毎日食べるご飯はおいしいものが食べたい! そんな声が多いためか、ここ数年は8万円以上する「高級炊飯器」が人気です。象印マホービンの高級炊飯器「南部鉄器 極め羽釜」シリーズは、高級炊飯器の中でもトップクラスの価格帯。ですが「高くてもおいしい」と評判で人気のある製品なのです。

そんな象印マホービンが、まったく新しいアプローチでご飯をさらにおいしくしたといいます。それが「炎舞炊き NW-KA型」(以下、炎舞炊き)です。

  • 炎舞炊き

    炎舞炊きの5.5合タイプ「NW-KA10」。写真左がつやっぽい「黒漆」カラー、右がさわやかな「雪白」。本体は「浦島太郎」に出てくる玉手箱をイメージしたとか。炊飯して蓋を開けたら蒸気が出る様子は、確かに玉手箱の煙っぽいかも?

「かまど炊き」を再現する業界初の加熱方式とは?

じつは、高級炊飯器を取り扱う多くのメーカーは、昔ながらの「かまど炊き」で炊いたご飯の再現を目指しています。かまど炊きの高火力を再現するため加熱時に圧力をかけたり、かまど炊き時の温度変化を再現したりと、メーカーによって「かまど炊き」を再現する工夫はさまざまです。

象印マホービンも長年かまど炊きに関する研究をしていますが、今回の炎舞炊きを開発するにあたり、たどり着いた答えが「炎のゆらぎ」と「大火力」だそう。かまどでは薪を燃やして、大きな炎で炊飯します。炎は周囲のわずかな風でも揺らめくため、羽釜の底に当たる炎の熱は一定ではありません。「最大温度」で加熱される部位は常に変動しているのです。そのため、釜内の最高温部もランダムに変化するため、沸騰して泡立つ位置も釜の中で次々と移ろいます。そして釜内部の米は水のさまざまな対流でかき混ぜられ、ムラのないおいしいご飯が炊けるのだと、象印マホービンは説明しました。

  • 炎舞炊き

    激しい炎で炊く「かまど炊き」は、釜底が一定温度で加熱されていないのが特徴なのだそう

この激しい炎の「ゆらぎ」を再現するため、象印マホービンが開発したのが独特の形状をしたIH用のコイルです。一般的な炊飯器に内蔵されているIHコイルは、炊飯器の中心から外に向かってリング形状に配置されています。ところが、炎舞炊きのIHコイルは炊飯器上部と下部左右に3分割された不思議な形状。3つのコイルをそれぞれ独立制御できるため、かまど炊きのように「ゆらぎ」のある加熱ができるのです。さらに、3つのコイルを独立制御することで、各コイルの最大火力もアップ。なんと、従来製品と比べて4倍以上の大火力を実現しました。

  • 炎舞炊き

    一般的な炊飯器のIHコイル。リングは2重に見えますが、基本的にまとめて制御するため、外側と内側のリングで温度帯の変化はありません

  • 炎舞炊き

    炎舞炊きに採用された業界初の「ローテーションIH構造」のためのコイル。3つのコイルがそれぞれ独立して制御できます

  • 激しく沸騰する場所が数秒ごとに変化するのがわかります

  • 高温の部分が次々と入れ替わっていますね

内釜は軽くなって使いやすくなった!

象印マホービンの高級炊飯器といえば、日本の伝統工芸品である南部鉄器を使った内釜が有名です。ただし、南部鉄器は炊飯に重要な蓄熱性や発熱効率が高いものの、熱伝導性が低いというデメリットがあります。3分割されたコイルで次々と加熱部を変更しても、実際に釜内部に熱が伝わるまでに時間差ができてしまうため、南部鉄器では炎のゆらぎを上手く再現できません。

そこで、炎舞炊きでは内釜の材質も見直しています。外部にはIHの発熱効率が良いステンレスを採用。さらに発熱・蓄熱性の高い鉄や、熱伝導性の高いアルミを組み合わせることで、発熱性、蓄熱性、そして熱伝導性も高い内釜になりました。内釜のフチ部分は特に厚くデザインされており、昔ながらの「羽釜」のように釜側面の熱を蓄えることができます。

もうひとつのメリットは、内釜の取り回しの良さ。従来の南部鉄器では1.9kgあった重量が、ステンレスやアルミを使用すること1.2kg(で5.5合炊きタイプ)まで軽くなっています。このため、洗米や片付けなどで内釜を移動させるのも楽になりました。

  • 炎舞炊き

    左が従来の「南部鉄器」内釜、左が炎舞炊きの内釜。炎舞炊きの内釜は大きさもコンパクトですが、重さも1.2kgと従来より700g軽くなりました。とはいえ、他社の炊飯器と比較すると「軽い」部類の釜ではありません

  • 炎舞炊き

    圧力式の炊飯器は、使用後に洗うパーツが多い製品もあります。しかし、炎舞炊きは2パーツの内フタと内釜の3パーツの洗浄でOK。片付けが簡単そうなのは嬉しいポイントです

  • 炎舞炊き

    液晶画面には視認性の高い黒背景を採用。フタの開け閉めをするスイッチには指紋がつきにくい加工がされるなど、細かな部分にも使いやすさを感じます

実際のところ味はどうなの?

さまざまな最新技術が取り入れられた「炎舞炊き」ですが、気になるのはその味。今回の説明会では、なんと実際に炎舞炊きで炊いたご飯を試食することができました。ちなみに、試食した米はもっちりした食感と爽やかな香りに特徴がある佐賀の「さがびより」を使用しています。

炎舞炊きで炊いたご飯をいざ試食。味の比較がしやすいように、他社の現行高級炊飯器で炊いたご飯も同時に提供されました(いずれも「白米モード・普通」で炊飯)。さすがに両機種とも高級炊飯器だけに、味は非常に美味! 味付けはもちろんしていないのですが、どちらも甘みを強く感じられ、もちもちとした食感が楽しめます。

ただし、炎舞炊きはもちもちと柔らかいのにもかかわらず、粒ひとつひとつがしっかりと主張しており「柔らかいのにひとつひとつの粒の食感が楽しめる」ことが特徴的でした。また、他社炊飯器のご飯は口に入れた瞬間に甘みが強調されるのに対し、炎舞炊きは甘みが口の中で長く続くため、よりおいしく感じられました。

  • 炎舞炊き

    試食を手伝ってくれたマイナビニュース編集部員。炊きたてなので、手でトレイを持つだけでお米の香ばしい香りがします

  • 炎舞炊き

    ひと口食べて「あまーい!!」と大絶賛していました

ちなみに、炎舞炊きは「前回炊いたご飯の感想」を入力することで、次回の炊き方を調整できる「我が家炊き」という機能もあります。この機能を使えば、なんと「固め」「柔らかめ」「もちもち」「しゃっきり」などの食感を121通りから調整してくれます。使えば使うほど、好みのご飯を炊けるようになりそう。

炎舞炊きの価格はオープンですが、推定市場価格は5.5合炊きタイプの「NW-KA10」で12万円、1升タイプの「NW-KA18」で125,000円前後(いずれも税別)。発売は7月21日です。

炊飯器としては高価ですが、試食したご飯が非常においしく感じた身としては「これから数年、毎日アレが食べられるなら、そこまで高い買い物じゃないかも?」とも思います。