Domoでプレディクティブアナリティクスを導入

講演では、Domoを使ったアナリティクスの事例がいくつか紹介された。例えば、「Pipeline Movement Waterfall」では、週次でセールスパイプラインの動きを見ることができる。また、「Whitespace & Greenfield」では、顧客が現在利用中のRapid7のプロダクト、リニューアルの時期、直近のコミュニケーション時期などのデータを集約しており、どの顧客への対応を優先すべきかをセールスとカスタマーサポートが共有している。

さらに、「Quarterly Board Review Dashboard」では、4半期ごとのビジネスレビューを自動化するための画面を用意した。この画面により、担当者が一人ひとり会議で発表をしなくても、マネージャーがそれぞれのビジネスパフォーマンスを見ることができる。必要な情報を見たい時に見ることが可能ならば、会議の時間を一人ひとりの報告に費やす必要はない。会議を4半期の目標を達成するにはどうするべきかを話し合う建設的な場にすることができるというわけだ。

Rapid7では、約半年前からプレディクティブアナリティクスも導入していることをシーマン氏は明かした。同社のように、クラウドでソフトウェア製品を提供するビジネスでは、既存の顧客がリニューアルしてくれるかどうかが成長を左右する要素となる。そこで、顧客のリニューアル確率を横軸、顧客のヘルススコアを縦軸、バブルの大きさをリニューアル金額とする「Customer Health」のチャートを作成した(図2)。

このチャートは、導入している製品、カスタマーサポート、購買行動、顧客満足度から、それぞれの顧客のRapid7製品契約のリニューアル、およびアップセルやクロスセルの可能性を予測するものだ。チャートの右上にいるほどヘルシーな顧客、右下や左上にいる顧客については、どうすれば満足してもらえるかをヒアリングするなど、対策を講じるために利用しているという。

  • 図2:Rapid7のプレディクティブアナリティクス事例:顧客のヘルススコア 資料:米Rapid7

ユーザーとのコミュニケーションにも配慮

データを基にした意思決定を行うため、これからアナリティクスに取り組もうとする企業に向け、シーマンス氏は4つのアドバイスをした(図3)。

第一に、「やってみることと実験すること」だ。第二は、最初に挙げたフレームワークにもあったように「プロトタイプを作り、反復すること」だ。Domoでは、さまざまなデータソースへのアクセスとカード(Domo用語で一つのグラフのこと)の作成を簡単に行える。カードを作ってそこで終わるのではなく、改善を繰り返すところまでやるべきなのだという。

第三は、同じくフレームワークの要素と関係する「良さを伝え、コミュニケーションを取り、できるようにする」である。シーマンス氏のチームでは、社内ユーザーと定期的なコミュニケーションをとるため、アップデート情報を伝える「Domo Announcement」と利用のコツを教える「Domo Did You Know」のページを更新している。こうした地道な取り組みが評価され、各部門のエグゼクティブたちからは「主要指標にすぐにアクセスでき、毎日のビジネスマネジメントができるところが気に入っている」などのコメントを得ているという。

最後が「前もってデータ戦略を作ること」だ。「Domoにどのデータを集約するべきかは最初に決めればよかった」とシーマンス氏。データへのアクセスが簡単だからこそ、一度に多くのデータを集めるとそれを読み解くのが大変になる。だから、戦略を立てて、少しずつやることを勧めたいとアドバイスした。

  • 図3:アナリティクスを社内でスケールさせるためにやるべきこと 資料:米Rapid7

一方、やらないほうがよいこととして挙げられたのは、「最初から大風呂敷を広げること」「部門の要求に従って全部のカードを作ること」「全部のKPIにフォーカスすること」である。反復的に改善することが前提ならば、最初から精緻な計画は必要ないし、全部のKPIを見ようとして、やたらにカードを作る必要もない。

部門BIからの脱却は、組織、ビジネスプロセス、データソースのサイロを壊すところから始まる。米国企業はトップダウンのマネジメントが強く、意思決定は一部の経営層だけが下すものと思われているかもしれない。だが、シーマンス氏の講演内容からわかるのは、各部門が現場で下す意思決定も同じように重要視しているということだ。

組織全体としてのビジネスゴールの整合性を維持するためにも、トップダウンとボトムアップの両方のアプローチを重視するRapid7のやり方は日本企業にとって参考になるだろう。