フェイスブック ジャパンのFacebook/Instagram広告運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。
キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。
本連載ではこれまで、Facebook、Instagramに代表されるデジタルマーケティングの重要性について、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードの丸山祐子さんに伺ってきた。
前回は「クリエイティブ」について一通り説明したが、今回は、SNS広告の効果をもっと上げるための「テレビとFacebook、Instagram広告の相乗効果」というテーマで話を聞いた。
多様化するライフスタイルと広告
これまではデジタル広告の話を続けてきたが、広告を語る上で避けては通れないのが「テレビCM」だ。いわゆる“広告”というとまっさきにコレを思い浮かべる人も多いだろう。圧倒的多数の視聴者を抱え社会的影響力も大きいテレビCMは、広告業界の花形であり続けた。しかし、そんなテレビCMにも課題が存在すると丸山さんは言う。
「1つは、若年層のテレビ離れです。若い世代にはそもそもテレビを持っていないという人も少なくありません。持っていたとしても、HDDに録画しておいて、見る時にはCMをスキップする――、という人も多いことでしょう」(丸山)
ライフスタイルの多様化により、決まった曜日の決まった時間にテレビの前に座って見るという行為のハードルは以前よりも上がっている。つまり、テレビCMだけでは、アプローチできない層が徐々に増えてきている、というわけだ。
一方でスマートフォンを始めとするデジタル機器は今やテレビ以上になくてはならない存在になっている。常に身につけており、片時も手放さないという人も多い。テレビのメリットが「圧倒的多くにリーチできる」ことであるならば、スマートフォンはすでにテレビ以上の存在だといえる。
ただし、スマートフォンはテレビの上位互換ではない。チャンネル数が限られているテレビと違ってスマートフォンは人それぞれ使い方が異なり、アプリもサイトもさまざまだ。さらに、パーソナライズ化が進んでおり、同じサービスであっても人によって見ているコンテンツはまったく異なっている。とにかく大勢にリーチするのが目的であれば、未だにテレビは有効な媒体といえる。
テレビで認知、デジタル広告で購買行動へ
同じ「広告を配信できる媒体」でありながら、スマートフォンとテレビはまったく異なる性質を持つ。SNS広告にない良さをテレビCMは持っているし、テレビCMにできないことがSNS広告にはできる。
丸山さんは「Facebook、Instagram広告とテレビCMは共存しうるし、むしろ併用することでシナジーを生み出せます」と強調する。
たとえばテレビで缶コーヒーのテレビCMを見たとする。自宅でテレビを見ている場合、CMを見たからといってその場で購入できるわけではない。
その翌日、同じ缶コーヒーの広告をSNSで見るとしよう。媒体はスマートフォンなので、もしかすると外にいるときに見るかもしれないし、近くに自動販売機やコンビニがあるかもしれない。より購買に近い場所で、より高い頻度でのリマインドが可能になるというわけだ。
圧倒的リーチ力を持つテレビと、よりパーソナライズされ、スマートフォン上でも見られるFacebook、Instagram広告を併用することで、ブランドリフト効果につながることはすでにさまざまな事例が証明している。その1つが化粧品ブランド「メイベリン」である。
メイベリン ジャパンは、新製品であるマスカラ「ビッグショット」の日本発売にあたり、テレビCMだけでなくInstagramを活用した広告を展開した。
その結果、Instagramで200万人のターゲット層にリーチ。ブランド好意度の上昇や購入意欲の上昇につながり、テレビと比較してリーチ単価率を86%削減に成功したという。
ただし、テレビCMが無駄に終わったわけではない。尺に制限があり、セグメントが難しいテレビCMでは、ブランドの認知度アップと新作マスカラの紹介に注力し、Instagramでは若い世代にターゲットを絞って商品を全面に押し出したビジュアルを展開した。つまり、テレビとInstagramでそれぞれの広告の役割を変えたのである。
その結果、テレビCMで認知度が向上し、Instagram広告で購買につながるという理想的な流れが生まれた。役割の異なる2つの媒体を併用することでシナジーを生み出した好例といえるだろう。
広告も恋愛も「一目見ただけ」では好きになれない?
また、テレビCMは周知の通り非常にコストがかかり、中小企業では継続して打ち続けることが難しい。瞬時に注目を集めることはできるかもしれないが、継続しなければすぐに世間の関心は薄れてしまうことだろう。
「恋愛でもそうですが、フリークエンシー(接触頻度)は非常に重要です。いくらいいなと思う人でも1回しか会ったことのない人を好きになるのは難しいですよね。広告も同じで、何度も目にすることで態度変容を起こす機会を作っていくものかと思います」(丸山)
テレビCMを高頻度で出し続けることができればフリークエンシーを高めることもできるが、コストが非常にかかるだけに、それができる企業はそう多くはない。そこで役立つのがリーチ単価が安く、ターゲット層に何度も接触できるFacebook、Instagram広告というわけだ。
メイベリンの事例でもわかるように、Facebook、Instagram広告はコストが安く中小企業でも(その気になれば個人でも!)気軽に始められるという利点がある。紹介した事例では、Facebook・Instagram広告のコストパーリーチ(リーチ1件あたりのコスト)はテレビCMの約7分の1(86%削減)であったそう。
広告効果を上げるためにテレビCMをやめる必要はないが、より効果を上げるためにはFacebook、Instagram広告と併用するのがベストといえるだろう。もちろん、その場合はクリエイティブをプラットフォームの属性に合わせてしっかり制作する必要がある。そのあたりの話については、前回の記事で紹介した通りだ。
さて、ここまででFacebook、Instagramを活用したマーケティングと広告制作の考え方については見えてきたが、これで終わりではない。
広告を出したなら、その効果を測定して最適化する必要があるのだ。
次回はSNS広告における効果測定について解説していただこう。
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(山田井ユウキ)