AI搭載の無線LANアクセスポイントなどを提供する米Mist Systemsは11月6日、記者会見を開き、日本法人としてミストシステムズを設立したと発表した。説明会には米Mist Systems 共同設立者 社長兼CEOのスジャイ・ハジェラ氏が出席した。

日本法人の代表取締役社長には中原浩輝氏が就任。ネットワンパートナーズとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)とパートナーシップを締結し、日本のITエコシステムパートナー向けにAIエンジン「Marvis」を搭載した無線LANアクセスポイントを提供する。

冒頭、ハジェラ氏は「Wi-FiのアーキテクチャはAWSやiPhoneが出る前から登場していたが、当時からアーキテクチャは変化していない。現在は、無線LANの爆発的な消費に対して対応していない一方で、新しい通信プロトコルは登場しているが、古いアーキテクチャを利用し続けている」と指摘。

  • 米Mist Systems 共同設立者 社長兼CEOのスジャイ・ハジャラ氏

    米Mist Systems 共同設立者 社長兼CEOのスジャイ・ハジェラ氏

そこで、無線LANの新しいアーキテクチャを構築。一般的な無線LANと比べ、同社の無線LANは2つの差別化要因があるという。

1つ目はクラウドベースのネットワークはWi-Fi/Blutoothのアクセスポイントから情報を受信するが、同社のクラウドネットワーク「Mist Cloud」はマイクロサービスアーキテクチャを用いており、2つ目は世界初だというネットワークにおけるAIとしてMarvisを活用している。

  • Mist Systemsの無線LANは2つの差別化要因があるという

    Mist Systemsの無線LANは2つの差別化要因があるという

具体的には、特許取得済みのVirtual Bluetooth Low Energy(vBLE)を活用し、同社のWi-Fi/BLEアクセスポイントから8本のBLEビームを出し、そのエリア内に仮想的にビーコンの位置情報を割り当て、そのエリアに入ってきたスマートデバイスが受信したBLEビームの信号強度をIWCで解析することで、スマートデバイスの精細な位置情報を割り出す。そして、これらの仮想ビーコンとスマートデバイスの位置情報が重なった際に、ビーコン機能を動作させる。

また、機械学習機能で接続するスマートデバイスの機種に応じて通信経路損失を計算して位置情報を高精度化することで、物理ビーコン利用時よりも精細な位置情報に基づくサービスの提供を可能としている。

Marvisは、アクション可能な詳細の可視化や観測可能なサービスレベルの提供、ダイナミックパケットキャプチャ、予兆による推奨機能、高精度の位置情報、AI+自然言語処理での仮想アシスタント機能を備える。

さらに、WLANの動作と迅速なWi-Fiのトラブルシューティングのためのインサイトを提供し、自然言語処理を使用することで、IT管理者にダッシュボードやコマンドラインインタフェース(CLI)を使用せずに複雑な質問に対して回答を提供するという。

ハジェラ氏は「新たなITサービスモデルはAIとプログラマビリティをベースに構築されることから、ユーザーエクスペリエンスをマネジメントする必要がある。そのため、まずスタートするのが無線LANとなる。なぜかと言えば、ユーザーは無線LANを介して初めてネットワークに接続するからだ」と述べていた。

日本のIT各社とパートナーシップを締結

続いて中原氏が登壇し、同社がアドレス可能な市場について「まずは、新たな無線LAN規格を必要とする市場となり、クラウドベースへのシフトする市場、モバイルファースト対応ビジネスクリティカルインフラ(AIベースの運用)、顧客とのエンゲージメント、資産管理、分析など位置情報をベースにした新規ビジネスを創出する市場となる」と、説明した。

  • ミストシステムズ 代表取締役社長の中原浩輝氏

    ミストシステムズ 代表取締役社長の中原浩輝氏

これらの市場での拡販を進めるにあたり、同社ではネットワンパートナーズと販売契約を、NTT ComとはMSP(Managed Service Partners)契約を、NTTジェトロニクス、ネットワンシステムズ、住友電設、NECネッツアイ、サイコンプ、パナソニックESネットワークとリセラー契約をそれぞれ締結。

  • ネットワンパートナーズによるミストシステムズへの付加価値の概要

    ネットワンパートナーズによるミストシステムズへの付加価値の概要

  • NTT Comとはエンドツーエンドのソリューション提供を目指す

    NTT Comとはエンドツーエンドのソリューション提供を目指す

加えて、ITスタック全体で必要とされる自動化とインサイトを提供するためにエコシステムパートナーと協力し「AI for ITパートナーシップ」を開始した。パートナーはジュニパーネットワークス、パロアルトネットワークス、ヴイエムウェアの3社となる。

ジュニパーネットワークスとは同社のスイッチと連携する。「Juniper Contrail Service Orchestration」などの各種マネジメントツールと連携することで、ミストシステムズのAIを活用した自動化やアプリケーションの可視化、運用の統合を行い、将来的にはジュニパーのセキュリティ製品との連携を予定している。

  • ジュニパーネットワークスとの連携概要

    ジュニパーネットワークスとの連携概要

ヴイエムウェアとは、SD-WAN製品「VMware NSX SD-WAN by VeloCloud」と連携。ネットワークで、なにか異常が発生した際にAIで分析した上でAPIを通じてエンドツーエンドでの可視化、サービスレベルのモニターとアラート、イベントの相関関係把握による早期の課題解決を図る。

  • ヴイエムウェアとの連携概要

    ヴイエムウェアとの連携概要

パロアルトネットワークスとはセキュリティで連携し、ネットワークとアプリケーションパフォーマンスを含むセキュリティリスクとユーザーエクスペリエンス品質のモニタリング、モバイルユーザー/端末向けポリシーの設定・実行、セキュリティ脅威発見時の自動的対象リソースへのブロックとデバイスの隔離、問題発生時における端末の一条とのマッピングを行う。

  • パロアルトネットワークスとの連携概要

    パロアルトネットワークスとの連携概要

なお、すでに複数の企業が検証を実施しており、うち1社は今月中に来訪者の位置情報を把握するために商用環境がスタートするという。