ソフトバンクグループ子会社の米通信会社スプリントがT-Mobile USに経営権を手放す形で合併することで合意したが、ソフトバンクグループの孫代表が今回の決断を下すには、複雑な思いがあったようだ。
三度目の正直で合併に合意
ソフトバンクグループが米業界4位の通信会社スプリント買収を発表したのは2012年。孫代表によると、当初は業界3位のT-Mobile USも同時に買収することで動いていたという。孫氏が考えていたのは、両社を買収・合併させ、ベライゾン、AT&Tと伍する力を持ち、米通信業界ナンバー1を目指すことだった。
しかし、この計画は米政府の許認可を得られずに頓挫した。結果的にスプリントの買収にとどまり、同社の経営再建を進めてきた。
スプリント買収後もT-Mobile USと交渉し、合併を試みたが、条件面で折り合わなかった。障壁になったのはスプリントの経営権の行方だった。孫氏は過去を振り返る。「(スプリントの)経営権を手放すべきではない、せめて対等の権利を持つべきだと。結果、破談になった」としており、どちらが主導権を握るかで折り合いがつかず、物別れに終わった。
そして三度目の今回、孫氏がこだわっていたスプリントの経営権を手放す形で、合意にいたった。
合併後の社名はT-Mobile USとなり、スプリントが傘下におさまる。合併にあたり、ソフトバンクグループはT-Mobile USの株式を27.2%保有し、14人からなる取締役会に4名を送り込むものの、筆頭株主は41.7%を持つドイツテレコムとなり、スプリントの経営権を手放す形だ。
孫氏は「恥ずかしいとわかりつつ、それを飲み込んだ」とし、忸怩たる思いを明かす。しかし、続けて「一時的な恥だが、大きな意味での勝利を取れるなら、恥じるべきではない」とし、合併を承諾したというのだ。
孫氏が話す"大きな勝利"とは一体何なのか。