合併に妥協した理由
孫氏が話す理由は次のようなものだ。
「群戦略が基本戦略として鮮明になったから。ソフトバンク・ビジョン・ファンドが素晴らしい立ち上がりを始め、関心が群戦略に移ったこと。それが重要な要因であろうと。大きな目標に小さな妥協はあってもいいのではないかと。恥やプライド、こだわりを飲み込み、より大きな成果のために受け入れてもいいのではないかと考えた。この1、2カ月のことです。大人になったんです」(孫氏)
群戦略とは、300年成長を続ける企業グループを生み出すために孫氏が考案した組織論だ。群戦略の群とは様々な業界におけるナンバーワン企業の連合体のこと。巨額ファンドのソフトバンク・ビジョン・ファンドを中核に、有望なユニコーン企業へ出資し、強固な連合体を作り上げていくという考え方だ。
ナンバーワン企業への出資比率は20-30%程度であることが特徴で、一部の例外を除き、過半数株式は持たない。この考えをスプリントに当てはめれば、スプリントの経営権にこだわる必要もなくなる。
そして現在、この群戦略はうまくいっているという評価だ。2017年度連結決算におけるソフトバンク・ビジョン・ファンド事業により計上した営業利益(評価益)は3030億円。今年度についても「イメージとしては少なくともこの額を上回る。大きく上回るだろうと。ソフトバンク・ビジョン・ファンドを始めてから月を追うごとに自信は深まっている」とする。
今回の合併を機に、スプリントが連結子会社から抜けることで、ソフトバンクグループのバランスシートが改善され、米国における5Gへの移行に向けて、巨額のコスト圧縮効果を見込むこともできる。
これらも、合併の効果として大きなものだが、発表会で語られたのは、群戦略がソフトバンクグループの基本戦略であり、その基本に立ち返ったということに尽きる。様々な物事の見方があるだろうが、孫氏の発言を正面から受け止めるなら、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの推進こそが、現時点における注力テーマであり、これまで以上に同事業が加速していきそうだ。