ついに登場したニコンのフルサイズミラーレス「ニコンZ」。実機をいち早く手にして感触を試した落合カメラマンに、率直な感想をファーストインプレッションとしてまとめてもらいました。

Zの名称は“Fの呪縛”からの解放を意味する?

いやー、ブッ飛んだ。そうきたかーって感じっすね。ナニに?って、まずは中身ではなくその名前に。新システムのCMキャラクターは、やっぱり水木一郎さんですか??(シンプルすぎる発想ですんません……)

そして「Z」のボディが6番と7番からのスタートである点は、そう遠くない将来に超高速系の9番とチャレンジングなミドルランナーである3番、そしてエントリー系の3桁モデルが出るということを暗に教えてくれているということでOK?(早くも勝手な妄想を先走らせてスンマセン……)。ついでにいうなら、「Z」のロゴって、90度横に寝かせるとキレイな「N」になるのだけど、ジツはそれを狙っての「Z」なんでしょ????

  • ニコンのフルサイズミラーレスは「ニコンZ」というシリーズ名となった

ニューモデルの名前に関しては、大した根拠もなく「f」とか「d」の“小文字攻め”でくるんじゃないかと思っていた。でも、フタを開けてみりゃ、ニューモデルはもはや「Fにあらず」。素晴らしき足跡としがらみがズシリと詰まった「Fマウント」という名の足枷が外れ身軽になったところで、再び「F」という名の重いカバンを担ごうとは誰も思わないだろう。これは、「Z」のスタートであるとともに“Fの呪縛”からの解放なのだ。ちょっと寂しい気がしないでもないけれど。

α7シリーズを強く意識した2モデルで登場

ニコンZは、まず24MPモデルと45MPモデルの二刀流攻めを採った。先行する目の上のタンコブを意識しないわけにはいかず、そうなると「高画素モデル」と「万能モデル」の二本立てを見せることの有意性や効果をまずは優先せざるを得なかったことが想像できる。“後追い感”がきわめて明確になってしまうという欠点はあるものの、「この新システムは幅広いニーズに応え得るものである」ことをストレート、かつダイレクトにアピールできるという利点は明確だ。

  • ニコンZは、高画素タイプの「Z7」とバランスのよい「Z6」の2モデル構成となる

ただ、正攻法であるだけに正直インパクトには欠ける。実物を手にしてのあくまでも個人的な第一印象が「なんだかフワッとしているなぁ」だったのはきっとそのためだ。グサッと突き刺さってくるものがない。良くも悪くも想定内のアウトライン……そのぶん安心感には絶大なものが備わっているのだが、たぶん心のどこかではもう少しのサプライズを求めていたんだと思う。

ちなみに、Z7とZ6でもっともガツンときた負のサプライズは、メモリーカードスロットがXQDのシングルだったところ。これは現時点、受け取り方によってはダブルのボディブローになりかねないポイントだと感じている。「XQDのみ」の決断については、未来予想図を仔細に検討しての判断であることは想像に難くないけれど、少なくとも2018年の今の段階においては「そこだけズバ抜けて先に行っちまってるなぁ」というのが率直な思いだ。ホントに大丈夫なのかしらん……。

  • XQDメモリーカードの1スロット構成となり、SDメモリーカードやコンパクトフラッシュは使えない

レリーズの感触とファインダーの見え具合にニコンの本気がにじむ

内に秘めたる実力に関しては、まだ空撃ちだけでちゃんと使っていないし、自分で撮った画像を検証することもできていないので何ともいえない。しかし、競合機がどう転んでも追いつけないレベルにまで引き上げられている上質なレリーズ感触(シャッターボタンの押下感触に加えカメラ自体の動作感触も含めて上質であるということ)と、単に精細なだけではなく視野の四隅に至るまで完全に均一、かつキメ細やかな“見え”を実現している、こちらも「上質」と表現するのがもっともしっくりくるEVFのハイレベルな仕上がりは一瞬で感じ取ることができた。

これら「カメラとして筋の通った作り込み」がしっかり成されているところには、歴史ある一眼レフメーカーの矜持が言葉少なに、しかし濃厚に息づいていると思う。ニコンの本気がにじむ要素であるといってもいいだろう。

  • 一眼レフで磨き上げてきたシャッターボタンの半押しや全押しの絶妙な感触は、Zシリーズに継承されている

  • EVFの光学系にも力が入っており、ファインダーは四隅まで均一かつ精細に視認できる

反面、絞り込まれたボディに一眼レフと共通項の多い操作系を押し込んだことで、「ボタン押し+コマンドダイヤル回し」の操作を行う指に窮屈感が伴うようになっているところは、逆に一眼レフとの関係性に足を絡め取られている部分だといえるかもしれない。

特に、ボディ前面にふたつ設けられているファンクションボタンの押下+ダイヤル回しは、右手だけで行おうとすると結構キツめの指使いになってしまう。そもそもこのファンクションボタンは、左手の指で操作することが前提の配置であるようにも思うのだが、しかし、絶妙な握り感を提供してくれるグリップと軽量ボディのコンビが、右手だけで完結する使い方を積極的に採り入れたくなる仕上がりを見せているのも一方の事実ではある。

  • 2つのファンクションボタンは、一眼レフでプレビューボタンが配置されていた場所に設けられている

ナニゲにうれしかったのは、USB充電ができるところ。給電ができないところと、末尾に「B」の付くEN-EL15BでのみUSB充電が可能である点にはちょっとだけ注意が必要だが、USB充電は多少の制限があろうともできないよりはできた方が100倍いい。この点には、諸手を挙げての賛辞を贈りたいと思う。

性能面もレンズのデザインも、もっとハデさが欲しかった

正直、「後追いなんだから、もっとブチかましてくれよ!」との思いもある。初速は遅くとも徐々にスピードを乗せる戦法であろうとのポジティブな期待は捨てないつもりだけれど、「一眼レフにも気を配らなければならない一眼レフメーカーにはこれが限界なのか」とのネガティブな分析もこのままでは捨てられそうにない。結論めいたことをいうのには、まだまだ早すぎるのだけど。

そう、ニコンZは第一章が始まったばかり。今後どのように化けるのか、少なくとも向こう3年は冷静に受け止め続ける必要があるだろう。どこかで大化けする可能性はゼロではないからだ。でも、NIKKOR Zのメリハリに欠ける外観はどーする? それはもう決まり? レンズの見た目は、なんていうか、もうちょっとヒネリが欲しかったような気がしないでもないんだよなぁ……。

  • ニコンZ7(手前)と一眼レフ用のニッコールレンズ。ニッコールレンズの高性能モデルは、描写性能だけでなくデザイン的な魅力も高かった