かつて、超薄型ポータブルMacを待望していた私は、初代MacBook Airが登場した2008年にすぐ手に入れた。さらに、フラッシュストレージと新しいデザインへ移行して耐久性を高めた2011年モデルのMacBook Airも入手した。

その後は、Retinaディスプレイを初めて搭載した2012年モデルのMacBook Pro 15インチをメインマシンとしてきたが、MacBook Airはサブ機として最近まで活躍した。macOSが進化とともに軽快さを増したこともあるが、フラッシュストレージのみを搭載するMacBook Airの耐久性が非常に高いことは、使ってきた経験からも太鼓判を押せる。

そして、新しいMacBook Airの販売が11月7日にいよいよ始まった。レビューをお届けしたいと思う。

  • 新しいMacBook Airが登場した。パッケージは、MacBook Airの特徴であるくさび形ボディを強くアピールするデザインになっている

最も人気のあるモデルの刷新

MacBook AirがAppleのポータブル型Macの中で最も人気がある理由は、1000ドル前後という手ごろな価格帯だけが理由ではない。質感の高いアルミニウムのボディ、13インチという十分なサイズのディスプレイ、12時間のインターネット利用が可能なバッテリーライフ、十分にそろったポート類、そして4年は確実に使い続けられる耐久性。ポータブル型でありながら、長く親しむことができるオールインワン性を備えている点がMacBook Airのアイデンティティであり、人気の理由だった。

Appleは、これらのMacBook Airの性格を受け継ぎながら、2015年に投入した1kgを切るMacBookからの学びを新しいMacBook Airにつぎ込んだ。

  • 新しいMacBook Airは、従来モデルのアイデンティティを継承しつつ、MacBookなどで採用された新しい要素を盛り込んでいる

新しいMacBook AirのRetinaディスプレイは印刷のような表示と、非常に細かい映像や写真の表現を実現する、満足度の高いディスプレイだ。MacBook Proがサポートする広色域P3や、環境光に合わせたホワイトバランス調整を行うTrueToneディスプレイなどには対応しないが、表示は美麗そのものだ。

  • ディスプレイは、晴れて待望のRetinaディスプレイとなった

デザインについては、以前のモデルから大きく飛躍するものではない。これまでのMacBook AirからMacBookへ派生しており、これが再び戻ってきた、という印象だ。ヒンジの部分から先端に向けて本体が細く絞られていくデザインも健在だ。

  • ボディの先端に行くほど細く絞られていく美しいくさび形のデザインを継承する

  • トラックパッド手前の切り欠きは、従来モデルと同じく底面まで貫通している

既存のMacBook Airと同じ13.3インチのディスプレイを備えながら、ベゼルを半分に縮小したことで、デバイスの面積は小さくなっている。ユーザーにとっては、そのコンパクトさだけでも乗り換える魅力となる。年次のアップデートが繰り返されるサイクルから離脱してすでに3年近くが過ぎており、多くのユーザーがMacBook Airを買い替える需要が生まれるかもしれない。

2つのThunderbolt 3ポートにもAppleらしいこだわりが

これまでの13インチMacBook Airは、3つのUSBポート、DisplayPortを兼ねるThunderbolt 2ポート、そしてさらにSDXCカードスロットまで備え、アクセサリなしでも十分な接続性を備えてきた。

最新のMacBook Airは、左サイドに2つのThunderbolt 3ポートを備えるだけとなった。 Thunderbolt 3ポートは、USB-Cと同じ形状で互換性があるが、データの転送速度は40Gbpsにまで高まり、かつ充電にも利用できる。MacBook AirにもUSB-C充電機が付属し、どちらのポートからでも充電が可能だ。

このポートからディスプレイやeGPUへの接続を行うことができるほか、同じくUSB-Cを搭載したiPad Proの充電も可能になる。ただし、現在iPhoneに付属するケーブルは刺さらず、Apple StoreでLightning - USB-Cケーブルを手に入れる必要がある。

ここで1点気づいたことは、MacBook Proとの共通点だ。MacBook Proは左右に2つのThunderbolt 3ポートを用意しているが、この2つのポートの間隔はMacBook Airでも共通化された。そのため、MacBook Pro向けの2つのポートを利用するハブはそのまま利用できる。あるいは、1つのポートに差し込むUSB-Cハブは、iPad Proとも共有できるのだ。

  • 新しいMacBook Air(上)とMacBook Pro(下)。2つのThunderbolt 3ポートの間隔は統一された

デスクでUSB接続のキーボードを使いたい場合や、HDMIなどに出力を行いたい場合などは、市販のUSB-CハブやThunderbolt 3ハブを用意する必要がある。通常のUSBポート、HDMI、Ethernet、SD/microSDカードスロットなどを備えた製品が多く、拡張性の問題を一挙に解決できる。さまざまな製品がアクセサリメーカーから発売されており、用意しておくとよいだろう。

オールインワンモデルとしての性能とは

MacBook Airは薄型ポータブルながら、多くの人にとって唯一のコンピュータとなり得るオールインワン性を兼ね備えた特異な存在だ。

これまでのMacBook Airは、価格に対して若干ではあるが上位のプロセッサを備えており、これが長期的な利用を可能としてきた。だが、新型となるMacBook Airには、1.6GHz(Turbo Boost時3.2GHz)の第8世代デュアルコアIntel Core i5しか選択肢が用意されなかった。これは、Yシリーズと呼ばれる低消費電力を重視した製品で、7Wで駆動する。

Appleは、このプロセッサの性能は顧客にとって十分な性能を示す、と自信を見せる。ただし、Core i7などの選択肢がないことについては、それまでのMacBook Airから性格が変わっていることを表している。パフォーマンスが少しでも気になるなら、クアッドコアを備える13インチMacBook Proを検討する必要があるだろう。

その一方で、メモリは8GBから16GBまで拡張でき、SSDも1.5TBまで内蔵できる柔軟性を備えている。また先述の通り、Thunderbolt 3ポートを通じて、5K/60Hzもしくは4K/60Hz×2のディスプレイ拡張が可能で、eGPUを用いればさらに強化できる。

Appleは、MacBook Airに対して最新のチップセットを用意してはいるが、パフォーマンスの面で高みを目指そうという気はない。4Kビデオの書き出しなどは、おそらくiPad Proはもちろん、iPhone XRのほうが快適な結果を生み出すことになるはずだ。

その点で、MacBook AirはiPhoneなどのデバイスがすでに手元にある前提で、多くの人がMacで行う作業の役割を洗い直した結果、1.6GHz Intel Core i5が最適、という結論を導いたものと考えられる。