ドコモの狙いはどこに?

そこを考慮すると「d払い」は今までにないユーザーメリットを提供するものではない。ユーザーへの新たな選択肢を用意し、キャッシュレス化の普及とユーザーの利便性を高めるというところに主眼が置かれたサービスとなる。一部サービス内容が重複使用しようとも、ドコモ側に大きなメリットがあったとも見ることができそうだ。

ドコモにとっての旨みは、決済に伴う手数料収入だ。この手数料収入は利用回数が増えるほど増えていく。利用の増加には導入店舗を増やす必要があり、店舗側に決済端末を用意しなければならない。

この点において、今回のサービスでは、コストのかかる決済端末の導入がなくとも幅広く対応できるようになったというのもクローズアップすべきポイントだ。導入コストの低下により、サービスの普及が見込みやすいのだ。「d払い」ではバーコード、QRコードが読み取れれば、決済処理が行なえる。店舗側の設備負担が少ないというわけである。

店舗側にもメリットはある。たとえばコンビニ。発表会に登壇したローソン執行役員 マーケティング本部長の野辺一也氏によると、早朝や昼時など込み合う時間帯では、レジ前に人が並んでしまうという。キャッシュレス化を進めることで、作業はスムーズになり、込み合うことによる売上逸失を回避することもできるとする。

ローソンではこれまでもキャッシュレス化に取り組んできたものの現金払いは全体の8割とまだまだ多く、d払いのようなキャッシュレス化に対する期待は大きいようだ。

  • 「モバイル決済 for AirREGI」を活用することで小規模店舗でも手軽に導入が可能なようだ

購買履歴の活用という旨み

ドコモにとっての狙いはもうひとつある。それは購買履歴の有効活用だ。これからはデータの利活用がビジネスを大きく左右する要素となりそうだが、ドコモは利用者の承諾を取ったうえで、すでにこうしたデータの活用を進めている。

具体的には、個々に応じた商品リコメンドや、ある一定の条件、たとえば「30代男性で商品Aを購入した人」などといった条件をもとに、対象者をピックアップしマーケティング施策を打つなどといったものだ。

ドコモでは決済情報に限らず、様々な生活サービスを提供しており、そうしたデータも活用することで、精緻なマーケティングに生かしていくことも可能だという。今回の取り組みは、扱えるデータの量を増やし、こうしたビジネス上のメリットも大きく見えてくる。

ビジネスメリットを最大化するには、まずは加盟店を増やすことが先決。現在ローソン、マツモトキヨシなど10社19000店での取り扱いを予定しており、想起に10万店以上の展開を目指していくという。キャッシュレス化を進めるにはまずはインフラの整備から。その障壁を減らしたのが今回のサービスとなるが、利用加盟店を増やすには他のサービスとの手数料率の差にも目を向けていく必要があるだろう。

後は利用者が増えるか、である。利用者の立場に立てば、「iD」との違いがわかりにくいといった側面も気になるが、ユーザーに対してどれだけポイント付与率など魅力に見せられるかにもかかっていく(ポイントは加盟店手数料にオンされ最終的にはこの部分の舵取りが重要なようだ)。果たして、目算どおりに普及していくだろうか。