NTTデータとリサーチアンドプライシングテクノロジーのAIファイナンス応用研究所は8月17日、量子コンピュータの金融ビジネスへの適用検討において協業することで合意し、これまでの検討内容を受け、同日から本格的に検討を開始すると発表した。

近年、金融領域において量子コンピュータ活用の可能性が真剣に議論される段階に来ており、例えば従来のコンピュータの性能を超えた計算負荷を要するため、これまで実現が難しかった資産運用業務の高速化・最適化への応用が期待されているという。

これまで、NTTデータは金融ITシステム構築や量子コンピュータのビジネスへの応用検討を通じ、資産運用業務や量子コンピュータに関する知見を培っていた一方で、AIファイナンス応用研究所は金融市場における資産運用モデル開発やトレーディング業務を通じ、金融工学や数理技術に係る知見を蓄積してきた。

今回このような状況の下、両社のノウハウを組み合わせ、量子コンピュータの金融ビジネスへの適用に向けた検討において協業することで合意。

まずは、両社で資産運用業務における「より高度なポートフォリオ資産配分の最適化」および「リスク管理業務等におけるシミュレーションの高速化・複雑化」など、従来のコンピュータでは性能を超えた計算負荷を要するため解決が難しいとされる金融課題について量子コンピュータ適用の検討を行うことに加え、今後の検討状況により、実現可能性の高いテーマに取り組むことも想定している。

高度なポートフォリオ資産配分の最適化では、ポートフォリオの最適化問題は単純化された前提条件の下で静的に最適解を求めるアプローチがよく知られているが、現実の運用に即した最適解を求めるためには複数の所有期間、買いと売りの両方のポジション、銘柄入れ替えの取引コストなど動的な環境をすべて考慮し、膨大な回数のシミュレーションを行う必要があり、従来型のコンピュータでは月、年単位と現実的な運用は難しいとされている。

そのため、今回の協業では量子コンピュータを活用し、従来型のコンピュータの限界を超える高度なポートフォリオ最適化のアプローチを想定して、その実現可能性を検証することで、資産運用業務の高度化の実現性について検討を行う。

リスク管理業務におけるシミュレーションの高速化・複雑化については、資産運用業務においては市場リスクや信用リスクなど、さまざまな不確実性から生じるリスクを適切に管理することが求められている。これには複数の条件下における多数のリスクファクター間に存在する膨大なパターン数の相互関係について迅速なリスク把握が理想的ではあるが、従来のコンピュータの処理スピードは要件に応えるものとなっていないのが現実だという。

今回、複雑な環境下におけるリスク管理のシミュレーションに量子コンピュータを適用することで、これまで難しかったモニタリング手法の適用やより高速な分析の実行など、不確実性の中での優れた意思決定に寄与できるシステム・サービス実現について検討を行います。

各社の役割として、NTTデータは検討における量子コンピュータの利用方法の検討および実験の実施、ビジネス化の実現可能性の検証を行い、AIファイナンス応用研究所は金融工学や数理技術についてのノウハウ提供、ビジネス化の実現可能性の検証を行う。

今後、両社は協業による実績を基に、金融における量子コンピュータ活用のユースケースを具現化し、顧客を巻き込んでのビジネス化も視野に取り組んでいく考えだ。