VAIOは1月18日、第8世代Coreを搭載した13インチクラムシェル型ノートPC「VAIO S13」2018年1月発売モデルを発表した。発売開始日および最速お届け日は1月26日。VAIOとソニーマーケティングの通販サイトでカスタマイズモデルが、全国量販店で標準仕様モデルが販売される。価格は税別151,800円から。
細かな変更点、外観などについては前回の記事で解説している。今回の記事では気になるパフォーマンスについて、続報をお伝えしよう。
独自チューニング「VAIO TruePerformance」をおさらい
今回発表されたIntelの第8世代CPU(Kaby Lake R)搭載モデルには、その性能を最大限に引き出すために「VAIO TruePerformance」と名付けられた独自チューニングが施されている。これは、「インテル・ターボ・ブースト・テクノロジー2.0」を長時間、高いパフォーマンスで継続的に動作可能にするためのVAIO独自のチューニング技術。
具体的には、インテル・ターボ・ブースト・テクノロジー2.0に対応するための電源強化、CPUパッケージパワーのリミット値の調整、放熱用ヒートパイプの熱輸送力の向上(33%)、放熱用フィンの熱交換率の向上(10%)、ファン回転数テーブルのチューニングによる放熱能力の向上などが実施されている。
なお、VAIO TruePerformanceは、「VAIOの設定」の「電源・バッテリー→CPUとファン」の項目で、「パフォーマンス優先」を選択するとオン、「標準」を選択するとオフとなる。持続可能パフォーマンスを引き上げれば、そのぶん消費電力が増えるので、高い処理性能を必要としないなら無効化することでバッテリを節約できる。
独自チューンの効果をベンチマークでチェック!
それでは早速、ベンチマークのスコアを見てみよう。今回は2018年1月発売モデルと2017年9月発売モデルの両方で、総合ベンチマーク「PCMark 8」、3Dグラフィックスベンチマーク「3DMark」、CPU&OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 5.2.1」、そしてバッテリベンチマーク「BBench」を実施した。
なお2018年1月発売モデル、2017年9月発売モデルともにACアダプタに接続している状態でベンチマークを実行。「CPUとファン」の動作モードは「パフォーマンス優先」に設定している(2018年1月発売モデルはVAIO TruePerformanceオン、2017年9月発売モデルはVAIO TruePerformance非搭載)。その結果が下記の画像だ。
まず注目したいのがCINEBENCH R15のCPUスコア。2018年1月発売モデルが「655 cb」、2017年9月発売モデルが「319cb」と、実に2.05倍にパフォーマンスが向上していることになる。ちなみに、1コアあたりのスコアは2018年1月発売モデルが「166 cb」、2017年9月発売モデルが「145 cb」。2コア4スレッドの「Core i7-7500U」から4コア8スレッドの「Core i7-8550U」にアップグレードされたことにより、コア数、スレッド数の増加が大きな効果を発揮していることがわかる。
もちろんCPU性能がそのままシステム全体のパフォーマンス向上に反映されるわけではない。総合ベンチマークのPCMark 8のスコアを見てみると、Home Accelerated 3.0が約1.20倍、Creative Accelerated 3.0が約1.23倍、Work Accelerated 2.0が約1.10倍のスコア向上に留まっている。実際の利用環境での動作速度向上は約1.10~1.23倍前後と考えていい。
なお、CrystalDiskMarkで2018年1月発売モデルのほうが圧倒的な読み書き速度を記録しているが、これは2018年1月発売モデルがPCIe NVMe接続のSSD「SAMSUNG MZVKW512HMJP-00000」、2017年9月発売モデルがSerialATA III接続のSSD「SAMSUNG MZNTY128HDHP-00000」を搭載しているため。2018年1月発売モデルでもSerialATA III接続のSSDを選択した場合にはストレージ速度は低下するので、それを踏まえて購入を検討してほしい。
バッテリ駆動時間が低下しているはずのCore i7-8550U搭載モデルのほうが連続動作時間が長かったのは、今回借用した2017年9月発売モデルのバッテリが経年劣化しているためと思われる。
最後にVAIO TruePerformanceの効果を確認してみよう。VAIO TruePerformanceは、「VAIOの設定」の「電源・バッテリー→CPUとファン」の項目で、「パフォーマンス優先」を選択するとオン、「標準」を選択するとオフとなる。そこでCINEBENCH R15で、パフォーマンス優先モード、標準モードに設定した際のスコアを比較してみた。
VAIO S13(2018年1月発売モデル) | VAIO S13(2017年9月発売モデル) | |
---|---|---|
CINEBENCH R15(パフォーマンス優先モード) | ||
OepnGL | 56.26 fps | 45.46 fps |
CPU | 655 cb | 319 cb |
CPU(Single Core) | 166 cb | 145 cb |
CINEBENCH R15(標準モード) | ||
OepnGL | 52.74 fps | 45.22 fps |
CPU | 576 cb | 317 cb |
CPU(Single Core) | 168 cb | 144 cb |
2018年1月発売モデルのCPUスコアを比較してみると、パフォーマンス優先モードで「655 cb」、標準モードで「576 cb」となっている。つまりVAIO TruePerformanceによりCPU性能が13.7%向上していることになる。負荷の高いクリエイティブ系アプリケーションを利用する際に威力を発揮してくれるはずだ。
なお、2017年9月発売モデルのCPUスコアは、パフォーマンス優先モードと標準モードでスコアはほとんど変わらなかった。実際、2017年9月発売モデルはデフォルトで標準モードに設定されている。CINEBENCH R15のスコアからは、パフォーマンス優先モードに設定する必要はないと言える。
電源強化や放熱能力の向上により高いパフォーマンスを実現!
PCの実効速度はCPUだけで決まるわけではない。しかし限界領域において、最後にトータルパフォーマンスを決定するのはCPUと、その性能を最大限に引き出すためのチューニング技術であることは間違いない。単に新しいCPUを搭載するだけでなく、電源強化や放熱能力の向上により高いパフォーマンスを実現した新VAIO S13は、こだわり派のユーザーにとって魅力的な選択肢となるはずだ。
■試用機の主な仕様 [製品名] VAIO S13 [CPU] Intel Core i7-8550U(1.80/4.00GHz) [メモリ] 16GB(LPDDR3-2133 SDRAM) [グラフィックス] Intel UHD Graphics 620(300MHz/1.15GHz、CPU内蔵) [ストレージ] 512GB SSD(PCIe NVMe、SAMSUNG MZVKW512HMJP-00000) [光学ドライブ] ― [ディスプレイ] 13.3型ワイド(1,920×1,080ドット、166ppi、16:9、アンチグレア、非タッチパネル) [OS] Windows 10 Pro 64bit [インタフェース] USB 3.0 Type-A×3(内ひとつは給電機能付き)、HDMI、D-Sub、3.5mmヘッドセットジャック、ギガビットイーサネット、SDメモリーカードスロット、microSIMカードスロット [通信機能] IEEE802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LAN、Bluetooth 4.1、WAN(LTE、3G) [サイズ/重量] W320.4mm×D216.6mm×H15.0~17.9mm/約1.06kg [バッテリ駆動時間/充電時間] 約11.0~12.0時間/約3時間