スマホとのマップ連動でエリアの周遊を促進
映像スペースの下には、日本語、English、中文の言語切り替えボタンを配置。その下には、「嵐電ご利用方法」「時刻表」「イベント情報」「見どころMAP」「お天気情報」「スマホdeガイド」「サイネージの使い方」という機能ボタン、そして、「SNSによるリアルタイム観光情報はこちら」と書かれた下に「嵐山エリア」「太秦エリア」「北野線沿線」というボタンがある。ここでは特徴的な機能をいくつか紹介しよう。
まず、「見どころMAP」をタップするとStroly社の提供するマップコンテンツが表示される。画面には提携店舗がマッピングされており、気になる店舗をタッチすると詳細情報を確認することができる。また、マップ上の2次元バーコードを読み取れば、スマホのブラウザで同様の地図コンテンツの確認が可能だ。
スマホでマップを表示している間は、GPSで利用者の位置情報を追跡。ダッシュボードで獲得した位置情報の確認ができるので、観光客がどのようなルートを移動しているか把握することができる。
デモでは、嵐山にある提携店舗のクーポンを配布された。スマホのマップにクーポンが表示されると、「この通りを進めばたどり着く」と、思わずルートを確認して足を延ばしたくなるから不思議だ。さまざまな店舗をめぐる理由ができるので、この仕組みをうまく活用できれば、周辺商店の活性化が実現できるかもしれない。
また、現在は開発中とのことだが、マップ上では店舗の混雑状況も確認できるようにする予定。京都は観光地として名高いが、混雑によって満足度の低下が目立っているという。すぐに入れる店舗をひと目で把握できるようにすることで、観光客の時間の有効活用を促進させる。
さらに、サイネージの上部にはカメラが搭載されており、サイネージを利用した人数と年代、性別などを解析して測定している。利用者属性の分析によって効果的な情報配信などを目指す。なお、現時点では、20~30代の利用者が多く、性別は女性の比率がやや大きいという。利用状況としては、1日で平均100人が4~5回程度タッチしているという結果が出ている。
エリア内のSNS画像でリアルな観光情報を確認
メイン画面の下部にある「嵐山エリア」「太秦エリア」「北野線沿線」をタッチすると、周辺2km内でTwitterやインスタグラムに投稿された一般ユーザーーの写真が表示される。民家なども含むため、ピックアップした写真のから人工知能が不適切な画像を取り除いて掲載するという。
これまでの観光情報は、情報提供側が継続的にアップロードしていかなければコンテンツが陳腐化してしまう恐れがあった。しかし、同機能を活用することで、常に新しい情報をリアルタイムで表示させることが可能になる。
人間には認識できない音でスマホが情報を取得
ヤマハの協力によって搭載された音のユニバーサルデザイン「Sound UD」システムも興味深い。
サイネージからは人間には認識しづらい音が流れており、スマホアプリの「おもてなしガイド」を起動させることで、スマホがその音から情報を取得することが可能だ。
実際にアプリを起動した状態でサイネージに近づいたところ、URLの情報をスマホが認識し、クリックするとサイネージと同様のコンテンツをスマホでもチェックすることができた。
セレモニーでは、京都府副知事の山下晃正氏は「日本の観光は、一つひとつのサービスの質が非常に高い。しかし、ワンパスで乗り継ぐ、多言語で案内する、スマホ決済できる店舗の数など、スポット間を結ぶシステムが構築できていない。この解決は簡単なことではないが、実証実験を通じてさまざまなフィードバックなどをいただき、成長させていきたい」と今回の実験について意気込みを述べた。
また、シスコシステムズ 専務執行役員の鈴木和洋氏は「サイネージを活用して、観光地間、店舗間といった横の連携を取りながら、観光客の満足度を高めていきたい」と目標を述べた。
京福電鉄 代表取締役社長の岡本光司氏は「嵐山は日本有数の観光地だが、渡月橋と竹林に観光客が集中してしまって、ほかの場所はあまり周遊してもらえていない。また、嵐山だけでなく、嵐電の沿線には世界遺産もある。デジタルサイネージの設置は、沿線の周遊促進、滞在時間の延長などに役立つのではないか」と実験に対して期待を寄せた。