星空を背景に、記念写真を撮影したことはありますか。カメラ好きの人ならお分かりいただけると思いますが、「星空」と「人の顔」の両方を同時に美しく撮影するのは、至難のワザです。でも星空の輝く素敵な夜なら、誰しも記念写真を撮りたいと思うでしょう――。そんなワガママを叶えてくれるサービスが登場しました。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    星と人の顔の両方を同時にキレイに撮影できるサービスが登場

全国で、星空との記念撮影が可能に!?

天の川を背景に自動撮影できるサービス「ほしのしずくスタジオ」を開発したのは、博報堂アイ・スタジオ。本当に天の川銀河をバックに記念撮影できるなら、これほどSNS映えする写真もないでしょう。その仕組みが気になります。そこで、サービスが開始された雫石プリンスホテル(岩手県岩手郡)にて、開発者の博報堂アイ・スタジオ 川崎順平氏と、同ホテル 上遠野千亜紀氏に話を聞きました。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    博報堂アイ・スタジオ 川崎順平氏(右)と、雫石プリンスホテル 上遠野千亜紀氏(左)

ほしのしずくスタジオは、プロのカメラマンがいなくても星空の下でセルフ撮影できるのが最大の特徴。ソニーのデジタルカメラと、博報堂アイ・スタジオが開発した自動撮影サービス「capture」をリアルタイムに連携、さらにWi-Fi接続されたiPhoneの専用アプリで制御する設計です。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    ソニーのデジタル一眼カメラ、博報堂アイ・スタジオのcapture、iPhoneアプリを組み合わせて自動撮影します

地域や季節、その日の天候によって、空の明るさはさまざま。川崎氏は「開発は試行錯誤の連続で、これまで何千枚も写真を失敗してきました」と苦笑いします。

写真の加工技術の進んだ現在、いってみれば加工や合成によって星空を“作り込む”ことも可能ですが、ほしのしずくスタジオでは一切の加工処理をしていません。「リアルな星空を撮ることをコンセプトにしています。たとえ雲が多くても、その日その場所で、その時間帯にしか撮れない写真を撮って欲しいからです」と川崎氏。どんな写真が撮れるのか、ますます期待が膨らみます。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    ホテルのいたるところで「雫石銀河ロープウェー」が告知されていました

話は少し脱線しますが、岩手県、郷土の童話作家、宮沢賢治も雫石の星空を愛した一人でした。そうした背景もあり、雫石プリンスホテルでは「雫石銀河ロープウェー」を運行するなど、星空を観光資源のひとつとしています。

上遠野氏によれば、「最近ではInstagramを見て、星空の写真を撮りに当ホテルを訪れたというお客さまの姿もあります」とのこと。お盆の最盛期には、1日で300人~400人が星空観察を目当てに訪れたというから驚きです。なお、プリンスホテルでは今後、経営する全国のホテル・レジャー施設に、ほしのしずくスタジオの導入を検討しているとのことでした。

撮影してみたよ!

夜、ほしのしずくスタジオの撮影現場を体験してきました。設営場所はロープウェーでたどり着く、標高730mの夏のゲレンデ。緑の生い茂る草地に、グランピングブースが特設されています。ここまで来ると街の明かりは届きません。

試しに手持ちのスマホとデジカメで星空を撮影してみましたが、筆者のカメラでは焦点が合わずシャッターが切れませんでした。次にカメラを三脚に固定し、露光時間を10秒以上に設定。すると夜空は撮れましたが、人はぶれ、ライトなどの照明は光量が強すぎて白とびしてしまいました。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    ほしのしずくスタジオの特設ブースを撮影。露光時間を長くすると照明は白とびし、人はぶれてしまいます

露光時間を短くしてブースを撮影するとどうなるでしょう。今度は、星空からの光をとらえられずに、空が真っ黒に……。星空と人の顔の両方をキレイに撮影する難しさを、改めて感じます。こんな状況下で、ほしのしずくスタジオではどんな写真が撮れるのでしょう。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    露光時間を短くすると、空は真っ黒に

実際に、モデルの女性2名に撮影台のイスに座ってもらいました。スピーカーから撮影の開始を告げるアナウンスがあり、あっという間に撮影は終了。果たしてその写りは?

この日はあいにく満月が煌々と輝き、雲も出ていたため最高の条件ではありませんでしたが、それでも納得の写真となりました。

  • 雫石銀河ロープウェー「ほしのしずくスタジオ」

    星空も人の顔もキレイに写る、よい写真が撮れました

物質的に豊かな現代に生きる私たちの消費動向について、「モノ消費からコト消費へ」といったキーワードで語られる機会が増えています。星空のキレイな地域で、そこでしか体験できない観察ツアーを楽しむ、これも立派なコト消費です。

雫石銀河ロープウェーの参加者からは「時間がたつのを忘れる、そんな時を過ごしました」「親子で星空を観察し、とても素敵な思い出になりました」といった声が寄せられているそうです。素敵な体験は、できれば折りに触れて思い出したいもの。ほしのしずくスタジオの取り組みは、星空観察のコト消費を写真という形で永遠に残す、そんなサービスになっていました。

なお、雫石銀河ロープウェーの運行と、ほしのしずくスタジオのサービス、2018年10月27日までです。詳細は雫石スキー場 雫石プリンスホテルのWebサイトを参照してください。