FCMにおいて、見逃せない特徴のひとつが、従業員の定着率が高いことだ。

海外の生産拠点の場合、どうしても従業員の定着率が課題になりがちだが、FCMでは、10年、20年と勤続している従業員も多く、なかには、操業開始時から30年以上勤務している従業員もいるという。

実際に、FCMで勤務している従業員に職場環境について聞いてみた。「マレーシア国内では、働く場所を探そうと思えば見つけることができる。だが、FCMには、働きやすい環境が実現されていること、富士通という世界的に有名なブランドの製品を、責任を持って、モノづくりをするとの自負があることで働きがいもある。また、健康や環境に配慮した会社であることも働きやすい職場につながっている」とする。

従業員の多くは、20~30km圏内に住んでおり、車やオートバイで通勤し、敷地内の駐車スペースに止めている。他社では、駐車スペースを確保できず、路上駐車を余儀なくされる場合もあるそうだが、当然、FCMではそうしたことがない。また、約40台の通勤用バスを用意して、住宅の最寄りの場所まで送迎するといったことも行っている。

  • 話をしてくれた(左から)HONG CHIA SHYAN氏、Abd Manap Mohamad氏、LEE CHING CHANG氏。キーボード製造部門のマネージャーたちだ

共働きや大家族、女性が働きやすい環境に

一方、マレーシア人は、日本人から見ると、時間にルーズな国民性というイメージが強いが、FCMで勤務する従業員にそのイメージはあまり当てはまらない。リレーの生産工程は24時間体制、キーボードの生産工程は、午前7時から午後3時までの体制となっているが、午後7時まで稼働していることが多いそうだ。

「特筆できるのは、女性従業員の勤務に対する真面目さ。産休を取るときもぎりぎりまで働いて、すぐに復帰するといった従業員が多い。もともと共働き世帯が多いことや、大家族で住んでいるケースが多く、子供を見る家族がいるといった生活環境も、女性が働く環境が確立されていることにつながっているようだ」と、石田ディレクターは語る。

さらに、マレーシアでは、イスラム教徒が多く、食事はハラルにも配慮しなくてはならない。食堂は、ハラル対応のマレー系と、それとは別に中華系の2つを用意。当然、調理場も別々に用意している。いずれの食堂も、日本円にして70円~100円で食べることができ、従業員には好評だ。そして、礼拝所も用意されており、昼食時間を午後1時からとしているのも、礼拝の時間に配慮したものとなっている。

こうした福利厚生の手厚さや現地の人たちへの配慮も、FCMの従業員定着率の高さにつながっている。

  • マレー系の食堂の様子

  • ハラル対応の食事を用意している

  • 日本円換算で70円から100円程度で食べることができる

  • こちらは中華系の食堂

FCMの山下アドバイザーは、「勤続年数が長い従業員が多いことは、FCMでの生産品の品質を維持することにつながっている。生産現場において、技術がしっかりと伝承されることにつながっている」とするのも明らかだ。

FCMの従業員は、もともとはマレーシア人が多いが、ここ数年では、人件費の高騰もあり、インドネシア、ベトナム、ネパールからの従業員も増加しているという。ちなみに日本人は柳澤社長を含めて8人だ。