8月4日に東京ビッグサイトで行われたMaker Faire 2018 Tokyoで、パソナキャリアによる講演「MakersからはじまるInnovation」が行われた。
当プログラムは、前半はサウス・バイ・サウスウエストや現在の製造業のイノベーションのトレンド、後半はその実例としてエレファンテックとマクニカによる技術開発秘話と、二部構成で進められた。
冒頭では進行役のパソナ パソナキャリアカンパニー 人材紹介事業部の宮本 千聡氏が挨拶を行った。
パソナキャリアは「製造業で働く方が生き生きと輝ける働き方を主体的に選んでいく社会を実現したい」という趣旨で当プログラムを開催したと説明。今後もMakersがキャリアを開発するためのイベントや情報提供を行うという。
イノベーションとイノベーティブの違いは?
第一部は慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教/JudgePlus 代表の広瀬 毅氏による講演「MakersからはじまるInnovation」。
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科は、専門性のある人に問題解決能力や新価値創造を育てる大学院大学だ。
そもそもイノベーションとイノベーティブの違いとは? と問いを投げかけ、それぞれの定義を提示する広瀬氏。Joseph Tidd氏の定義によると「イノベーション」とは「機会を新しいアイディアに転換し、さらにそれらが広く実用に供せられるようにする過程である」、つまり"創新普及"であるという。
この定義にiPhoneを当てはめた場合、スティーブ・ジョブスが発表した時は「イノベーティブ」なもの、皆がスマホなしの生活なんて考えられなくなった時に「イノベーション」になるという事だ。
広瀬氏は、イノベーティブなアイディアを生み出すためには既存の要素を組み合わせるだけでよいと語る。事例としてアメリカの「HELP, I WANT TO SAVE A LIFE」というキットを紹介。これは絆創膏・綿棒・返送用の封筒がセットになったもので、ケガしたときに綿棒で血をぬぐい、付属の封筒に入れてポストに投函するだけで骨髄ドナー登録が完了するというものだ。これによって骨髄ドナー登録が3倍に伸び、TEDで紹介されると売り上げも19倍に伸びたという。
この「絆創膏x郵便=骨髄ドナー登録」というアイディアには新しい技術はほぼない。既存の技術をうまく組み合わせる事によってイノベーションが起きた事例だ。
また日本の事例として、シーリングライトにBluetoothスピーカーを入れた商品を紹介。比較的異なる要素を組み合わせたところにテクノロジーを入れ込むことでイノベーティブな製品を生み出せると伝えた。
しかしイノベーティブな思考を持つためにはどうすればよいのだろうか。広瀬氏によると、「イノベーティブ思考」は「システム思考」と「デザイン思考」の掛け合わせだという。「システム思考」で世の中をシステムとして捉え、「デザイン思考」でアイディアを図に描くようにどんどん試すところが重要だ、とまとめていた。
続く第二部では「実際にイノベーションを起こした実例」としてマクニカの米内 慶太氏とエレファンテックの清水 信哉氏によるパネルディスカッションが行われた。スタートアップを起こす側と支援する側、それぞれの視点で見る「イノベーション」とはどのようなものだろうか。