2017年も多くの愛すべきデジタル製品が登場しました。マイナビニュースでは、デジタル業界に造詣の深いライター諸氏による年末特別連載「2017年ベスト買い物」を12月末まで随時掲載していきます。今年、実際に購入した製品のなかで最も「買ってよかった! 」と思ったものを紹介する本企画。第13回はPCやプロセッサに精通し、最近では自動運転車やモータースポーツの取材でも活躍するライターの笠原一輝さん。2017年ベスト買い物は、USB Power Delivery(USB PD)に対応したモバイルバッテリー「Razer PowerBank」(Razer製)です。


2017年購入したモノの中で筆者が地味に便利だと感じている製品、それがノートPCをACアダプターと同じ速度で充電出来るモバイルバッテリー「Razer PowerBank」です。Razer PowerBankはUSB Type-Cという新しいUSB端子の出力を備えており、USB Power Delivery(USB PD)という大電流を流すことができる拡張仕様をサポートしているため、USB Type-C/USB PDに対応したUSB端子を持つノートPCを充電可能なのです。

  • Razer PowerBank

    Razer PowerBank

USB Type-Cで異なるメーカーのPCも充電可能に

2017年を振り返ると、USB Type-C対応デバイスが急速に市場に出回った年でした。USB Type-CはUSBの拡張企画として作られた端子/ケーブルの仕様で、従来のUSB端子(Standard-A)に比べると表裏なくどちら側でも挿すことができる、USBケーブルにUSB以外の信号線を流すことができる、さらにはオプションですがUSB PDに対応しており、PCを充電できるほどの大電力を流せるといった特徴を備えています。

  • 左側の2つが従来のUSB端子(Standard-A)、右側が新しいUSB Type-C端子

    Razer PowerBankの出力端子。左側の2つが従来のUSB端子(Standard-A)、右側が新しいUSB Type-C端子

市場を見ていると、Androidスマートフォンのハイエンド製品も、UQコミュニケーションズが販売しているWiMAX2+のルータも、充電やデータ端子がUSB Type-Cへと移行しましたし、周辺機器の対応が急速に進んでいます。そしてノートPCの側では、Apple製品に続き、Windows PCでもUSB Type-Cを搭載した製品が増えました。

そうしたUSB Type-Cに対応しているノートPCでは、専用のACアダプターが用意されていない製品があります。USB Type-Cのオプション仕様として規定されているUSB PDを利用すると、USB Type-C端子からUSB Type-CのACアダプターを通じてノートPCを充電できるからです。

従来のACアダプターは異なるメーカーのノートPC間で使い回すことができませんでしたが、USB Type-CのACアダプターはApple用をLenovoのノートPCに使う、ないしはその逆と言った使い方が可能になります。

実際に筆者は、Appleが販売しているUSB Type-CのACアダプタ(MNF72J/A)をLenovoのThinkPad X1 Yoga Gen2というノートPCで利用していますが、問題なく利用できています。使っていると「なぜAppleのACアダプターをThinkPadに使っているのだ」とほかの人から質問されて説明するのが面倒くさいことを除けばですが。

出力できる給電量に注目

USB Type-C端子からノートPCが充電可能になると、次に考えるのは、スマートフォンやタブレットがUSBケーブルを経由してモバイルバッテリーから充電できる、というようなことを、ノートPCでもできないか、ということです。

例えば、出先でPCを使って仕事しているときに、内蔵バッテリーだけだと6時間ぐらいは使えるけど、もう2~3時間バッテリーで使えたら便利なのに、と。そんな時ってありますよね。

そうした時に使えるのがUSB PDに対応したモバイルバッテリーです。USB PD未対応のモバイルバッテリーでは、ノートPCの充電に必要な大容量の電力(30W~60W程度)を供給することができません。しかし、USB PDに対応したモバイルバッテリーではノートPCのバッテリーに充電できるほどの電力を供給することが可能です。

ただし、USB PDの規格はとても複雑です。詳しいことを語り出すと、この記事の文字数では終わらないぐらいなるので説明しませんが、1つ覚えておいて欲しいのは、USB PDに対応したACアダプターやモバイルバッテリーが供給できる電力が、ノートPCが必要とする消費電力を上回っていないと充電できないことがある、ということです。

例えば、筆者が使っているLenovoのThinkPad X1 Yoga Gen2の場合、標準では45WのUSB PD対応ACアダプターが付属してくるため、45W以上給電できるACアダプターなりモバイルバッテリーでなければ充電することは難しいのです。

2017年に、日本で販売していたUSB PD対応モバイルバッテリーのほとんどは30Wまでしか供給できませんでした。45Wの給電を必要とする筆者のThinkPadでも使えないわけではないのですが、電源を切っていないと充電できなかったり、充電速度がものすごく遅くて使い勝手がよろしくなかったりします。

このため、45Wや60Wといったより大容量の給電が可能なUSB PD対応モバイルバッテリーを探していました。そんなときに出会ったのが、今回紹介するRazer PowerBankだったのです。

45W出力で、ACアダプターと同じ速度で充電可能

RazerはPCゲーミング向け製品を提供するメーカーで、多くのゲーマーが同社のゲーミングPCやマウス、キーボードなどを使っています。そのRazerがPC周辺機器として、米国で販売しているモバイルバッテリーがRazer PowerBankです。

  • 20V/2.25Aが最大出力だとわかります

    モバイルバッテリーの出力は仕様など書かれています。Razer PowerBankの場合は赤線部分がそれで、一番右の20V/2.25A(電圧×電流=電力なので、45W)が最大出力だとわかります(クリックで拡大画像を表示)

特徴は、出力できる電力が最大45Wであることで、筆者のThinkPad X1 Yoga Gen2でもACアダプターと同じ速度で充電可能です。筆者のThinkPad X1 Yoga Gen2は内蔵バッテリーだけだと、概ね6時間程度のバッテリー駆動が可能で、朝から夜までのイベント取材などだとだいたいおやつの時間にはバッテリーが空になってしまうということがありました。

Razer PowerBankを入手してからは、お昼休みにカバンの中で充電しておくと、午後は再び100%から利用可能で、19時ぐらいまではバッテリーで持つ、そんな使い方が可能になっています。

また、出力端子にはUSB Type-Cのほかに、これまでのUSB端子(Standard-A)が2基ついているので、PCだけでなくスマートフォンを充電することも可能です。従来のUSB端子の方はQualcommのQuick Charge 3.0という仕様にも対応しているため、QuickCharge 3.0に対応しているAndroidスマートフォンの急速充電にも使えます。

バッテリーの容量は12,800mAhで、一般的なノートPCであれば1回分の容量を内蔵しています。こんな高性能なのに、重量は335gと同じ容量のモバイルバッテリーと同程度の重量に収まっているので重宝しています。

日本では買えないし、高価格なのが弱点

Razer PowerBank、価格は149.99ドル+税(米国では州や市によって異なっている)となっており、日本円にすると約17,000円弱ぐらいでちょっとお高いのが難点です。そして、価格がドル表記であることからおわかり頂けるように、日本では販売されておらず、米国のRazer公式サイトから購入する必要があります。

筆者は米国に出張した時に滞在先のホテルへ送る形で購入しましたが、日本国内で購入するには、転送サービスなどを利用する必要があります。このため、正直皆さんにお薦めできるかと言えば、そうではないです。

ですが、今後45W以上の電力を供給できるUSB PD対応モバイルバッテリーは国内のメーカーからも発売されることが予想されます。例えば、フォースメディアが12月下旬から販売予定の「世界超速」(参考記事)は60Wの給電が可能な仕様で、バッテリーの容量も26,800mAhと大容量です。こうした製品は続々と登場してくると思いますので、USB PDに対応したPCを持っていて、モバイルバッテリーで充電したいという読者の方は要注目です。

製品のラブ度 ★★★★★
製品のオススメ度 ★★☆☆☆(日本国内で売ってないので)