amsは5月31日、日本の拠点における設計開発の強化を図っていること、ならびに新たに日本のニーズにマッチしたCMOSイメージセンサの開発を進めていることを明らかにした。

日本でセンサの設計・開発を加速

同社イメージセンサソリューション事業部門責任者(DIV Image Sensor Solutions,Senior VP & GM)のStephane Curral氏は、「日本は自動車、産業機器・医療機器の市場に大きな顧客が存在していることもあり、我々もそうした分野に注力している」とし、これまで日本地域で行ってきた医療機器用のフォトダイオードベースのセンサや、ToFセンサといった製品の開発に加え、2018年より本格的にCMOSイメージセンサの開発に着手したと背景を説明する。

  • ams イメージセンサソリューション事業部門責任者のStephane Curral氏

    ams イメージセンサソリューション事業部門責任者のStephane Curral氏

実は現在のamsは、センサ関連製品がビジネスの中核を担っており、積極的に周辺技術を含めたM&Aによる技術の補完と非中核部門の切り離しを行ってきた。「我々のセンサ技術は、小型、省エネ、高精度といったところで他社製品に対する優位性がある。中でも光学、イメージング、環境、オーディオといった4つの領域に特化しており、そうした領域で、センサを中心としたハードウェアのモジュール化を進めている。

  • 光学、イメージング、環境、オーディオの領域に注力

    光学、イメージング、環境、オーディオといった4つのセンサ領域に注力

また、近年は顔認証を実現するようなアルゴリズムやソフトウェア処理も重要ということで、そうした企業のM&Aも進め、トータルソリューションでの提供を可能としつつある」と、センサに集中するビジネス戦略を展開していることを強調。これにより2017年の業績も前年比93.5%増の約13億ドルとなるなど、好調であるとする。

  • amsの戦略的バリューチェーン

    半導体のみならず、モジュールやアルゴリズム、アプリケーションソフトウェアまでトータルのソリューションとして提供することで、存在感を示すことに成功しているという

イメージセンサに注力

そんな同社の中において、CMOSイメージセンサは、マシンビジョンや医療機器、放送機器、人工衛星、セキュリティと幅広いアプリケーションでの活用が進められていることもあり、積極的な製品開発が進められているという。例えば、すでに提供している1mm×1mmの医療用カメラはカテーテルを用いて、太い血管の内部の撮影が可能なものだが、より細い血管での活用を目指して0.7mm×0.7mmのカメラモジュールの開発が進められているという。

  • 医療用センサの活用例

    医療用センサの活用例。1mm角よりも小型のイメージセンサの開発も進んでいるという

また、新たな用途開拓を目指し、技術の複合化も進めている。「我々は、ストラクチャードライト方式、1D ToF方式、フラッドイルミネータ方式と複数の3次元計測技術を自社で開発してきており、そのノウハウの蓄積を図っている。また、ハイパースペクトルカメラ用センサも手掛けており、そうしたさまざまな技術で得た要素技術を組み合わせることで、新たな用途開拓ができると思っている。例えば、光学とイメージング技術を融合させたハイパースペクトルのような技術を活用すれば、農作物の成熟度を簡単に計測したり、包装紙などの印刷物の品質向上といったことができるようになる」としており、「既存の市場をどう攻略するか、ではなく、新たな市場をいかにして生み出していくかが、今後の成長のための戦略となる」とし、日本地域に対しても、そうした新市場開拓に向けて、今後も投資を継続的に行なっていくとした。

  • ストラクチャードライト方式のシステムイメージ

    例えばストラクチャードライト方式を用いたシステムまで構築できるノウハウを有することで、顧客が3次元認識をしたいといったニーズを出してきた際に、最適なシステムの提供が可能となる

ちなみに、その日本のCMOSイメージセンサのデザインチームは現状4名体制だが、年内にさらに2名程度、2019年も複数名の採用を進め、開発速度の加速を目指すという。具体的には、詳細は明らかにされなかったが、マシンビジョン向けといったものになる予定で、市場ニーズの見極めと仕様の策定が終われば、早ければ2019年の早い段階で製品化までこぎつけられる見通しだという。

  • ハイパースペクトルカメラの活用が期待される領域

    ハイパースペクトルカメラは、今後、さまざまな産業分野での活用が期待されている