そして、新潟県長岡市にデータセンターを建設した目的がもうひとつある。それは、グリーンエネルギーを活用した空調施設の構築。そもそも新潟は首都圏よりも外気温が低い。こうした外気の特徴を生かして空調し、サーバーから発せられる熱を逃そうというのだ。サーバーは巨大な熱源だが、だからといって顧客のニーズを満たすためには電力を抑制するわけにはいかない。そして、その発生した熱を電力利用の一般的な空調で冷却しようとすれば、さらに消費電力がかさんでしまう。
もちろん、外気温が低い地域はほかにもある。実際、山形県や福島県、群馬県、長野県なども建設候補地になっていたそうだ。ただ、こうした地域を押しのけて新潟県になったのは、全国有数の豪雪地帯であること、首都圏からアクセスしやすいことが決め手だった。
特に豪雪地帯であることが重要だ。外気による空調は、年間8~9カ月間ほどは有効だが、夏場にはなかなか通用しない。そこで、冬の間に集め保管しておいた雪氷が生ずる冷気を使い、サーバールームの空調を行う。
アクセスに関しても上越新幹線1本と利便性が高い。首都圏からのアクセスということであれば群馬県に分があるが、新潟県に比べれば積雪は少ない。スキーやスノボーを楽しむのに最適な粉雪になることが多いが、この手の雪はあまり積もらない。雪氷を保管して空調に生かすには心許ない。
なお、長岡のデータセンターでは、空調により排出された熱を植物工場や水産養殖などに活用するようだ。
BCPの考慮も新潟県を選んだ理由
そして最後に、新潟県を選んだ理由がある。それは、BCP(事業継続計画)の観点だ。首都圏だと「いつかくるだろう」といわれている首都直下型地震への対策を練らなくてはならない。また、プレート型地震による巨大津波の心配もある。東京・豊洲にあるデータセンターは、約200mもの杭を打ち込んでいるそうだ。
一方、新潟県の場合、決して地震が少ないワケではなく、活断層型が多い。つまり、断層を避けて建設すれば、ある程度、被害は抑えられる。長岡のデータセンターも、断層を避けた場所を選んだそうだ。そのため、杭打ちが不要な「ベタ基礎」にし、その分、3種類の免震ゴムにより地震による被害を抑制する考えだ。
いずれにせよ、クラウドの高度化、自動運転など、データセンターの役割はさらに重要になってくる。地方創世やグリーンエネルギーなどに取り組んだ長岡のデータセンターは、モデルケースのひとつとなりえるだろう。