2016年までは大手キャリアから顧客を奪い、破竹の勢いで急成長してきたMVNO。だが2017年に入るとその流れが一転。大手キャリアの顧客流出防止策強化によって顧客獲得が難しくなり、ついには経営破たんするMVNOも現れた。今年からは急増したMVNOの淘汰が加速するなど、MVNO同士の生き残りに向けた戦いが加速する可能性が高いが、一方でMVNOからキャリアになることを表明した楽天の動きも注目される。

大手キャリアの反撃で破たんするMVNOも

2017年は、MVNOにとって大きな転機となった年といえるだろう。なぜなら、それまで格安な通信料で大手キャリアから顧客を奪い、順調に契約数を伸ばしてきたのが、一転して思うように契約数を獲得できなくなってしまったからだ。

その理由は、MVNOへの顧客流出に危機感を募らせた大手キャリア側が、顧客流出阻止のため低価格のサービスを大幅に強化したからである。ソフトバンクは低価格ブランドのワイモバイルを強化し、NTTドコモは「docomo with」や月額980円の「シンプルプラン」など、より安価に利用できる料金プランの充実を図ってきた。

そしてKDDIは、MVNO大手のビッグローブを買収して傘下のMVNOを増やし、さらに「auピタットプラン」など安価な料金プランの充実を図ることにより、グループ外への顧客流出阻止を徹底している。そうした大手キャリアの施策が大きな影響を与え、MVNOへ流出する顧客が大幅に減少したのである。

MVNOの停滞ぶりはさまざまな数字から見ても明らかだ。MVNO大手のインターネット・イニシアティブ(IIJ)が発表した、2017年度第2四半期決算の内容を見ると、個人向けMVNOの「IIJmioモバイル」の四半期の契約純増数が6000人にまで減少している。2016年度第2四半期の純増数を見ると、6.4万契約も増加していたことを考えると、純増数の伸びはおよそ10分の1にまで落ち込んでしまっていることが分かる。

  • IIJの個人向けMVNO「IIJmioモバイル」の純増数は今年に入って急減。2016年には5、6万契約を獲得できていたのが、2017年は1万を割り込むにまで至っている

さらに大きな衝撃を与えたのが、「FREETEL」ブランドでMVNOとして通信事業を展開していたスマートフォンメーカー、プラスワン・マーケティングが、昨年12月に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、経営破たんしたことだ。同社の通信事業は11月に楽天が買収したことで受け皿となり、契約者がある日突然サービスを利用できなくなるという最悪の事態は免れている。

しかしながら同社は有名タレントを起用するなどして積極的な販売拡大を進め、MVNOとしても大手に迫る勢いを見せていた。それだけに同社の経営破たんは、MVNOの落ち込みを示す象徴的な出来事として、驚きを与えたことは確かだ。

  • 2017年の前半までは勢いを見せていたプラスワン・マーケティングは、その後急速に資金繰りに窮し、楽天にMVNO事業を売却した後に経営破たんに至った