンダーにロックインされてしまう危険性などから断念したという一種の失敗・苦労談だった。なかなか他者の失敗から学べる機会も少ないので、聴講していたエンジニア諸氏には興味深かったのではないだろうか。

最後のセッションとなった「特別座談会:災害とインターネット」(IIJ サービス統括本部 サービス運用企画部長 藤井 直人氏、IIJ 東日本事業部 札幌支店 技術課長 太田 良二氏、IIJ サービス基礎本部 副本部長 小林 努氏)では、9月に発生した北海道での震災とそれに伴う大停電で、IIJの札幌支社および札幌データセンターがどのように対応したかの紹介と、過去の災害からの経験も合わせ、現在IIJのネットワークおよび管理体制がどのように敷かれているかが紹介された。

これによると、IIJは現在東京と大阪の2拠点に主要な機能を分散・二重化して配置しており、どちらかが災害で沈黙しても問題ない体制を作っている。また、ネットワーク自体も国内は太平洋側ルート・日本海側ルートの二重化が実現しているとのことだ。日本のネットワークの根幹を支えている同社だけに、海外も含めて実に周到な対策が取られていることを確認できて安心感を覚えられた。

  • 世界規模でも西回りと東回りで世界を一周できるルートを構築しており、災害や戦争などのリスクで通信が途絶しないような工夫をしている

IIJでは本稿で紹介したこれらの催しに加え、「IIJmio meeting」など、同社のエンジニアとユーザーが交流する機会を定期的に開催している。ウェブ配信なども行われているので、興味のある方はぜひ一度参加、あるいはご覧になってはいかがだろうか。