東京大学 生産技術研究所(東大 生研)は、7月18日から8月31日までの間、東京・駒場の東大 駒場リサーチキャンパス内の屋外にミスト噴霧機器を設置し、暑さを和らげる効果がどの程度あるのか、といった実験を行っている。

  • パナソニックのミスト噴霧機器「グリーンエアコン」
  • パナソニックのミスト噴霧機器「グリーンエアコン」
  • パナソニックのミスト噴霧機器「グリーンエアコン」
  • パナソニックのミスト噴霧機器「グリーンエアコン」
  • パナソニックのミスト噴霧機器「グリーンエアコン」
  • パナソニックのミスト噴霧機器「グリーンエアコン」
  • 東大 駒場リサーチキャンパス内の研究棟 C棟の入り口付近に設置されたミスト噴霧機器の様子。最大の特徴は、風が吹いても、ミストが流されずに、下に向かって吹くことができるという点。送風などの出力は弱中強の3段階で制御することができる

同研究プロジェクトは、東大 生研の大岡龍三 教授ならびにパナソニック、東海大学 中野研究室(主宰:中野淳太 准教授)らによるもので、今回の実験に用いられるミスト噴霧器は、パナソニックが開発を進めている新型機を利用する。ミスト噴霧器は、水をミスト状に噴霧することで、その気化熱を利用して周辺の空気を冷やす仕組みだが、新型機は、ミストの粒のサイズを従来より細かな平均粒径10μmとした「シルキーファインミスト」を噴霧することで肌に水が付着しづらくしたほか、屋外でも横風の影響を受けにくいドーム空間を作るトルネード型「エアカーテン送風」を可能とする送風機と組み合わせることで、確実にミストの効果をミスト噴霧器の下に居る人たちに伝えることを可能とした。これにより噴霧器を中心に、直径約2m(地上からの高さ1m~1.7m程度)で周辺気温よりも約4℃低い空間を実現できるようになったとするほか(測定条件は外気温33.5℃、湿度61%RH)、直径4mの範囲でも1~2℃の低減効果を得ることができるようになったという。

パナソニックが開発した新型ミスト噴霧機器を用いた実験の様子(噴霧/送風部の拡大動画)

東大とパナソニック、東海大学の3者は2016年より共同研究を開始。当初はシルキーファインミストやエアカーテン送風といった機能がないプロトタイプでのミスト噴霧に対する感覚評価からスタート。その後、利用シーンを考え、そうした機能を追加した現在の形へと発展を遂げてきた。

  • 2016年の実証実験の様子
  • 2016年の実証実験で得られたデータ
  • 2016年の実証実験で得られた知見
  • 2016年の実証実験の様子と、そこから得られた知見

  • 2017年に行なわれた実証実験の様子
  • ミストの浴びた後の冷却効果
  • 2017年に行なわれた実証実験の様子。バス停でバスを待つ人の皮膚温度を低下させることをイメージした実験で、濡れるのが嫌な人もバス待ちの列には含まれる、ということで、ミストの粒経を細かくしたという

今回の実験は、夏の暑い環境(暑熱環境)におけるミスト噴霧前後における皮膚温度や鼓膜温などの生理指標の把握や、人体表面の濡れ率の推定、ミスト噴霧の前後における温熱快適性や寒暑感の調査、そして、単なる暑い、寒いといった温度の低下・上昇だけではない温熱環境の評価尺度の開発などを目的として行われるもので、赤外線カメラを用いた測定のほか、被験者への聞き取り調査などが行われる。

  • 研究目的の概要

    研究目的の概要

  • 予測値と実験値の比較

    2017年の研究データを元にした予測値(シミュレーション値)と実験値の比較結果

具体的な実験スケジュールは、7月18日から24日までが予備実験期間で、25日から2週間ほどが本格実験期間として、大学生を中心に100名ほどのデータ取得を目指す。また、その後、8月31日までの期間は、一般の希望者も含めて体験できる状態として、実験を行なっていくとしている。

なお、パナソニックでは、今回の実験で用いているミスト噴霧器を、2019年春に「グリーンエアコン」という名称で製品化する予定で、製品化した際には、ウェザーニューズの提供する気象データと連動した自動制御機能や、異常発生をカスタマやメンテナンス会社にメールで伝える遠隔監視制御システムなども搭載される予定だとしている。

また、同社は92018年9月30日までの期間限定で、東京・有明のパナソニックセンター東京にて、エアカーテン送風を除いた仮設可能なミスト噴霧機器を用いた実証実験も並行して進めており、2020年の東京五輪での活用などに向けた商品化への実用性検討などを行なっていければ、としている。