リモート管理という文脈では既にRSAT(リモート サーバー管理ツール)が存在するものの、現時点のWindows Admin CenterはRSATを代替する存在ではない。Active DirectoryやIISなどを管理する機能を備えていないが、筆者は今後段階的なサポート項目が増えていくと見ている。

  • Hyper-V上の仮想マシンに関するパフォーマンスもグラフで確認できる

    Hyper-V上の仮想マシンに関するパフォーマンスもグラフで確認できる

最初のプレビューとなったバージョン1709は必要最小限の機能を備えていたが、バージョン1711はRemote DesktopやPowerShellをサポート。バージョン1712はHyper-V。バージョン1802は多言語化やゲートウェイ認証。バージョン1803はAzure ADアクセス制御、ログ情報などをサポート。そして現在のバージョン1804では、セキュリティや役割ベースのアクセス制御が加わった。このようにWindows Admin CenterはRSATを過去のものにするため、開発を続けていくはずだ。また、Windows Admin Centerは「拡張機能マネージャー」を用意し、必要に応じて管理対象を拡大できる。

  • 拡張機能マネージャーから管理対象を広げることもできる。現在はパブリックプレビューだがSDKを用いれば社内専用の拡張機能をWindows Admin Centerに組み込むことが可能だ

    拡張機能マネージャーから管理対象を広げることもできる。現在はパブリックプレビューだがSDKを用いれば社内専用の拡張機能をWindows Admin Centerに組み込むことが可能だ

Windows Admin CenterはWinRM(Remote Management: WS-Management)サービスを利用し、Webブラウザー経由でアクセスする仕組みだ。そのため、Windows 10に対して用いる場合は各クライアントで「winrm qc」コマンドを使ってWinRMの設定を行わなければならなかった。管理可能なOSはWindows Server vNext、Windows Server 2016、Windows Server 2012 R2、Windows Server 2012、Windows 10の5種類。ただし一部のOSはWMF(Windows Management Framework)バージョン5.1以降が必要となる。それぞれサーバーやクライアントPC、フェールオーバークラスター、ハイパーコンバージドクラスターといったソリューションごとに管理することが可能だ。

  • クライアント(Windows 10)に対しても同様の管理が可能だ

    クライアント(Windows 10)に対しても同様の管理が可能だ

今後Windows Serverは主体としてGUIを採用せず、後方互換性を維持するためにデスクトップエクスペリエンスモードを供えるのは、Windows Server vNext LTSCのみとなる予定だ。本来サーバーOSにGUIを持たせるのはハードウェアリソースを無駄に消費し、大半の操作はPowerShellで事足りる。筆者の私見だが安定したハードウェア構成とチューニングしたLinuxがあれば、Windows Serverを稼働させるメリットはますます希薄化するのではないだろうか。

  • リモートデスクトップ機能もそなえる

    リモートデスクトップ機能もそなえる

それでもハードウェアリソースや各種設定をGUIベースで操作したいという一部のWindows Server管理者の声に応えるため、Windows Admin Centerを用意したのだろう。なお、Windows Admin Centerゲートウェイを用いることでMicrosoft Azureと統合し、Azure 仮想マシンの管理や、Azure Site Recoveryを用いたHyper-V仮想マシンの保護などが可能になる。Windows Admin Centerは、これまでのリモート管理環境を一変させる存在だ。システム管理者は早期導入を試み、検証することを強くお薦めする。

阿久津良和(Cactus)