相次ぐ総務省からの指導と、低価格なMVNOの急伸で一方的な防戦を強いられてきた携帯大手3社。だが2016年半ば頃から昨年にかけ、低価格戦略を強化したことで顧客流出の阻止に成功。一転して再び優位な立場に立つに至っている。だが今年は再び動き出した総務省への対応を迫られるとともに、低価格戦略を推し進めたことで低下した収益の改善などが求められ、決して安泰とはいえない。

顧客流出防止の強化で一転してキャリアが有利に

昨年の携帯電話業界の動向を振り返ると、ここ数年来元気がなかった大手キャリアが、ようやく反転攻勢に転じた1年だったといえるだろう。

大手キャリアに対してはここ数年来、逆風の嵐が吹き荒れていたといっても過言ではない。その理由は、大手3社の市場寡占による市場競争の停滞を嫌い、新規参入事業者を増やして競争を加速したい、総務省が大ナタを振るったことだ。

中でも最も大きな影響をもたらしたのが、2015年末頃に実施された総務省の有識者会議「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」だ。ここでの議論の結果、端末の実質0円販売を事実上禁止するなど、従来の商習慣を大きく覆すガイドラインが打ち出され、大手キャリアは大幅な戦略転換を余儀なくされたのだ。

加えて総務省はMVNOの支援も進め、現在では700社を超えるMVNOが市場参入するに至っている。その結果、従来の半分から3分の1で利用できるMVNOのサービスが人気となり、大手キャリアから顧客が流出。かつてのように端末価格の安さでユーザーを他社から奪うことができなくなる一方、顧客がMVNOに流出し続けるという、大手キャリアにとって圧倒的に不利な市場環境が生まれてしまったのである。

そうした状況に強い危機感を募らせた大手キャリアは、従来の方針を大きく転換。これ以上大きく新規顧客が増えないことを見越し、総務省の支持には従いながらも収益基盤となっている自社の顧客を守るべく、MVNOへの顧客流出を徹底して阻止する戦略に打って出たわけだ。

1つは、低価格のサービスを提供するサブブランドの強化である。ソフトバンクはワイモバイルブランドに力を入れ、低価格でサポートがしやすい「Android One」スマートフォンの充実を図るほか、学割施策を強化し学生層の獲得に力を入れるなどして一層の顧客獲得を進めている。またKDDIはUQコミュニケーションズの「UQ mobile」に加え、昨年1月にMVNOとしても大手のビッグローブを買収。ジュピターテレコムの「J:COM MOBILE」と合わせ、傘下のMVNOを増やし低価格を求める顧客の受け皿を増やした。

  • ワイモバイルの「Android One」スマートフォンの画像

    ワイモバイルは「Android One」スマートフォンの充実を図るなどして、独自性を打ち出し一層の販売拡大を進めている

そしてもう1つは、より安価な通信料を実現する料金プランの提供だ。NTTドコモの「docomo with」や、KDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」などがそれに当たるのだが、これらは通信料金が従来より安い代わりに、端末代を値引きしない仕組みとなっている。端末の値引きをせずに通信料金を引き下げるというのは、まさに総務省の要望に沿ったものであり、総務省の要求に応えつつも、安い通信量で自社の顧客を守る手段に打って出たわけだ。

  • 「docomo with」を打ち出したNTTドコモの画像

    NTTドコモが「docomo with」を打ち出すなど、端末代を値引かない代わりに通信料を安くする新しい料金プランが急増したのも今年の大きな変化だといえる