クリックテック・ジャパンは3月27日、都内で記者会見を開き、日本を含めたAPAC(アジア太平洋)地域におけるデータリテラシーに関する独自調査結果を発表した。

冒頭、クリックテック・ジャパン カントリーマネージャーの北村守氏はデータリテラシーの定義について「データを読み解き、データの活用、データの分析、データで議論することだ」と述べた。

  • クリックテック・ジャパン カントリーマネージャーの北村守氏

    クリックテック・ジャパン カントリーマネージャーの北村守氏

  • データリテラシーの定義

    データリテラシーの定義

データリテラシーの割合がアジア圏で最も低い日本

昨今、AI、IoTの時代を迎え、データを扱うことがますます重要になっていくことが予測されている。今回の調査は、同社の独自調査として第三者機関のCensuswideにより、APAC地域5カ国(日本、インド、オーストラリア、シンガポール、中国)の計5288人(日本では1061人)のさまざまな階層のフルタイムで働くビジネスパーソンを対象に実施。

調査において「データリテラシーに自信がある」と回答したのはインドが最高で45%、アジア太平洋地域全体では20%の一方、日本は最低の6%という結果となった。

また、日本ではデータアクセス権限の低さがビジネスパーソンのデータリテラシーを阻害している傾向が明らかになり、「自社の全員がデータを活用する権限を持ち、データリテラシーがある」と回答したのは地域全体で23%に対し、日本では11%と地域内で最も低い結果だった。

データリテラシーを取得している日本の経営幹部以上は24%、上位管理者は14%、中間管理職または専門職は6%と職位とデータリテラシーの高さの関連が見られたという。

  • 日本の現状(1)

    日本の現状(1)

日本はデータリテラシーが低い傾向にある一方で、データ活用への期待は高まっており、調査対象者の67%が現在の職務において「週に1度以上はデータを使用」し、36%が「3年前と比べ、より大きなデータを活用する必要に迫られている」という結果になった。また、データリテラシーを備えていると回答した97%が職務遂行に自信を持ち、備えていないと回答した9%が職務遂行に自信を持っていないという。

  • 日本の現状(2)

    日本の現状(2)

日本のビジネスパーソンは、データおよびデータリテラシーの価値が認識され始めていることに加え、28%が「データを活用することで高い水準のパフォーマンスを出すことができた」と回答し、うち70%が経営幹部であることから、データリテラシーの有無がビジネスパーソンにとって重要なスキルになっていることが想定できるとしている。

さらに、日本の対象者の72%が「データが自分の仕事をより良くするのに役立つ」と回答し、42%は「データリテラシーが高いほど職場における信頼性が向上する」と回答、日本で「自身の仕事上のパフォーマンスの高さに自信を持っている」と回答した人は、データリテラシーが高い人では68%に達するが、データリテラシーの低い人は9%に留まる。

  • 日本の現状(3)

    日本の現状(3)

日本の企業は従業員のデータリテラシー強化に向けた施策に取り組み、従業員がビジネス環境に適応し、競争力を維持するためのスキルを高めるように奨励する必要があり、日本の対象者の26%が組織の中でデータアクセスに関する権限を持つのは少数の人々のみで、大多数の人は十分なデータリテラシーがないと感じているとの認識を示す。

加えて、日本の対象者の28%が「可能な限り高いパフォーマンスで業務を遂行するために必要なすべてのデータにアクセスできている」と答えている一方で、経営幹部以上は70%に増加。また、対象者の約半数となる48%が「職場でデータリテラシーやスキルに関するトレーニングがない」と回答し、「ある」と回答したのは20%に留まった。

日本を除くアジア太平洋地域の82%が「データリテラシー向上に時間や費用を費やしたい」と考えている一方で、日本は31%とアジア太平洋地域諸国と比べて意識の遅れが散見されているという。しかし、過去に適切なデータリテラシートレーニングを受けたことのある対象者は、データリテラシー向上への意欲は高く、65%の回答者が「トレーニングを継続しデータリテラシーを向上させたい」と回答している。

世界とのギャップを埋めるための施策とは?

このように日本は世界とのギャップがあり、データアクセスの権限と教育が十分ではないと北村氏は語る。これをどのように埋めるのか。この点についてはQlik Technologies APAC データリテラシー リードのポール・マクリーン氏が説明した。

  • Qlik Technologies APAC データリテラシー リードのポール・マクリーン氏

    Qlik Technologies APAC データリテラシー リードのポール・マクリーン氏

同氏は、世界のデータ量が年々増加していくことに対して「データの民主化」が必要だと説く。これは従来、経営層のみがアクセスしていたデータに多様な階層の人たちがアクセスできることだという。

重要なポイントとしては、データリテラシーのスキルのギャップは多くの人々、スキル、年齢層、職務などにより存在している。そのためマクリーン氏は「われわれは、これをチャンスと捉え、多様な人たちのデータリテラシーの向上を支援する」と、強調する。

データリテラシーの構築には「好奇心」「文化」「リーダーシップ」「学習」の4つがベストプラクティスだという。そして、データリテラシー育成へのロードマップは「継続的なアプローチ」「協議」「コミュニケーション」「文化のトレーニング」「従業員のアセスメント」「拡張トレーニング」「測定」を繰り返すことがポイントになるとしている。

  • ベストプラクティスの概要

    ベストプラクティスの概要

  • ロードマップの概要

    ロードマップの概要

同氏は、ロードマップの次のステップとして同社のデータリテラシープログラムに関して説明した。同プログラムは組織および企業に対し、スキルアップの機会を提供しており、スキル評価、講師によるトレーニング、セルフペーストレーニング、認定、アカデミックプログラムで構成されている。講師によるトレーニングのみ有償だが、そのほかは無償となる。

  • データリテラシープログラムの概要

    データリテラシープログラムの概要

アカデミックプログラムは現在、65カ国、約900の教育機関で使われており、学生、教授、教育機関がターゲットとなる。今後は日本語にも対応していく方針だ。

  • アカデミックプログラムの概要

    アカデミックプログラムの概要

マクリーン氏は同プログラムについて「幅広いコミュニティで使ってもらい、データリテラシーを高めてもらう。目的は教授、学生、研究者で構成されるエコシステムを構築することだ。データリテラシーを身に着け、学習してもらう」と意気込みを語っていた。