出張や旅行でアメリカなどを訪れた際、スーパーマーケット等で、「コインスター」なるキオスク端末を見かけることがあった。一見するとATMのようなこのマシンの正体は、硬貨を入れると紙幣やオンラインギフトポイント等に替えることのできる「コイン換金機」だ。

そんなコインスターが今夏、日本に上陸した。

アメリカで誕生したコインスターは、現在カナダやイギリス、アイルランド、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスなど、世界の大手小売店に約2万台のキオスク端末が設置されている。

そんな同社がアジア圏初の進出国として選んだのが、日本だった。その決め手となったのは、一体何だったのだろうか。

今回、コインスターのCEOであるジム・ギャリティ氏に、サービスの概要や日本進出に至った経緯などについてお話をうかがった。また、実際のキオスク端末の内部を公開するデモンストレーションをして頂いたので、紹介する。

コインスターのCEO、ジム・ギャリティ氏

――まずは、コインスターのサービス概要を教えて下さい。

コインスターは、一言でいえば硬貨を紙幣に替えるというサービスで、開始から27年間親しまれています。スーパーマーケットなどに設置されたキオスク端末に、家にたまっている普段使われていない硬貨を投入して現金化したり、あるいはその店舗が提供する商品に替えたりできるものです。

現在、9カ国で2万台が導入されています。我々が展開地域をセレクトする際は、「現金を使う習慣が残っていること」「硬貨の流通量が多いこと」「使われなくなった硬貨を再び流通させる環境があること」という3つの要素を念頭に選んでいます。

貯蔵硬貨を再び流通させることで、国は硬貨を製造するコストが下がりますし、利用者も使われなくなった硬貨を現金として使えるというメリットがあります。また、小売業者も利用者を増やしたりリピーター率を上げることが期待できます。

日本は我々にとって非常に興味深い場所です。硬貨の流通量は米国とほぼ同じですので、同程度の硬貨がキオスク端末で取引されるのかどうかを注視しています。

コインスターのキオスク端末

――現状、日本ではコインスターのようなサービスはまだ普及していません。既に展開している地域で「銀行で両替する」よりもコインスターを使うようになったポイントはどこにあったのでしょうか?

現金を利用する習慣のある国の人々は、あまり銀行を積極的に利用しません。硬貨を銀行で両替する場合、一定の硬貨の量をキチンと包んで持っていかなければならないなど、色々な手続きが必要ですし、銀行が開いている時間も限られています。

それに対しコインスターは、朝早くから夜遅くまで毎日開いているお店にあるキオスク端末で、自身の操作によってキャッシングできます。

――日本は「興味深い国」ということですが、アジアで最初の展開国として日本を選んだ理由というのは? 

最大の理由は、やはり流通している硬貨を含めた現金の額です。そして、日本は小売店舗のサービスがネットワーク化され、非常に安定しています。したがって、ひとつの小売業者に展開するだけで何百というロケーションにキオスク端末を設置することが可能となります。

もちろん、言語や文化はまったく異なりますが、アーキスカイさんのような地元のパートナーもありますし、現在は他のパートナーとの話も進めています。そうした意味で日本はコインスターを展開するには良いところですし、学んでいこうと思っています。

コインスターの使い方はシンプル。画面をタップし、サービスを開始する。現時点では日本で利用できるのは「換金」のみ。その際に、硬貨の総額の9.9%(消費税を含む)の手数料が差し引かれる
硬貨をトレイに入れ、赤いハンドルを持ち上げながら、受け口へ硬貨を流し込む
返却されたコインを確認し、計算が終わったら「終了する」をタップする
取引が完了すると、引換券が発行される。当日の4時間以内に店舗内のサービスカウンターに持っていくと紙幣に変換できる

――仰るとおり、日本には商業施設が数多くありますが、今回、最初に導入した商業施設として、主に地方都市で展開している「アピタ」を選んだ理由というのは?

アピタを運営するユニーさんは、我々コインスターのサービスを信頼して頂いている、とても革新的な企業です。アピタを選んだのは基本的にユニーさんの「顧客に新しいサービスを届けたい」という意向によるものです。そして今回、キオスク端末を設置した3店舗(アピタテラス横浜綱島、アピタ長津田店、アピタ戸塚店)は、テスト導入となります。

7月27日、ユニーが運営する総合スーパー「アピタ」の3店舗(アピタテラス横浜綱島、アピタ長津田店、アピタ戸塚店)に先行導入された。

――欧米と日本では、硬貨のラインナップが違いますが、日本での展開に際して日本向けにキオスク端末を改良した部分、あるいは欧米の硬貨との扱いで異なる部分があれば教えて下さい。

世界中で導入されているコインスターのキオスク端末そのものは、すべて同じ仕様なのです。ヨーロッパにあるマシンでもやろうと思えば日本円を認識できますし、日本のマシンでもヨーロッパの硬貨を認識することは可能です。

キオスク端末の内部。センサー(紫色の部分)で硬貨の種類を判別し、毎分600枚の速さで枚数や金額を算出する。なお、硬貨の判別は、金属の種類によって異なる微弱な電磁波を読み取っているとのことだ。
投入された硬貨は金庫タンクに格納される。当然ながらずっしりと重たい。

――既に展開されている国では、硬貨をお札に替えるか、あるいは電子マネーに交換するかを選べるようですが、現状はどちらを選ぶユーザーが多いのでしょうか?

アメリカではこのサービスを27年間続けていますが、97パーセントのユーザーがお札に交換していて、電子マネーに交換するのは3パーセントです。

人口構成が多様ですので、提供するサービスの内容も多岐にわたり、アメリカではコインスターのキオスク端末が銀行などの金融機関にも設置されていますが、こうした場所でのユーザーは「硬貨を自分の銀行口座に入れる」ことを選択します。

――銀行にも設置されているのですね。さまざまな場所や国でサービスを展開するにあたって、苦労した手続きはありますか?

国によってもそうですが、小売店によっても状況が異なります。何台のキオスク端末を導入するのか?収益を何割シェアするのか?などを交渉していくのですが、その部分に関しては比較的簡単です。

最も難しいのは、入れられた硬貨をマシンから取り出し、業者に持っていき、銀行まで届けるという作業の手続きが煩雑で苦労します。

――日本ではどこか特定の銀行と提携を結ばれているのでしょうか?

現時点では特定の銀行との提携はしておりませんが、動向によってどの銀行を提携するのがベストなのかを判断していきたいと考えています。アメリカでは、硬貨を引きうけてくれる複数の銀行と提携しています。

――最後に、今後、日本で目標としている設置台数、あるいは設置を予定している設地域などを教えて下さい。

できるだけ多くの場所に設置したいと思います(笑)。可能性としては、おおよそ3000~4000ヶ所に展開することが可能だと考えています。地域としては、都市と地方の両方に設置したいと考えています。

――ありがとうございました。

コインスターのキオスク端末とジム・ギャリティ氏
(早川厚志)