パナソニック コネクテッドソリューションズ社の社長である樋口泰行氏へのインタビュー、後編のテーマは「100年後のパナソニック」だ。
パナソニックは2018年3月に創業100周年を迎える。日本ヒューレット・パッカードとダイエー、そして日本マイクロソフトと、トップを歴任した樋口氏がパナソニックに「戻ってきた」のも、創業100周年を迎えたパナソニックの今後と無関係ではない。樋口氏の考える「これからのパナソニック像」とは、どんなものなのだろうか。
【特集】変わる、パナソニック。
2017年4月、前日本マイクロソフト会長の樋口泰行氏がパナソニックに舞い戻った。彼が担当するのはB2B領域のパナソニック コネクティッドソリューションズ。顧客の要望に合わせた製品づくりを得意としていた同社のB2B部隊だが、時代の変化から、もはや「ただの下請け」では生き残ることは出来ない。「どうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけない」と話す樋口氏の覚悟、そして変わりゆくB2B部隊の今を追った。
次の100年のために改革を断行
「2018年、パナソニックは創業100周年です。しかしこのままでは、次の100年は厳しい」
樋口氏の言葉は厳しい。
前編で触れたように、パナソニックは「真のB2Bシフト」を目指した構造改革中だ。その構造改革を断行しないと、パナソニックは次の100年を越える企業になれないと樋口氏は考える。
パナソニックがこれからビジネスの主軸に据えようとしているのはB2Bビジネス、それも、顧客に対して課題解決の手段を提供する「ソリューションビジネス」である。これまでのパナソニックは、企業や個人に対して「より良い製品・技術を提供する」ことで差別化してきた。
だが、ソリューションビジネスになると、提供すべきは単なる技術や部品ではなく、それらを使ってどう課題を解決するのか、という部分になる。思考方法もビジネス手法も、当然変わらざるを得ない。
「ソリューションビジネスでは、難しさがグンと上がります。やはり、ソリューションビジネスをやった経験がないと難しい部分があります。既存の『製品主体の事業部』が強い体制では新しいトライアルがやりづらく、難しい。ソリューションビジネスへの転換は、過去にIBMも直面しました。彼らですら、ハードからソフトへの転換は難しいことでした。IBMは『同じ人員では改革できない』として人を多く入れ替え、企業体質を変えました。しかし、日本は同じ手法が取れない環境にある。そこでどうやってビジネス転換を実現するかをしっかり考えないといけません」(樋口氏)
そのような環境で断行できる改革とは何か。樋口氏は、担当するコネクティッドソリューションズ社を本社のある大阪・門真市から東京へと移転し、個人の席を自由に決められる「フリーアドレス/フレックスシーティング」を導入した。
「まずは顧客接点を増やさなくてはならない。そのためには、顧客から遠い門真に居ても何もできません。顧客の近くにいて、温度を感じないとできないことが多いのです。ですから、なるべく顧客の近くに行こう……というのが、拠点を東京へと移した理由です。これが第一歩ですね。これは一般論ですが、東京から離れるとさまざまなベンチマーキングが難しくなります。コンプライアンスにしてもダイバーシティにしても。企業を近代化していく点で遅れる。そういうところがあります」(樋口氏)