ノースウェスタン大学の研究チームは、分子が格子状に結合したポリマーの二次元構造体を、従来よりも高品質に合成できる手法を開発したと発表した。水の浄化、エネルギー貯蔵、防弾チョッキなどの強化材料といった幅広い分野での応用が期待される。研究論文は科学誌「Science」に掲載された。

  • 共有結合性有機構造体(COF) 合成法

    分子が格子状に結合して二次元構造のポリマーが形成される共有結合性有機構造体(COF)の高品質な合成法を開発した (出所:ノースウェスタン大学)

分子のモノマー(単量体)が多数結合したポリマー(重合体)の身近な例としては、ナイロン、ポリエステル、テフロン、エポキシなどがあるが、どれもモノマーが鎖状に長くつながったものがごちゃごちゃに絡まったスパゲッティのような状態の高分子である。

これに対して、モノマーが二次元の格子状に結合したポリマーが初めて合成されたのは2005年のことで、共有結合性有機構造体(COF:covalent organic framework)などと呼ばれている。COFには、規則的に並んだ空孔や大きな比表面積など、従来のポリマーとは異なるさまざまな特性がある。

これまでにない高分子材料として注目されているCOFであるが、従来は大きさが50nm程度と微小なものしか得られないなど品質に課題があった。研究チームが今回開発した合成法では、COFのサイズを500nm~1.5μmと従来比10倍以上に大きくすることができるという。

論文によると、高品質なCOFを合成するには、まず第1段階として2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン(HHTP)とボロン酸のモノマーをCH3CN含有溶液中で凝集させる。これによって二次元COFのナノ粒子が形成された安定したコロイド懸濁液が得られる。

この懸濁液にさらにモノマーを加えていくと、最初に形成された二次元COFナノ粒子に対してモノマーがブロック状に追加されていき、より大きなCOFを得ることができるという。

懸濁液にモノマーを追加していくときのポイントは、「ゆっくりと足していくこと」であるとしている。モノマーが急速に加わるとCOFの核生成が制御不能になり、COFのナノ粒子サイズもより小さなものしか得られなくなるという。