日産自動車を例にとれば、過去としがらみがないカルロス・ゴーン氏が乗り込んできたことで大胆な改革を実行して再生した。シャープも鴻海出身の戴正呉氏によって、鴻海流ともいえる手法で、短期間での再生を果たした。

実行力が、企業の成長や再生にとって最大のポイントになることを示した事例といえる。

FCCLの場合は、日産自動車やシャープのように厳しい経営環境にあるわけではない。しかも、分社化して2年間の助走期間があり、FCCL主体での経営判断が行いやすい環境へと移行しはじめていた。

FCCLの竹田副社長

そこに、新たな体制となり、さらに、FCCL主体で施策を実行しやすい環境が整ったと竹田副社長は判断している。

「これまでは、正直なところ、施策の実行に二の足を踏んでいたところがあった」と竹田副社長は語りながら、「レノボからの要求には厳しいものがある。それに応えるために、我々は、自らをもっと強くして行かなくてはならないという意識がある。レノボの厳しい要求が、我々の施策の実行を後押してすることにつながっている」と語る。

外観はそのまま。変わったのは社員の意識

竹田副社長は、「経営のスピードは変わったが、Day1以前と、Day1以降を比べても、エンドユーザーから見える姿はひとつも変わりがない」とする。

個人向けPCの営業部門は、FCCLに統合したが、法人向けPCは、富士通の営業部門が販売するため、営業部門は富士通に残した。FCCLで取締役執行役員常務を兼務で務めていた高木達也氏が、引き続き、富士通で、サービスプラットフォーム部門フロントコンピューティング事業本部長として、PCの営業部門を担当する体制としているのも、ユーザーとの接点を変えず、ユーザーから見える姿を変えないためだ。

これは、約2年半前にFCCLができたときと変わらない体制ともいえる。

「変わったのは、全員の意識である。約2年半前に分社化した時に比べても、意識の変化は大きい」と、竹田副社長は語る。そして、「やりたいことがやれるようになってきた。そして、やらなくてはいけないことはこれまで以上に増えている。これから、さらにアクセルを踏んでいかなくてはならない」と続ける。

協業の成果は「製品」で判断される

新たなFCCLがスタートして、約2カ月半。その間、FCCLは大きく変化しているのは、今回の取材を通じて強く感じた。また、強い危機感を持って事業に取り組んでいることも感じた。それが、マイナス要素ではなく、社員の高いモチベーションにつながっていることも感じた。

エンドユーザーがそれを感じることができるのは、きっと「製品」ということになるのだろう。その点で、今後、FCCLから投入される製品が、どんなものになるのかが注目される。

経営層や社員たちが持つ高いモチベーションが、製品につながってこそ、ユーザーがこの協業の成果を評価することになる。そして、それが利益となり、次の成長戦略へとつながる。

いまは、大きな車輪の最初の回転が始まったところだ。この回転が順調に回り始めるのか。これからのFCCLの取り組みに注目したい。