これからのものづくりの世界に必要な考え方
PTCは11月13日、都内でプライベートカンファレンス「PTC Forum Japan 2018」を開催。IoT/ARを活用し、フィジカル(物理)世界とデジタル世界の融合によって創出される新たなビジネスモデルや、これから必要となるであろう未来に向けた技術の紹介などを行った。
デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)の中心となるのはデータの存在であるが、PTC製品統括エグゼクティブバイスプレジデントのキャスリン・ミットフォード氏は、データについて「会社のアイデンティティを決めるDNAであり、方向性を決める道しるべとなるもの」と表現。データをどのように活用すべきかが重要になるとする。
その中で産業分野で特に重要になってくるのは、設計から生産、サービスに至るバリューチェーンをクローズドループ化して、それぞれの部門のデータを別の部門とシームレスにやりとりする「コネクテッドエンタープライズ」の発想となる。これまでのデジタルツインという言葉は、デジタルとフィジカルをどのように結び付けるか、という部分を意味することが強かったが、コネクテッドエンタープライズでは、そこからさらに一歩進み、1つのシステムが稼働するフィジカルと、そのデータを司るデジタルの連携のみではなく、そうしたシステムが複数つながって構成されるシステムプラットフォームそのものをどうデジタルとつなぐのか、ということも考えていく必要がでてくる。
具体的には、デジタルツインでフィジカルからのデータを元に、次の設計を進めて行くことができるようになるが、設計すべての段階でデータを活用できているかというと、難しいところがあったとのことで、そうした不得意な部分を補うために、ANSYSとパートナーシップを2017年に締結。今夏、その連携の発展形として、ANSYSのDiscovery Liveをベースに、リアルタイムでシミュレーション結果を得ることを可能とする「Creo Simulation Live」を発表。これにより設計の段階でシミュレーションをいつでも活用できる状態になるという。
Creo Simulation Liveは、2018年12月よりアーリーアクセスプログラムの提供を開始する予定のほか、2019年にはCreo 4/5/6に対応した製品として順次リリースされる予定で、「多くの判断を日々していかないといけない設計者が、これを活用することで、その方向性を提供することができるようになる」とする。
パートナーシップの拡大で顧客のニーズに対応
ANSYSのほかにも同社は、マイクロソフトと2018年1月に、ロックウェル・オートメーションと2018年6月に戦略的パートナーシップをそれぞれ締結している。
ロックウェルとのパートナーシップでは、FactoryTalk InnovationSuite powered by PTCとして、ThingWorxなどPTCのソリューションと、ロックウェルのFactoryTalkソリューションを融合。これにより、設備の場所や状況の把握が容易となり、設備の診断やアナリティクス、問題の発生前の予兆検知などが進展できるようになり、生産性の向上を果たすことができるようになるという。一方のマイクロソフトとのパートナーシップも似たような形で、PTCのソリューションとAzureを組み合わせることで、何か設備に問題が生じればアラートを飛ばす、といった対応が可能となる。
こうしたITとOTのシームレスな接続を裏で可能にするのがPLMの存在だ。最近の動向としては、国内外を問わず、PLMを単なる製品データ管理ツールではなく、バリューチェーン全体を管理するものであるという認識が高まっており、そうした顧客側の意識の変化と得意分野を有するパートナーとの連携により、PTCはより高い生産性を実現するという付加価値を顧客に提供し、デジタルフォーメーションの波に乗り、変革を実現したい企業の支援を拡大していければとしている。
デジタルと物理の垣根が無くなる未来
IoT/ARを中心に据えることで、デジタルトランスフォーメーションの波に乗ったともいえるPTCだが、その次に来る技術の開発も怠ってはいない。
その1つが、デジタルとフィジカル(物理)の垣根を無くす技術の開発だ。例えば、ARを使って、設備の動作などをプログラミングすることを可能とするという技術は、AR上で行いたい動作を意味するアイコンを対象部分に配置、その前段となる機能から、関連性を示すARの線を引いてやるだけで連携が可能となる。
また、この応用系としては、設備のHMIのユーザインタフェース(UI)に新しい機能を追加したいと思ったとき、タブレットのカメラで映し出し、ARのオブジェクトとしてHMIを認識。その上にあるアイコンもAR上の別の場所に移し、必要となるアイコンを新たにHMI上に配置する、といったことも可能となる。
こうした技術は1~3年先を見据えて開発を進めていると同社では説明しており、ARの発展技術として、近い将来、同社のソリューションとして提供される可能性が高いと思われる。