現地にいるような立体感ある音を生み出す「Sound Intelligence」
"音の拡張現実(AR)"ともいえるサラウンドシステムも、来場者をヒートアップさせる。当然、大ボリュームで現地の音声を流すような単純なものではない。今回のオールスターでは、「Sound Intelligence」と呼ばれる、まるで試合会場にいるような臨場感を演出するための仕掛けが施されていた。
まず、熊本会場の天井・コートサイドには20個のマイクが設置され、ファンの歓声を拾う。そして、コート床下には32個のマイクが設置され、バスケ特有のドリブル音や「キュキュッ」というスキール音を拾うのだ。その際、特定の音のみを届けられるように、余計なノイズは除去される。
さらに、天井・コートサイドのマイクで集めた歓声は、恵比寿のB.LIVE会場に設置された20個のスピーカーのうち、集音した場所に対応したスピーカーから流れるようになっている。同様に、B.LIVE会場の前方、ディスプレイ前の床にはバスケコートのデザインが描かれており、設置された8つのスピーカーのうち、床下で収音したマイクの場所に応じたところから音が流れるようになっているのだ。
たとえば、恵比寿会場でディスプレイを正面にして左側のゴール付近に立つと、熊本会場のカメラ側から見て左側のエリアでプレイしているときにはドリブル音や足音が大きく聞こえ、攻守が切り替わって反対側を攻めている間はドリブル音などが小さく聞こえるのである。音が現地の場所と連動することで、まるでその場にいるような感覚を味わえるというわけだ。
特に印象に残ったのは、試合の終盤、第4クオーター残り約4分半で田口成浩選手がフリースローを打つシーンだ。2本とも決めれば同点にできるという状況だったため、会場の緊張感もひとしお。プレイが中断されて行われるフリースローは、音楽が止まるので会場が静かになることも多い。ファンの声が際立って聞こえ、ボールをバウンドさせる音が熊本から恵比寿に響く。音とともに緊張感まで伝わってくるようだった。
1本目のシュートを決めたあと、2本目がゴールに吸い込まれた瞬間、ネットを揺らす"パシュ"という音が聞こえるのと同時に、静寂から一転、両会場が大きな歓声で包まれた。まさに現地の臨場感が恵比寿にリンクした瞬間だったのではないだろうか。
なお、この直前には田口選手が3Pシュート中にファウルを受け、獲得したフリースロー3本すべて決めれば同点というシーンがあったが、惜しくも3本目を外してしまった。「今度こそは」とファンが固唾を飲んで見守る中で行われたフリースロー。ボールをつく音が一段と大きく聞こえた。
選手の動きにリンクする振動がリアルさを高める
また、今回恵比寿会場では、ゴール下に「振動体感エリア」が用意されており、コート横にいるようなバスケの"揺れ"を体感できるようになっていた。
ベンチで試合を応援した経験のある人はわかるだろうが、バスケットボールの試合では、めまぐるしく攻守が切り替わり、コート上の10人が2つのゴール間を走り回るため、体育館の床が揺れるのだ。
振動体感エリアでは、攻守の切り替えに連動して揺れを再現するようになっており、選手が近づいてくる感覚や遠ざかる感覚を味わうことができる。
そのほか、得点者を予想してビンゴゲームなどが楽しめるスマホアプリ「B.応援」によるファン参加型のイベントや、DJによる激しい応援スタイルなど、「熊本会場よりも力が入っているのでは?」と思うほどの盛り上がりを見せていた。