2018年5月17日、Western Digital(ウエスタンデジタル、以下、WD)が、NVMe対応SSDの新製品「WD Black NVMe SSD」を発表した。WD Black NVMe SSDは、性能を重視するユーザーやヘビーPCゲーマー向けの製品で、2017年に登場した「WD Black PCIe SSD」の後継として位置づけられる。今回、WD Black NVMe SSDを試用する機会を得たので、旧製品と性能を比較してみた。

  • 「WD Black NVMe SSD」レビュー

    WD Black NVMe SSDのパッケージ

WD Black NVMe SSDのフォームファクタはM.2 2280で、NVMe 1.3に対応し、インタフェースの物理層はPCI Express Gen 3.0 x4だ。NANDフラッシュメモリとしては、東芝とWDが共同で開発・製造している64層3D NAND「BiCS3」が採用されている。BiCS3は、1セルに3bitの情報を記録する3bit MLC(TLC)だ。ちなみに、旧モデルのWD Black PCIe SSDも同じBiCS3が採用されている。

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    WD Black NVMe SSD 1TBの表面

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    WD Black NVMe SSD 1TBの裏面。黒いシートが貼られている

新モデルのWD Black NVMe SSDと、旧モデルのWD Black PCIe SSDでもっとも大きく異なるのは、搭載するコントローラだろう。旧WD Black PCIe SSDでは、Marvell Technology Group製コントローラが使われていたが、新WD Black NVMe SSDでは、自社開発の新コントローラを採用している。

このコントローラの詳細は明らかにされていないが、WDが傘下に収めたSunDiskの技術が使われているはず。WD Black NVMe SSDの発表から4日後には、SunDiskブランドからも「サンディスク エクストリーム プロ M.2 NVMe SSD」という製品がアナウンスされた。この製品は、WD Black NVMe SSDとハードウェアは同一だ。

サンディスク エクストリーム プロ M.2 NVMe SSDでは、TLCの一部をSLCキャッシュとして利用する高速化技術「SanDisk nCache 3.0」を搭載しているとのことなので、WD Black NVMe SSDも同じ機能を持つことになる。WD Black NVMe SSDの容量は、250GB、500GB、1TBの3モデルだ。ちなみに、従来のWD Black PCIe SSDは、256GBと512GBの2モデルだった。

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    WD Black NVMe SSD 1TB(上)とWD Black PCIe SSD 512GB(下)の比較

旧モデルから大幅に高速化

WD Black NVMe SSDは、旧WD Black PCIe SSDに比べて性能が大きく向上。WD Black NVMe SSDのシーケンシャルリードは、1TBモデルと500GBモデルが最大3400MB/秒、250GBモデルが最大3000MB/秒、シーケンシャルライトは1TBモデルが最大2800MB/秒、500GBモデルが最大2500MB/秒、250GBモデルが最大1600MB/秒だ。

対して、WD Black PCIe SSDのシーケンシャルリードは両モデルとも最大2050MB/秒、シーケンシャルライトは512GBモデルが最大800MB/秒、256GBモデルが最大700MB/秒となっている。シーケンシャルリードもかなり向上しているが、シーケンシャルライトの差は特に大きく、最大4倍も高速化された。また、WD Black NVMe SSDのランダムアクセス性能は以下の通りだ。

  • 4KBランダムリード(QD32T8) : 最大50万IOPS(1TBモデル)、最大41万IOPS(500GBモデル)、最大22万IOPS(250GBモデル)
  • 4KBランダムライト(QD32TB) : 最大40万IOPS(1TBモデル)、最大33万IOPS(500GBモデル)、最大17万IOPS(250GBモデル)

一方、WD Black PCIe SSDのランダムアクセス性能は、

  • 4KBランダムリード(QD32T4) : 最大17万IOPS(全モデル共通)
  • 4KBランダムライト(QD32T4) : 最大13万4000IOPS(512GBモデル)、最大14万IOPS(256GBモデル)

となっており、スレッド数が異なるものの、WD Black NVMe SSDのほうが3倍ほど高速だ。

耐久性も向上

耐久性や寿命と密接な関係がある書き込み可能容量(TBW)も強化された。WD Black NVMe SSDのTBWは、1TBモデルが600TBW、500GBモデルが300TBW、250GBモデルが200TBWだが、WD Black PCIe SSDのTBWは、512GBモデルが160TBW、256GBモデルが80TBWだった。ほぼ同じ容量でも、TBWが約2~2.5倍に向上していることになる。

MTTF(平均故障時間)は、WD Black NVMe SSDもWD Black PCIe SSDも175万時間で同じだ。保証期間も同じ5年保証だが、WD Black NVMe SSDは、書き込み可能容量が約2~2.5倍に増えているため、書き換えが多い用途でもより安心して使えるだろう。

平均消費電力は、WD Black NVMe SSDの1TBモデルが140mW、500GBモデルと250GBモデルが110mWなのに対し、WD Black PCIe SSDは512GBモデル、256GBモデルともに135mWであり、500GBモデルと250GBモデルに対しては2割ほど削減。WD Black NVMe SSDの基板裏面には、WD Black PCIe SSDにはなかった黒色シートが貼られているが、これも放熱効率を高めるためだと思われる。