もしいま、そこそこ使えるお金があったら何を買いますか?「あれがほしい」「これを買おう」……。普段から多くのデジタル製品に触れ、ブツ欲があふれてそうなライター諸氏はどんな製品に興味をそそられるのでしょうか。想定金額は「サイコロの目×10万円」、予算内で夢と妄想を広げてもらいます。今回は、カメラマンの吉村永さんです!


今では、仕事の9割が写真撮影になった自分ですが、本格的にカメラの世界に没頭したのは高校2年のとき。友人が大の映画マニアで、一緒に小型映画を作ろう!と始めた8ミリフィルムの撮影が発端です。その後、自分はテレビ番組制作プロダクションに籍を置くなど、もともとは「動画」がルーツなのです。

ということで、「もしもボーナスがあったら買いたいもの!」は動画関係でまとめてみたいと思います。ルールにしたがってダイスを振ると、出てきた数字は「4」。40万円の予算ということで、以下の商品を挙げてみました!

【動画】音声が流れます。ご注意ください。

  • 吉村カメラマンのサイコロの出た目は「4」なので、予算はズバリ40万円です!

フィルム映画のような4K動画が撮れるシネカメラ

40万円の予算でまず選びたいのが、9月に発売を予定しているBlackmagic Designの「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」(以下、PCC4K)。マイクロフォーサーズマウントを採用したデジタルのシネカメラ、つまり「映画撮影用のカメラ」です。

  • Blackmagic Designのシネカメラ「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」。実売価格は税込160,000円前後

動画撮影の世界がハンディのビデオカメラからデジタル一眼にシフトしたこともあり、業務用ではない家庭用のカメラで撮影できる映像のクオリティはこの10年ほどで飛躍的に上がりました。けれども、あまりにも鮮やかでリアルな描写はどこかテレビ番組的であり、映画的な雰囲気とは異なります。フィルム映画的な画質で撮れるデジタルカメラがシネカメラであり、今回紹介するPCC4Kがそれにあたります。

誤解を恐れず簡単にいってしまえば、一般的なデジタル一眼とシネカメラの大きな違いは、デジタルカメラでいうところの「JPEG」撮影オンリーなのか「RAW」撮影ができるのか、ということ。フィルムライクな画質に仕上げるには、撮影後に色調や階調をPC上で調整する「カラーグレーディング」によるところが大きいのですが、通常のデジタル一眼の動画はJPEG画像と似ていて色の階調が少なく、ちょっと色調整をしただけで破綻してしまうことがあります。それと比べ、シネカメラは色調補正を前提とした階調豊かな記録方式で記録するため、広大なダイナミックレンジを実現した映画的な雰囲気の映像が作り出せるわけです。

PCC4Kの特徴をひとことで表すとすれば、「数百万円クラスのシネカメラの特徴をほとんどもれなくハンディサイズのボディにまとめた」こと。4K動画が撮影できるカメラは急速に増えているものの、テレビ放送と同じ秒間60コマの滑らかな動きが記録できるカメラは家庭用ではまだ珍しい存在といえます。デジタル一眼では、キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS-1D X Mark II」や、パナソニックのミラーレス一眼「LUMIX DC-GH5/GH5S」くらいしか見当たりませんし、家庭用の4Kビデオカメラも秒間30コマの30p仕様にとどまります。今後の主流となる60pの4K映像が撮れる、というのがPCC4Kの1つめのポイントといえます。

前述の通り、レンズマウントはマイクロフォーサーズを採用しています。この点は先代モデル「Pocket Cinema Camera」と同じですが、先代はセンサーが4/3型よりもかなり小さく、焦点距離はレンズ表記の約3倍にもなり、かなり望遠側にシフトしてしまいました。しかし、PCC4Kはマイクロフォーサーズ(4/3型)とほぼ同じサイズのセンサーになったため、広大な景色を写し込むことが可能になっています。

  • おなじみのマイクロフォーサーズのレンズマウントを採用。センサーもほぼ4/3型と同じサイズとのこと。レンズマウントの左右には、大型のステレオマイクを搭載する

デュアルネイティブISO機能の搭載も注目ポイントの1つといえます。これは、低感度でも高感度でもノイズの少ない映像にできる機能で、ISO25600相当の高感度での撮影が可能になっています。この技術は、ハイダイナミックレンジで注目されている4K HDR収録でも大いに役立っているはずです。

背面液晶は5型と大きいうえ、タッチパネル式となっています。しかも、同社の肩乗せ式業務用カメラ「URSA」と同じOSを採用しているため、このカメラで操作を覚えれば業務用カメラも扱えるようになります。さらに、バッテリーはキヤノンの「LP-E6」を使っているので、多くのEOSユーザーはバッテリーを共用できるうえ、入手しやすいのがメリット。USB Type-C端子からモバイルバッテリーで駆動することもできます。業務用のミニXLR音声入力端子やロック機構付きの電源端子、フルサイズのHDMI端子、3.5mmのヘッドフォンジャックなど、標準的な接続端子が豊富に用意されています。

  • 背面には5型の大きなタッチパネル液晶を搭載する。タッチパネルで操作できることもあり、液晶周囲のボタン類は少なめだ

  • 上部のボタン配置もまた独特だ。レンズマウント上部には、アクセサリー類を固定するための三脚穴を搭載している

記録メディアは、UHS-II対応のSDカードと、CFast 2.0カードのダブルスロットとなっています。外部レコーダーなしで4KのRAW動画撮影が可能なのはとても便利。長時間記録したい場合も外部レコーダーを用意する必要はなく、一般的な外付けSSDをUSB-Cケーブルで接続するだけで記録できるのが便利です。

業務用シネカメラに匹敵する性能を持ちながら低価格なうえ、単体で買うと税込で36,000円近くするアプリ「DaVinci Resolve Studio」が標準で付属するので、お得感はバツグン。普段、僕は高画質な動画収録にEOS-1D X Mark IIを使っているのですが、PCC4Kを手に入れたらメインはこちらになること間違いなし。9月の発売が楽しみな1台です。