世界対応のモバイルWi-Fiルーター「Jetfi」を扱うMAYA SYSTEMが、同じく世界中で使えるスマートフォン「Jetfon」を発表しました。

  • Jetfi

    MAYA SYSTEMから8月に発売される「Jetfon」。価格は39,800円

中国のuCloudlink社が提供する「クラウドSIM」技術を使って、専用のアプリからオンラインで手続きするだけで、SIMの入れ替えなしに世界100カ国以上でモバイル通信が利用できるというもの。

MAYA SYSTEMでは国を超えてつながるこうしたデバイスのことを“国境フリー”と呼んでいて、「Jetfon」は日本初のSIMフリーかつ国境フリーのスマートフォンになります。

  • MAYA SYSTEM

    カラーはグラファイトブラックとシャンパンゴールドの2色が用意される

海外でも手間なく簡単、誰でも使える

スマートフォンを海外で利用するには一般的に、大手キャリアが提供する海外データローミングサービスを利用するか、現地で利用可能なモバイルWi-Fiルーターをレンタルするか、現地で販売されているプリペイドSIMを入手するかのいずれかの方法を選ぶことになります。

最近は大手キャリアのローミングサービスも1日980円~とお手頃になってきましたが、少し長めの滞在だとやっぱり割高。一方のレンタルルーターは借りる、返すの手間があるし、現地のプリペイドSIMは言葉の壁がある上に設定も面倒というわけで、「できるだけ手間なく簡単に、誰にでも使ってもらえるものを目指した」(井上千鶴社長)のが「Jetfon」とのことです。

  • FREETEL

    MAYA SYSTEMの新社長に就任した井上千鶴さん(中央)と、プロダクトマネージャーの國嶋氏(右)、開発マネージャーの南氏(左)

  • 海外でもスマートフォンでインターネットを利用するための一般的な方法と、「Jetfon」の比較。料金、利便性の両面でメリットがあるという

基本料金はなし。面倒なAPN設定も不要

基本料金などはなく、必要なときに必要な地域のサービスを専用アプリから購入する仕組み。プランは1日300MBで380円~、7日1GBで980円~、30日3GBで1880円~の3パターンのほかヨーロッパなどでは周遊プランも選べ、期間内に容量を使い切ると再購入しない限り通信速度が最大128kbpsに制限されます。

スマートフォンに新しいSIMをセットする際は通常、APNなどの設定が必要になりますが、「Jetfon」ではSIMの差し替えが不要なだけでなく、面倒なAPNの設定も不要。さらに中国ではVPN接続が可能ということで、グレートファイアウォールによって現地のSIMでは利用が制限される、GoogleのサービスやSNSなども問題なく利用できるとのこと。しかもカバーエリアは世界100カ国以上。海外でとことん手軽に使えるという意味では、これまでになかった画期的なスマートフォンと言えそうです。

  • 「Jetfon」の料金プラン。料金はエリアによって異なる。周遊プランは当面ヨーロッパのみだがアジアほかの周遊プランも今後追加予定

  • 世界100カ国以上で現地のモバイル通信サービスが利用可能。日本人の主要な渡航先は概ねカバーされているとのこと

国内外キャリアの通信バンドをカバー

ハードウェア的には、5.5インチのFHDディスプレイを搭載し、CPUにQualcomm Snapdragon 652を採用。メモリーは4GB、ストレージは64GBと、ミドルハイクラスのスマートフォンに位置付けられますが、国境フリーをうたうだけあり、対応する周波数帯(バンド)が豊富。国内外の通信キャリアが使用しているバンドを概ねカバーしていて、国内の通信業者ではドコモ、ソフトバンクのVoLTEにも対応。またauのVoLTEにもソフトウェアアップデートで対応予定とのことで、2回線の同時待ち受けが可能なDSDS(デュアルSIM、デュアルスタンバイ)にも対応しています。

このほかカメラはメインが1,300万画素、フロントが800万画素。ワイドディスプレイや2眼レンズといったトレンド機能はありませんが、アルミを採用した外装や2,900mAhのバッテリー、指紋センサーも搭載するなど不足はありません。OSが最新のAndroid 8ではなくAndroid 7.1.2なのと、端子がUSB Type-CではなくmicroUSBなのは少し残念ですが、39,800円という価格も含めて、なかなか使い勝手の良さそうなスマートフォンという印象です。

  • nano SIMを2つセットできるDSDSに対応。ただし片方のSIMスロットはmicroSDカードの排他となっている

緊急地震速報やJアラートにも対応

なおMAYA SYSTEMといえば、経営破綻したプラスワンマーケティングから、FREETELブランドの端末事業を引き継いだことで知られますが、今回の「Jetfon」にもそのFREETELのノウハウが生かされているとのこと。

具体的には端末の完全日本語化に加え、緊急地震速報のほか、自治体ごとの防災情報やJアラートにも対応。このほか外観のロゴや添付のマニュアルなどにも、uCloudlink社のオリジナル端末とは異なる、独自仕様が加えられているそうです。

実際にざっと中身をチェックしてみましたが、海外端末にありがちな変な日本語表現などは見当たりませんでした。ただしUIはFREETELのスマホでおなじみの「FREETEL UI」ではなく、ほぼ素のAndroidとなっています。

  • プランを購入できる専用アプリ「GlocalMe Connect」の画面。なお日本国内でも海外同様1日300MBで380円~で利用することができる

MVNOの弱点をカバーした画期的なスマホ

もちろん技適なども取得済みなので、MVNOなど国内キャリアのSIMをセットして国内で利用することも可能。大手キャリアと違い、MVNOでは海外データローミングが利用できないため、これまではSIMフリーという利点を生かして別途グローバルローミング対応のSIMを用意するか、現地のプリペイドSIMを購入するなどするしかなかったのですが、「Jetfon」なら国内ではMVNOを利用しつつ、海外渡航時にはアプリからプランを購入して使うといったことが簡単にできます。言い換えるなら、これまでMVNOの弱点だった海外データローミングを補う、SIMフリースマートフォンとも言えるでしょう。

発売は8月の予定で夏休みの海外旅行には少し間に合わないかもしれませんが、仕事などで海外に行く機会の多い人や、複数の国を周る旅行を計画している人などにおすすめしたい一台です。