東京工業大学(東工大)は2月22日、同大大岡山キャンパスに、隈研吾建築都市設計事務所が設計する学生のための国際交流館「Hisao & Hiroko Taki Plaza」を建設すると発表した。2018年に工事を開始し、2020年10月にオープン予定。
「Hisao & Hiroko Taki Plaza」は、東工大の日本人学生と留学生の交流を主眼に置いた国際交流館。建設にあたって、ぐるなび 代表取締役会長・CEOの滝久雄 氏が建設にかかる事業費を全額寄附したことから、同氏とその妻の名前が施設名となっている。
設計を手がけるのは、2020年の東京五輪の舞台となる新国立競技場の設計も手がける、隈研吾建築都市設計事務所 隈研吾 氏。同施設の高さは13メートル、広さは約5000平米で、総事業費は約30億円。
同施設は国際交流を軸とした多目的施設で、日本人学生と留学生の交流を活発化させるためのイベントスペース、グループ学習のためのスペース、情報共有のためのインフォメーションスペース、留学手続きなどのサポートを行うスペースで構成されている。各機能は、学生へのヒアリングや国内外の大学の視察から、必要なものを選定し決定した。
滝氏は、三島学長が2016年より「2030年までに世界トップ10に入るリサーチユニバーシティになる」ことを目指し、同大の国際化などを含む大学改革を行っていることに触れ、「(大きな目標であるため)当初、本当に実現できるのかと思っていたが、三島学長は持ち前のエネルギーで進めておられ、大変な敬意を払っている。留学生は在校生にとってもっとも身近な外国であり大切にすべきと考えてきたが、想いを行動に移すべく、母校である東工大に留学生が国内学生と交流するための施設の資金を寄付した。グローバル人としての良き知見を養ってほしい」と寄付の意図を語った。
緑ある丘のような建築
続いて、隈研吾氏が同施設の設計意図を解説した。大岡山の起伏に富んだ地形を象徴する造形で、大学の正門から見える位置に建てられる。隈氏は、「この緑の丘が、新たな大学の顔となる」と語った。
屋上に植物を配置すると建物にかかる荷重は大きくなるが、柱は細く繊細なシルエットだ。このデザインを実現するため、軽量土壌や多孔質セラミックパネルを利用して、植栽部分の軽量化を図っていると隈氏は解説した。
キャンパス内にある時計塔への視線を遮らないために、一部を地下に埋めたような構成となっている(地下二階~地上二階)。各施設や桜並木のプロムナードなど、既存の場への多様なアプローチも構成。また、2011年に新築された同大付属図書館へは地下二階で接続している。
そして、建物内部は「さまざまな交流が行われる自由で開かれた空間にしたい」という三島学長や滝氏の意向を受けるかたちで、大きくゆったりとした空間となっている。
なお、「Hisao & Hiroko Taki Plaza」とは別に、「(東工大生に)日常的にアートに触れて欲しい」との思いから、滝氏は別途パブリックアートの設置資金も寄付。制作について、「AKIRA」などで知られる大友克洋氏に打診を行っており、現在前向きに検討中とのこと。実現すれば、「50年先の日本、世界」をテーマとした作品が設置されることになる。同施設の建設と共に、本件の進展にも期待したい。