2018年5月2日、いよいよ新生・富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が事業をスタートした。Lenovo Group Limited(レノボ・グループ・リミテッド)が51%を、富士通が44%を、日本政策投資銀行が5%をそれぞれ出資。「FUJITSU」ブランドを維持しながら、レノボ傘下でビジネスを推進することになる。

社名に「クライアントコンピューティング」としているように、今後、PC(パーソナルコンピュータ)に留まらないコンピューティングビジネスへと踏み出すことになる。新体制の富士通クライアントコンピューティングはどんな企業を目指すのか。そして、市場に対して、どんなインパクトを与えることになるのか。

本誌は、短期集中連載により、新生・富士通クライアントコンピューティングの全貌に迫る。

事実上の事業開始は5月7日

ゴールデンウイーク明けの2018年5月7日。曇り空で始まった一日は、夕方には雨へと変わった。

この日、富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長は、いつもより20分ほど早い、午前8時10分に、神奈川県川崎市の同社本社に出社した。

  • 富士通クライアントコンピューティングの本社が入る富士通川崎工場

レノボ・グループ・リミテッドが51%を出資した、新しい富士通クライアントコンピューティングの事業開始日は5月2日だったが、この日はゴールデンウイークの真っ只中。社員は基本的には休みであり、齋藤社長も、富士通がオフィシャルスポンサーを務めるJリーグ 川崎フロンターレの試合を観戦して過ごした。

その点で、ゴールデンウイーク明けの月曜日となった5月7日は、新生・富士通クライアントコンピューティングにとって、事実上の事業開始日となった。

本来ならば、事業年度が替わる4月1日が、事業開始のタイミングとしては最適だったのかもしれない。だが、すべての国と地域で独禁法の審査が完了したのが4月後半のこと。さらに、日本では平日だった5月1日は、レノボが上場している香港が労働節で祝日。そのため、最短での事業開始日が5月2日となり、ゴールデイウイーク中だった日本の事業開始日は、5月7日までずれ込んだというわけだ。

20分早い出社に見える覚悟

使っている名刺も、社内の席にも変化はない。社員の顔ぶれも一緒だ。だが、いつもより20分も早く齋藤社長が出社したのは、経営トップとして、新体制で事業に挑む覚悟の表れだったのかもしれない。

  • 富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長

5月7日。午前9時30分から、本社から徒歩1分の距離にある「川崎市総合福祉センター エポックなかはら」のホールを使って、臨時集会を開催した。全社員を対象にしたことから、会場に入れる人数を考慮し、集会は午前中に2回に分ける形になった。

斎藤社長は、「これまでみなさんにお話ししてきたように、新たな体制になっても、設計、開発、生産、販売、サポート、そしてブランドも変わらない。これまで以上に、みなさんの力を発揮してもらいたい」と呼びかけた。

  • 臨時集会を行った「川崎市総合福祉センター エポックなかはら」。JR武蔵中原駅前にある

2018年度のキーワードは「もっと、もっと」

この日を遡ること約1カ月。齋藤社長は、2018年4月3日に、例年通り、方針説明会を開催した。これは、毎年4月と10月に、年2回開催しているものだ。場所は、臨時集会を行った「川崎市総合福祉センター エポックなかはら」である。本社エリアでの説明会が終わった後に、齋藤社長は、生産拠点である島根県出雲市の島根富士通、福島県伊達市の富士通アイソテック、兵庫県加東市の富士通周辺機、そして、ドイツの富士通テクノロジー・ソリューションズにも直接訪れて方針説明を行うのが恒例だ。

レノボの出資が正式に発表されて最初の方針説明会となる今回は、齋藤社長は約30分間に渡って、2017年度の成果とともに、2018年度以降の方針を説明した。そのなかで、2018年度のキーワードを示してみせた。

それは、「もっと、もっと」という言葉だった。