ロサンゼルスを拠点として活動する、テクノロジーを使ってエキサイティングな遊びを生み出す「サーカス」がある。それが、エンジニア2人組から始まったテック集団「Two Bit Circus(ツービット・サーカス)」だ。

レーザーやVRといった技術を軸に、音や炎などフィジカルな体験に訴えかける要素を取り入れた作品を多く生み出し、近年スーパーボウル、NFLといった大規模イベントにまつわる制作物までも手がけている。彼らは一体どのようにして、その"興業"を拡大していったのだろうか。

本稿では、SOLIDWORKSの年次イベント「SOLIDWORKS WORLD 2018」の基調講演でツービット・サーカス創設者でCEOのBrent Bushnell(ブレント・ブッシュネル)氏が行った講演「The Power of Immersion(没入の力)」の様子をお届けする。

  • ツービット・サーカス創設者・CEOのBrent Bushnell(ブレント・ブッシュネル)氏

    ツービット・サーカス創設者・CEOのBrent Bushnell(ブレント・ブッシュネル)氏

「テクノロジーのサーカス」、開演までの軌跡

開口一番、SOLIDWORKSを駆使するエンジニアが集う客席に向かって、「私"も"オタクですので」、といたずらっぽく語りかけたブッシュネル氏。彼はUCLAで電気工学を学んだ後、もっとも意外なところでスシ職人など、さまざまな職業や学問に触れた後、同じくツービット・サーカスの共同創設者であるEric Gradman(エリック・ラドマン)氏と出会い、作品制作を開始したという。

  • 「ツービット・サーカス」という名は、創業者のふたりがサーカス好きであることからつけられた。ブッシュネル氏はピエロとしてパフォーマンスしたこともあり、ラドマン氏はパフォーマーとしても活動していた。

    「ツービット・サーカス」という名は、創業者のふたりがサーカス好きであることからつけられた。ブッシュネル氏はピエロとしてパフォーマンスしたこともあり、ラドマン氏はパフォーマーとしても活動していた。

活動初期の作品の中から、霧を満たした部屋にレーザービームをいくつも照射した、まるで映画のワンシーンのような作品を紹介。この画像を指して、「どんな人でも、レーザービームが出ている部屋に入ると、やることはみんな同じなんですよ」と、にやりとしながら話す。

  • まるで映画の中に入ったかのように、レーザーをくぐり抜けるゲーム

    まるで映画の中に入ったかのように、レーザーをくぐり抜けるゲーム

作品に反響が集まるにつれ、ふたりは事業化について思案するようになる。そうしたタイミングで、あるロックバンドから電話で「ミュージックビデオを作って欲しい」と依頼された。そのバンドこそ、日本でもドローンを駆使した一発撮りMVで話題になった「OK GO」。このMV制作を契機に、各所からテックを駆使した作品の制作で声がかかるようになった。

「エンジニアリングを使って、エンターテインメントそのものを再考しよう」。こうした思いから、ツービット・サーカスの活動は、VRコンテンツにも領域を広げ、大規模に展開されていく。

  • レースカーのうえにGoProを載せ、レーサーの感覚をVRで追体験するコンテンツ

    レースカーのうえにGoProを載せ、レーサーの感覚をVRで追体験するコンテンツ

  • メキシコの国境ぞいで展示した「テキーラを降らせる雲」の展示

    メキシコの国境ぞいで展示した「テキーラを降らせる雲」の展示

スーパーボウルでフットボール選手がタッチダウンをするときの感覚を追体験するVRコンテンツの制作は、彼らの活動規模が拡大されたことを示す好例だが、ブッシュネル氏は「我々はオタクなのでスポーツは大嫌いだし、実際のところ(フットボールの)何が楽しいのかわからないんだけど」とおどけてみせつつ、だからこそ追体験の手段としてコンテンツを制作したのだと語った。