限界が見えた総務省の“大ナタ”
そうしたMVNOの苦境を受けて実施された、総務省の有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」も、MVNOの期待に応えたとはいえない結果となった。その最大の理由は、MVNOが最も警戒しているソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドや、KDDI傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」など、大手キャリアのサブブランドに対する追及が空振りに終わったことだ。
今回の有識者会議ではサブブランド、特に他のMVNOと同様、MVNOとしてサービスを提供しているUQ mobileに対し、昼間の通信速度が他社より高速であるなど、ネットワーク面で親会社となるKDDIから何らかの優遇がなされているのではないかという点に大きな疑いがかけられていた。だがUQコミュニケーションズ側は実際の資料によって、基本料を高く設定して接続料を多く支払い、他社より多くの帯域幅を借りているためビジネス上問題がないことを証明したのである。
そうしたことから総務省は、サブブランドに対し引き続き優遇がないか注視していくとしながらも、規制につながる具体的な策を打ち出すことはできなかった。ゆえにサブブランドは従来通りのビジネスを継続すると見られ、MVNOにとっては非常に大きな脅威として立ちはだかり続けることとなる。
それ以外の議論の結果に関して見ても、中古スマートフォン市場の活性化に向けた措置や、キャリアに対する2年縛りの改善の要求などがなされることは明らかとなっている。だがかつてのSIMロック解除義務化や、実質0円販売の事実上禁止措置などといった、MVNOの優位性が圧倒的に高まる“大ナタ”というべき措置につながるものは見当たらない。
MVNOは総務省の優遇によって大きく伸びてきた経緯があるが、今回の有識者会議を見ても、総務省ができることに限界が見えてきているのも事実。それだけに、MVNOが生き残るには自身がより一層強くなることが求められるようになったといえよう。