筆者が学生のころから聴き続けていたミュージシャン、斉藤和義がハイレゾアルバム『歌うたい25 SINGLES BEST 2008-2017』を7月末にリリースしたと聞いて、音楽配信サイトの「mora(モーラ)」から音源を入手。夏休みの間にじっくりと聴いてみました。
普段はスマホとSpotifyの組み合わせでもよく音楽を聴いていますが、今回の斉藤和義のアルバムはハイレゾ版と配信版がまったくの別物といっていいほど、サウンドに違いがありました。よくハイレゾはCDに比べると何倍も高音質といわれたりもしますが、本作は音源のミックスダウンやマスタリングの工程でそれぞれ違う作り方をしたのではないかと思うほどです。聴こえてくる音楽、描き出される世界観が異なっていて、その違いを楽しく聴き込みました。
ミュージシャンの中には、楽曲を創ることには心血を注ぐけれど、リスナーがどんな再生環境で聴いているのかには意外と無頓著な方も多いと聞きます。斉藤和義が今回のアルバムの仕上がりについて、フォーマットの違いをどのように受け止めているのか、あるいは戦略的に色合いを変えたのかなど、ぜひ機会があれば直接ご本人に聞いてみたいものです。
ハイレゾで聴けるジャンル、ハイレゾの魅力が大きく広がった
今回、斉藤和義のアルバムがハイレゾ化されたことで、筆者が繰り返し聴き込んできたアーティストの楽曲に新たな魅力が加わったことが嬉しくてたまりません。ハイレゾの普及が始まったころ、その音源はクラシックやジャズの名盤がほとんど。CDよりも高価なものもあったため、どうしても「ハイレゾはマニア向けでハードルが高い」とイメージされがちでした。
でも、作品をリリースするアーティストや制作者にとっては、ライブに迫るリアルな臨場感とともに、音楽をリスナーに届けることがハイレゾを選択する大事な理由だったように思います。
少し振り返ると、CDというデジタル記憶媒体には、スペック的な限界が存在していました。より高音質・大容量のハイレゾ音源が、インターネットによるダウンロード配信によってリスナーに届けられるようになったことで、音楽を演奏するアーティストの息づかいや空気感までもが表現できる「ハイレゾの魅力」が広く浸透してきました。今ではハイレゾ対応のオーディオ機器も増えて、ロック、J-POP、アニソンにもハイレゾの名盤が数多く生まれています。
好きなアーティストの歌声や楽器の演奏は、どんなオーディオ機器で聴いても心地よく感じられるものです。でも、音楽の再生環境をちょっとだけ良くしてみると、アーティストの歌声との距離がさらに近く感じられたり、コンサートホールの情景に一段と広がりと立体感が増したりしてくるものです。ポータブルオーディオの場合、音楽プレーヤー、イヤホン・ヘッドホンにこだわってみたり、または組み合わせを変えてみたりすると、自分が理想とする音のイメージに近づける楽しさもあります。