次に訪れたのは国指定の伝統工芸品、伊賀焼で有名な長谷園。「かまどさん電気」の土鍋を製造しています。京都駅から車で1時間ほど走った三重県の伊賀市内、山間にたたずむ昔ながらの建物に目を奪われました。茅葺(かやぶ)き屋根の建物も残っており、タイムスリップしたような場所です。

  • 「ライスポット ミニ」vs「かまどさん電気」

    時が止まったよう。なつかしさを感じる建物がずらり

この場所は、周辺には琵琶湖と、薪に最適といわれる赤松などが豊富な森があります。伊賀の陶土は古琵琶湖層と呼ばれる地層から算出されています。琵琶湖の湖底に堆積していたもので、400万年前に生息していた生物や植物の遺骸(微生物の化石)が多く含まれた地層で、高温で焼成するとその部分が燃え尽きて細かな気孔が無数にできることから、「呼吸する土」といわれているそうです。

この土を使った炊飯土鍋「かまどさん」が大ヒット。一般的な土鍋の倍以上の厚みがあり、しっかり熱を蓄えて穏やかに熱を伝える、炊飯に適した土鍋となっています。フタが二重構造となっており、吹きこぼれもなく、面倒な火加減もないことも評価され、現在も納期は6カ月待ち(2018年3月時点)。そんな土鍋「かまどさん」を使った炊飯器が「かまどさん電気」です。

炊飯部分は家電メーカーのシロカが担当。もちろん、従来のかまどさんとまったく同じではありませんが、ほぼ同じ構造となっています。土鍋風ではなく、土鍋にこだわった理由は、土鍋の味を追求したため。IHに対応するために鉄を混ぜてしまうと気孔がなくなり、美味しく炊けなくなるだけでなく、保存すると酸化して黄色くなってしまうことも、許せなかったとのことです。

苦節4年

  • 「ライスポット ミニ」vs「かまどさん電気」
  • 「ライスポット ミニ」vs「かまどさん電気」
  • 試作品の数々。土鍋をそのまま使うために、試行錯誤が4年も続きました

かまどさん電気ができるまで、試作機は500個、炊いた米は3トン以上、4年の歳月を費やしたといいます。電気で土鍋を加熱し、直火を同じように熱を伝えるためには炊飯プログラムも試行錯誤が続いたそうです。実際に試作器も展示してありましたが、苦労の跡が伺えました。一番のこだわりは、土鍋そのものを使っていること。保温はできませんが、土鍋が呼吸をするため、余分な水分などを吸ってくれるので美味しく保存できるそうです。

  • 「ライスポット ミニ」vs「かまどさん電気」

    最終モデル。底に小さな金属が埋め込まれました