スパコンの性能向上に急ブレーキがかかった2013年
次の図は、Top500のスパコンの性能の1年間の性能向上をプロットしたグラフである。かなり、値のばらついたグラフであるが、2013年までは年率1.8倍強(11年で1000倍)の性能向上が達成されてきた。しかし、それ以降は年率1.4倍(20年で1000倍)に伸び率が鈍化しているというのがStrohmaier氏の分析である。
開発レベルで、プロセサのクロック周波数向上に急ブレーキがかかったのは2005年ころで、長くても1~2年で量産プロセサに影響すると思われるが、なぜ、2013年にスパコンの性能向上に急ブレーキがかかったのかはよく分からない。
中国は本当にTop500スパコン設置国1位なのか?
話は変わって、Top500のスパコンの国別の設置台数の推移のグラフを次の図に示す。一番下の帯が米国で、その上が日本、そして一番上の赤が中国である。2008年以前は中国のスパコン設置台数は僅かであったが、2014年から設置台数が急増している。
次の図は今回の第51回Top500リストのスパコンの国別の設置台数の内訳をしめすパイチャートである。台数1位は中国で、シェアは41%である。第2位は米国の25%、第3位は日本の7%となっている。
次の図は、設置国ではなく、製造国のシェアを示すグラフである。過去には大分部のスパコンは米国のメーカーが製造したもので、米国製が90%を超えていた時代もあったが、最近では中国勢のシェアが急増している。
次の図はベンダ(製造メーカー)別のパイチャートである。中でもLenovoは117システムを占めてトップシェアとなっている。そして、2位は米国のHPEの79システムである。中国メーカーはトップのLenovoに続いて、Insuper(浪潮)が68システム、Sugon(曙光)が55システムと続いている。
しかし、Lenovoの登録を見ると、例えば106位から122位までは同じ仕様のシステムが並び、すべてシステム名称はSoftware Company(M)、用途はHosting Servicesと書かれている。HPLのRmaxの値は書かれているが、すべてのシステムでまったく同じ、消費電力は空欄となっている。このシステム名ではどこにあるシステムかも確認のしようがない。Inspurの登録も、システム名が空欄、サイト名がInternet Service Aなどと書かれているものが多く、これらも確認が難しい。確かに私企業は名前を出すのを嫌うところが多いが、この匿名のオンパレードはなんとかならないものであろうか。
それから、中国のトップクラスのNational Computing Centerには、太湖之光や天河2Aなどの巨大なマシンが設置されているが、Universityと書かれているエントリは2~3しかなく、中国の研究者はどんなマシンを使っているのか頭を傾げる登録状況である。
また、中国のTop500登録の大部分のシステムが、Internet企業やHosting Serviceなどである。米国や日本では、このような会社や用途はTop500には出てこない。どのようなシステムをTop500に登録するかがまったく異なっている状況では、中国のメーカーと米国や日本などのメーカーのTop500システムの数を比較してもほとんど意味がない。
次の図は、ベンダごとのHPL性能のパイチャートである。SummitとSierraを追加したIBMが20%のシェアでトップに立ち、巨大システムが多いCrayが16%でそれに続いている。Lenovo、Inspur、Sugonの中国勢は、それぞれ12%、6%、5%で台数ベースに比べると存在感は減っているが、性能パイチャートでも存在感はある。
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